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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


県内でも有名な私立の名門校・桜心学園に入学した倉橋アズサは、希望とやる気に満ち溢れていた。何しろ、一年生ながら生徒会に抜擢され、憧れの先輩たちと一緒に学園のために働くことになったのである。
アズサの一番の憧れは、副会長の南サヤだった。
サヤは長い黒髪と美しいスタイルを持った、学園でも屈指の美少女で、成績も常にトップクラスだった。アズサと同じように一年生の時から生徒会に携わり、伝統ある学園生徒会の副会長を務めるまでになっている。
それでいて奥ゆかしく、誰に対しても優しい笑顔を見せるサヤに、アズサは日ごろから尊敬の念を抱いてやまなかった。

「アズサさん」

「は、はい!」

ある日の放課後、アズサはサヤと生徒会室で二人きりになった。
潤いを含んだようなサヤの声で名前を呼ばれることに、アズサはいまだに慣れないでいる。

「この記事、面白いわ。学園の治安を守る、学園警察。こういう噂が生徒たちの間にあるのかしら?」

サヤは、アズサが書いた学園新聞の記事を読んでいるのだった。
その記事は、生徒たちの間で流行っている都市伝説のような噂をまとめたものだった。

「ありがとうございます! えと…学園内で悪さをした人を懲らしめる正義の組織があるというか…そういう噂です。実際に見た人がいるってわけじゃないんですけど、あくまで噂で…」

「面白いわね」

「はい! 実は、何人か懲らしめられたって噂の人に取材したんですけど、誰も何もしゃべってくれなくて…。全員、男子の生徒だったんですけど…」

「そう。その行動力が素晴らしいわね」

憧れのサヤに褒められると、天にも昇る気持ちになった。
サヤは微笑みながら、そんなアズサを見つめている。

「それであなた自身は、そういう正義の組織があることについて、どう思っているの?」

「え? あ、はい。その…私的には、いいことかなっていうか、助かるっていうか…。もちろん、先生とか生徒会の許可を得ずに、そういうことをしているのは、ちょっとどうかな、とは思うんですけど…」

思いもよらぬ質問に、サヤの真意を計りかねた。サヤはその正義の組織を評価しているのか、あるいは拒絶するのか。
サヤに嫌われたくない一心のアズサは、あいまいな返答をした。

「できれば取材して、その人たちの意見を聞いてみたいと思います。あ…ホントにその学園警察があればですけど…」

「そう」

精一杯答えたアズサに、微笑みながらうなずいてみせた。

「確かに先生方や生徒会の手を借りずに、生徒に罰を加えるのは、良くないかもしれないわね。でも世の中には、悪事をしてもきちんとした裁きを受けずにいる人が、たくさんいると思うの。残念だけど、この学園の生徒の中にもいるのかもしれないわね」

サヤはゆっくりとした口調で、しかしいつも以上に凛と張り詰めたような表情で語る。

「学園の風紀を乱す者がいれば、同じ学園内の心ある人が裁きを加える。そういう考えがあっても、私は否定しないわ。伝統あるこの学園の名誉を守るためですもの。そう思わない?」

「は…はい。あの、私もそう思います!」

アズサは、サヤの口から意外な意見が出てきたことに驚いたが、尊敬する彼女の言うことなら、大抵のことは賛同するつもりだった。
サヤはにっこりと笑った。

「ありがとう。学園警察の記事、面白かったわ。また明日ね」

そう言って、生徒会室を出ていった。
残されたアズサは、サヤに褒められた感動の余韻に浸りながら、しばらくの間呆然としていた。




それから数日後。アズサは生徒会の仕事のために学園に残っていて、それが終わったのは、夜もだいぶ更けてからだった。
部活動もとっくに終わり、広大な学園の敷地には、誰もいないように見えた。しかしこの日は満月で、わずかな街灯しかない道でも、明かりに困ることはなかった。
急ぎ足で歩いていると、ふと旧校舎の方に、人の気配がしたような気がした。

