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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


「おいチヒロ、決闘だ! 今日こそお前に勝ってやるからな!」

宮部カズユキは胸を張り、力強い声でそう宣言したが、返ってきた返事は予想外にあっさりしたものだった。

「いいよ。じゃあ、部活が終わった後でね」

クラスの友達とおしゃべりをしていた八木チヒロは、横目でちょっと振り向いただけだった。
カズユキは大声を出した手前、なんとなく間が悪くなってしまったが、大きくうなずいて、その場を立ち去った。

今年中学2年生になったカズユキとチヒロは、小学校からの同級生で、家も近所だったので、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。
カズユキは活発でやんちゃな男の子だったが、チヒロもそれに負けず劣らずで、二人で近所のガキ大将の地位を争ってケンカすることも多かった。
「決闘」は、そのころからカズユキとチヒロがよくやっていたケンカの方法で、一対一の素手で、反則は一切なしというのがルールだった。
小学校のころまでは、7割方カズユキの勝利で決着していたのだが、中学校に入って、その力関係は完全に逆転した。
その理由は、チヒロが中学から始めた部活動にあった。

「おい、チヒロ! 決闘だ!」

夕方遅く。部活動の時間が終わってから、カズユキは体育館横にある武道場を訪れた。

「あ、そうだった。じゃあ、やろっか」

チヒロはすでに帰り支度を済ませたところだったようで、ジャージ姿だった。
カズユキの顔を見ると、思い出したようにスポーツバッグを置いた。
カズユキは学生服のシャツを腕まくりし、武道場の板敷に上がった。

「今日こそ、お前を泣かしてやるからな。覚悟しろ!」

「うん。わかったわかった。アタシ、見たいテレビがあるからさ。早くしよ」

カズユキの気合は十分だったが、チヒロはまったく相手にしようとせず、とにかくこの決闘を早く終わらせたいようだった。
二人は板敷の中央に立ち、身構えた。
審判などはおらず、勝敗を決めるのは当事者の二人だけだった。

「行くぞ!」

カズユキは声を荒げて、まっすぐにチヒロに突っ込んでいった。
数分後。

「じゃあ、アタシは先に帰るから。鍵、閉めてきてね」

チヒロは汗一つかいておらず、何事もなかったかのような顔で、道場を出ていった。
武道場の真ん中には、股間をおさえてうずくまり、痛みに震えているカズユキがいた。

「うう…。くそ…」

中学校に上がってから、ほとんど毎週のように決闘を申し込んでいるが、カズユキが勝ったためしがなかった。
その理由は、チヒロが中学校から拳法部に入り、そこで金的蹴りの技を身につけたからだった。
初めてチヒロの金的蹴りをくらった時、カズユキは一瞬、目の前が真っ暗になった。
痛みが下腹部に広がり、膝から力が抜けて、自分の意志とは関係なく床に座り込んでしまったのを、今でも覚えている。

「なんだ。カズも一発なんだ」

習ったばかりの金的蹴りを打ち込んだチヒロは、半ばあきれたような顔でそう言った。
それ以来、チヒロはカズユキとの決闘では遠慮なく金的を狙ってきた。
しかもその技は日に日に向上し、今ではさまざまなフェイントや牽制を織り交ぜて、到底素人では防ぎきれないような金的攻撃の技術を身につけてしまっている。
体格は勝っているとはいえ、武道の経験のないカズユキには、とても敵う相手ではなくなってしまっているのだった。

「ハア…ハア…」

チヒロにノックアウトされてから15分ほど経ったころ、ようやくカズユキは起きあがることができた。
しかしチヒロの金的蹴りは、今日も正確にカズユキの睾丸をとらえて跳ね上げたから、普通に歩けるまでに回復するには、もう少し時間が必要だった。

「宮部くん、大丈夫…?」

顔をあげると、同じクラスの亀井ユカがいた。
ユキはチヒロの友達で、拳法部にも一緒に入部していた。しかし体格が小柄で、人一倍大人しい性格だったので、試合に出たり激しい稽古をすることは避けて、いつも一人で型の練習などをしているようだった。

「あ、ああ…。まあな。今日もやられた…。くそ…」

「大丈夫? まだ、大人しくしてた方がいいよ」

「ああ、そうだな…。でも、帰らないと…く!」

立ち上がろうとすると、股間から下腹部にかけて痛みがぶり返してきた。
ユカは思わず、カズユキの側に寄り、背中をさすってやった。

「ダメだよ。チヒロの蹴りはすごいから。拳法部の男子でも、立てなくなる時があるんだよ」

「ホントだな…。アイツ、だんだん蹴りがキツクなってきてんなあ。くっそー、ぜんぜん勝てねえ」

ユカは中学校に来てからチヒロと仲良くなったのだが、その幼馴染であるカズユキのことはすぐに教えてもらったし、二人が昔から決闘をしている事情も知っていた。

「宮部くんも、拳法部に入ればいいのに。決闘じゃないけど、毎日チヒロと試合出来ると思うよ」

「うん…。それもそうなんだけどなあ」

カズユキは拳法部はおろか、どの部活動にも入っていなかった。
昔から運動神経は悪い方ではなかったが、野球やサッカーなどの団体競技が性に合わないのだ。

「なんか違うんだよなあ。俺は、俺だけの力で強くなりたいっていうか、アイツを泣かしたいんだよなあ。拳法とかじゃなくてさ」

「そうなんだ…」

ユカには、カズユキのこだわりは理解できなかった。
しかしカズユキは、筋トレなどをしてそれなりに体を鍛えているようで、体格だけは運動部の生徒に劣るものではなかった。
これで拳法の技を身につければ、チヒロに勝つことも難しくはないと思えるのだが、他人の意見を素直に聞くような性格でないことは、ユカはカズユキと知り合った当初から感じていた。

