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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。
ある寒い冬の朝。大学生の奥田ユウジは、巨体を揺らして自宅マンションの階段を登っていた。
こんな時間に学校へも行かず、自宅に帰ってきたのは、マンガ喫茶で夜を明かしたためで、これからゆっくりと眠りにつくつもりだった。
大学生といってもユウジは留年を繰り返し、年齢はすで25歳になろうとしていた。
授業にはほとんど出席せず、バイトは気が向いたときだけして、親からの仕送りで生活する。絵にかいたような無気力な学生だった。

部屋のドアに鍵を差し込むと、意外にも鍵は空いていた。
うっかり閉め忘れてしまったかと思い、疑う様子もなくドアを開けた。
すると、八畳ワンルームのユウジの部屋には見知らぬ女性の姿があった。

「あれ…?」

ユウジには最初、事態が飲みこめなかった。
うっかり寝ぼけて違う部屋のドアを開けてしまったかと思ったが、ここは確かに見覚えのある自分の部屋である。
泥棒かと思ったが、長身で痩せ型のその女性は、ジャケットにタイトスカート姿で、とても泥棒とは思えなかった。

「奥田さん? お帰りなさい。お邪魔しています」

玄関でユウジが立ちつくしていると、女性の方から声をかけてきた。

「昨日の夜も来たんだけど、今朝もいなかったので、合い鍵を使わせてもらいました。私は、このアパートの管理をしている南沢といいます」

ユウジが尋ねる間もなく、女性は自ら説明し始めた。
きびきびとした様子で胸ポケットから名刺を取り出し、ユウジに渡す。
名刺には、南沢ヒトミという名前が書いてある

「早速ですが、奥田さんには、この部屋を出ていって頂きたいと思います。クリーニングの手配などがありますので、できるだけ早いうちに。今週中にでも」

「え?」

ユウジには、何の話かまったくわからなかった。
突然、自分の部屋に見知らぬ女性が現れて、部屋を出て行けという。
アパートの管理者だか何か知らないが、これを理解しろという方が難しいだろう。

「え…どういうことですか?」

ようやくそれだけ尋ねることができたが、ヒトミはユウジの動揺を予測していたように、淡々と説明を始めた。

「奥田さん、ここは学生専用の建物なんです。大学の学生が住む所なんですよ。奥田さんは今、いくつになりますか? だいぶ長い間、学校に通っているようですけど。ここに入りたいという学生は毎年多いのに、いい加減、出ていってもらわないと、困るんですよ」

「え…いや…それは…。ボクだって、一応、学生ですよ!」

「奥田さんの教授にも、話を聞いてきました。教授は、奥田さんのことなんか、顔も知りませんでしたよ。一度も授業に出ていないそうですね。その調子で、何年留年してるんですか? それで学生と言えるんですか? 真面目に大学に通う気がないなら、辞めればいいと、教授もおっしゃってましたよ」

ユウジは愕然とした。
確かに、自分がどの教授の授業に登録していたか、自分でもすぐには答えられない。
最後に学校に行ったのは2週間ほど前、参加しているアニメサークルの集まりのときだった。

「一番の問題を言います。奥田さんがこの学生寮に出入りしていると、他の学生さんたちが気味悪がるんですよ。ここには、最近女子生徒が多く入居していますから、いっそのこと女性専用にしようかと思っているところなんです。そんな所に奥田さんみたいな人がいたら、困るでしょう?」

極めて侮辱的なことを、ヒトミははっきりと言ってのけた。
確かにユウジの風体は、肥満し、髪の毛はボサボサで、無精ひげを生やし、いつも同じような着古したジャージを着ている。お世辞にも清潔そうには見えなかった。
むしろ、ニートのオタクとはこういう男のことだという、見本のような格好をしていた。

「そ、そんな…そんなこと…!」

とはいえ、あまりにも一方的な言い分に、ユウジは怒りを覚えざるを得なかった。
しかし、普段からほとんど人と接することがなく、まして若い女性と話をすることなど、いつ以来か分からないほどのユウジは、すぐに言葉が出せなかった。
ヒトミはそんなユウジの様子を、冷ややかな目で見つめている。
長い黒髪を軽く掻きあげる動作でさえ、ユウジを小馬鹿にしているように見えた。

「でも、本当にうわさ通りですね。オタクっていうのかしら。この部屋。気持ち悪い…」

遠慮も何もなく、そう言った。
確かにユウジの部屋は、壁一面アニメやゲームの女性キャラクターのポスターで占められており、床には服や雑誌の類が乱雑に散らかっている。その反面、ズラリと並んだフィギュアの棚だけは、キレイに整頓されているのだ。
そのフィギュアも、アニメに出てくる女の子のものばかりで、ほとんどが半裸か全裸に近いようなものだった。
ヒトミのような興味のない人間からすれば、確かに気色の悪い光景だったろう。