「ん…?」

危険かと思ったが、持ち前の好奇心の強さで、アズサは旧校舎の方に足を向けた。
この旧校舎は、学園の創立当初に建てられたもので、歴史的にも価値があるといわれている。現在はここで授業などが行われることはなく、学園の歴史を公開するための展示室や、来客のための応接室があるだけだった。
だから、この時間に旧校舎の付近に人がいるはずもないのである。
アズサは警戒しながら旧校舎に近づいて、窓からその中を覗いた。

「……!」

危うく声を出しそうになった。
校舎の中には、非常灯の薄明かりの下、学園の制服を着た男子が二人いて、何事か話し合っている。
一人の男子の手には、何か紙袋のようなものが握られていて、どうやらその受け渡しをしているような雰囲気だった。

「コレが…? 間違いないんだな?」

男子の一人は、紙袋の中を凝視していた。

「ああ。水泳部のヤツに聞いてみるといい。下着が盗まれたかどうかってな」

紙袋を渡した男子は、水泳部に所属している2年の三浦カツヤ。どうやら彼が、水泳部の女子の下着を盗んだようだった。

「そうか…! 1万でいいか?」

紙袋を受け取ったのは、2年の蒲田ユウジだ。カツヤが盗んできた下着を、彼が買い取るということになっているようだった。

「冗談だろ。こっちはリスクを背負ってんだ。3万は貰わないと」

「3万…! しょうがねえな。偽物だったら、返してもらうからな?」

「毎度どうも。安心しろよ。そいつは本物だって」

ユウジが財布から金を出し、カツヤに渡した。
二人がその場を立ち去ろうとした時、まばゆいライトの光が、彼らの姿を照らした。

「うっ!」

「誰だ!」

ライトは旧校舎の入り口正面にある、大階段の上から懐中電灯か何かで照らされたようだった。二人は一斉に振り向き、外から見ていたアズサも目を向ける。

「三浦カツヤ、蒲田ユウジ。そのまま動くな! お前達に裁きを下す!」

大階段の上には、黒い人影が見えた。

「な、何だお前ら!」

カツヤとユウジは、とっさに身構えた。
窓の外では、アズサが興奮と期待の入り混じった目で、この様子をうかがっている。

「我々は、月下会。学園の風紀を乱す者を取り締まるのが、我々の務め。三浦カツヤ。お前が水泳部の部室から、女子の下着を盗んだことは既に承知している。そしてそれを買い取ろうとした蒲田ユウジもまた、同罪である。この際、尋常に罪を認めろ!」

意図的なものか、どこか芝居がかったような、古風な口調の持ち主だった。
そしてその声は明らかに若い女性のものであり、カツヤ達の目が慣れてくると、はっきりとその姿が女性のそれであると気がついた。

「げっかかい…?」

「何だ、お前ら!」

ふと気がつくと、大階段の上だけでなく、その下にも二人の女性の人影があった。彼女たちの服装は忍者の装束のように真っ黒で、顔全体を布で覆い隠している。唯一見える目の部分には、鋭い眼光が光っていた。
二人はカツヤとユウジを挟み込むように、ゆっくりと近づいてきた。

「な、何だよ! あっち行け!」

ユウジは紙袋を抱えたまま、後ずさりした。
見た目は小柄な女性のようだったが、夜の校舎でこんな不気味な連中に追い詰められては、恐怖を感じてしまうのも無理はない。
一方のカツヤは、あるいはこういった状況も想定していたのかもしれなかった。
チッと舌打ちすると、両手を上げてボクシングのような構えをとった。

「お前らが、学園警察とかいうやつらだな。いつか俺の所にも来るかと思ってたぜ」

実はカツヤは元々ボクシング部に所属しており、将来のエースと呼ばれていたのだが、性格が乱暴で、他校の生徒と暴力事件を起こして退部してしまっていたのだ。その後、彼の性格はますます荒み、学園内の不良グループに属していたのだが、挙句の果てには下着泥棒をするまでになってしまっている。

「正義の味方を返り討ちにするってのも、面白えな」

カツヤは自分の腕っぷしに、相当の自信を持っていた。
怪しげなその格好に少々面食らったが、所詮は女である。しばらくボクシングから遠ざかったとはいえ、実戦としてのケンカには事欠かなかった。
相手は3人いるが、痛めつけて逃げおおせる自信が、彼にはあったのだ。


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