「宮部くん。いいものがあるんだけど…」

「ん?」

ユカは立ち上がると、拳法部の男子更衣室に入っていった。

「え…と…。あった。これ」

何か探しているような音が聞こえ、更衣室から出てきた時には、その手に白い物体が握られていた。

「あの…。たぶん、これだと思うんだけど…。うちの男子が使ってるやつで…」

いつも小さい声をより一層細くして、ためらいがちに白い物体を差し出した。

「なんだ、これ?」

それはゴムバンドにプラスチックのカップのようなものが着いたもので、カズユキが初めて見るものだった。

「それ、あの…。ファールカップっていうの。みんな、その…金カップとか言ってるけど…」

カズユキはうなずいた。

「ああ、これか。これが、そうなんだ。初めて見た。これ、どうするんだ? 履くのかな?」

カズユキは慎重に立ち上がって、ファールカップをズボンの上から履いてみようとした。
それはビキニパンツのように履き、ゴムバンドでしっかりと固定するもののようで、カズユキの体にはピッタリ合った。

「こうかな。このカップの中に入れればいいんだろ? よいしょっと」

ズボンの上から自分のイチモツを握って、カップの中におさめた。
ユカはその様子に思わず目を逸らしたが、横目で観察していた。

「ああ、こりゃいいや。これなら、蹴られても痛くないかもな」

ズボンの上からファールカップを装着したカズユキは、ちょっと滑稽な姿になっていたが、その目は期待に輝いていた。

「うん。ウチの男子も、よくチヒロに蹴られてるけど、それを着けてるから、割と平気みたい」

「そうかあ。そうだよな。アイツの金蹴りをくらってたら、稽古なんかできなくなるもんなあ。なあんだ。いいのがあるんだなあ」

カズユキは心底感心したようで、ファールカップを着けた股間を自分の拳で軽く叩いてみた。
衝撃はあるが、痛みは感じない。これなら、チヒロの金的蹴りを受けても、ある程度耐えられそうだった。

「これ、借りていいのか?」

「うん、たぶん…。予備があると思うから」

「よし。じゃあ、これを着けて、もう一回アイツに挑戦してやるか。明日また…。いや、明日はまだアレだな。明後日にするか!」

「うん。そうした方がいいよ」

金的蹴りをまともにくらえば、一日くらいで痛みは回復しない。金玉が腫れあがってしまって、それを蹴られでもしたら、さらに痛みが増すことになるのだ。
カズユキはとりあえず、明日いっぱいは様子を見ることにした。

「見てろよ、チヒロのヤツ。今度こそ、俺が勝つからな!」

ちょっと腰を引き気味にしながら、それでも気合を入れるカズユキの姿を見て、ユカは少しだけ笑った。


翌々日、再び決闘を申し入れてきたカズユキに、チヒロはさすがに呆れた顔をした。

「また? 一昨日、負けたばっかりじゃん。潰れても知らないからね」

金的攻撃を予告するかのような言葉だったが、カズユキはひるまなかった。

「おう! 今日の俺は、いつもとは違うぜ。今日こそ、お前に勝ってやる!」

「あ、そう。じゃあ、部活が終わった後でね」

例によって、チヒロはカズユキの強がりをまったく相手にすることはなかった。
それでもカズユキは、今日こそは勝てるということを確信していた。
なにしろ、彼の学生服のズボンの中には、すでにユカから貸してもらったファールカップが装着されているのだ。
これがある限り、チヒロの金的蹴りは恐れるに足りないものとなり、金的蹴りさえなければ、負けることはないという確信があった。

「宮部くん、やっぱり、今日…?」

チヒロに宣戦布告をした後、ユカがカズユキのもとに近づいてきた。

「おう。こないだ借りたヤツ、もう着けてるからな。これで、負ける気がしねえよ」

自信ありげに話すカズユキを見て、ユカも笑顔を見せた。

「そっか。じゃあ、わたしも応援に行くね。あ、チヒロには秘密だよ。私が宮部くんにそれを貸したってことも、誰にも言ってないから」

「あ、そうか。じゃあ、よろしく頼むな!」

ユカの顔には、恋をする少女の明るい面影が、なんとなく感じられた。
カズユキはそれまで、ユカのことを異性として見たことはなかったが、自分に親切にしてくれる彼女に対し、好意を抱かないわけもなかった。
ファールカップを貸してくれたユカのためにも、負けるわけにはいかないと、改めて気を引き締めた。


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