「何、これ? こんなものを集めて、何してるんですか?」

ふと、ヒトミはフィギュアの一つを手に取った。
それはユウジが最近手に入れたもので、とあるアニメのキャラクターのフィギュアだった。そのキャラはとても人気があり、ユウジもネットオークションなどを駆使して、ようやく手に入れたものだった。

「あ…! それは…」

「こういうもので、何をしているんですか? こんな子供みたいな女の子に興味があるなんて…。変態…」

さすがに、最後の一言だけはつぶやくように言ったが、ユウジの耳にはしっかりと聞こえていた。
ユウジは、徐々にこみ上げてきた怒りに全身を震わせた。
勝手に人の部屋に上がり込んで、言いたい放題に言い、あまつさえ自分が何より大切にしているフィギュアまで馬鹿にされて、怒らないはずがない。
普段は大人しく、他人と口喧嘩さえしないユウジだったが、ヒトミのあまりの仕打ちに、キレてしまった。

「そ、それに触るなー!!」

ユウジは叫びながら、ヒトミに向かって行った。
ヒトミに危害を加えようというつもりではなかったが、とにかく彼女の手から大事なフィギュアを取り戻したかったのだ。
ヒトミはしかし、驚く様子もなく、その場から動かなかった。
相変わらず蔑むような目で、ユウジが怒り狂うのを見ている。

「返せっ!」

ユウジはヒトミの手首を掴んで、フィギュアを取り返そうとした。
しかし次の瞬間。

「うぐっ!!」

股間に鋭い痛みを感じ、ユウジは息をつまらせた。
ヒトミの細い膝がユウジの金玉にめり込み、恥骨に挟み込んで圧迫したのである。

「あ…か…!」

肥満したユウジの体は、無残にも床に崩れ落ちた。
先ほどまで沸騰しきっていた怒りも、頭から血の気が引くように、一気に冷え込んでしまう。

「言っておきますが、これは正当防衛ですからね。こんなもの。言われなくても返すわ」

汚いものでも投げ捨てるかのように、ヒトミはフィギュアを床に捨てた。
そして、先ほどユウジに掴まれた手首を、忌々しそうにハンカチで拭くのである。

「奥田さん。アナタが女性を襲う危険性のある人物であることが、今のではっきりとわかりました。アナタのような犯罪者予備軍を、これ以上ここに住まわせることはできません」

うずくまって金玉の痛みに打ち震えるユウジの頭上から、言い放った。

「明日中に、荷物をまとめて出ていってもらいます。従わない場合は、法的な措置を取らせてもらいますので、そのつもりでいてください」

冷酷すぎる言い様だった。
痛みで頭が真っ白になっているユウジにも、ことの重大さは理解できた。
奥歯を噛みしめて、痛みに耐えながらふと目を上げると、そこにはスラリと伸びたヒトミの両脚がある。
ストッキングに包まれたその脚は、いかにもしなやかで繊細で、この脚がユウジに絶望的な痛みを与えたものとは、にわかに信じ難かった。
さらにその脚を見上げていくと、ほどよく肉づいた太ももと、官能的な腰回りのラインが見える。
ユウジは痛みに震えながらも、男として、その曲線美に興奮を感じざるを得なかった。

「……?」

ヒトミはそんなユウジの視線に、最初は気がつかなかったが、やがてそれが自分に向けられた性的欲望だと直感すると、みるみる眉を吊り上げた。

「どこ見てるの! この、変態!」

うずくまって股間をおさえているユウジの横に回り込んで、脂肪が折り重なったその脇腹に、つま先で蹴りを入れた。

「ぐえっ!」

「変態! 変態!」

ヒトミはさらに蹴り続け、さらにユウジの頭を踏みつけた。

「あ…うう…!」

ユウジの顔面は床に押し付けられ、無様に変形した。

「明日、また来るわ。そのときに準備ができていなかったら、大学にもこのことを報告しますからね。襲われそうになったといえば、退学は間違いないわよ。いいわね?」

ユウジは踏みつけられた頭を、わずかに縦に動かした。
ヒトミの声は荒々しく興奮してはいなかったが、有無を言わせぬ静かな迫力があった。

「それから、二度と私に触ったり、変な目で見たりしないで。汚らわしい。もしまた変な気を起こしたら、一生後悔させてあげるわ。いいわね?」

ユウジの目には、涙が浮かんでいた。
自分より遥かに小柄な女性から受けた痛みと屈辱に震えながら、うなずくことしかできなかった。
 
「それじゃあ、よろしく」

ようやくユウジの頭から足を下ろすと、何事もなかったかのように、部屋を出ていった。
後に残されたユウジが、起きあがることができたのは、その数十分後のことだった。


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