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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。

陸上部に所属する中学2年のカズキが部室を訪れたのは、部活動の時間も終わりかけた、夕方遅くなってからだった。
カズキは明るく元気な生徒だったが、成績が悪く、一昨日の抜き打ちテストでとんでもない点数を取ってしまったために、居残りの勉強を強いられていたのである。
部室の電気は消えており、外から見る限りでは、人の気配はしなかった。
陸上部には男子と女子、合わせて15人ほどが所属していたが、今日の練習はもう終わってしまったのだろうか。
カズキはとりあえず、部室のドアに手をかけてみた。すると意外にも、ドアの鍵は開いていた。

「あれ? 開いてる」

不審に思いながらも、ドアを開けた。
やはり部室の電気はついておらず、真っ暗で、カズキは電気をつけようとして、部室の中に入った。

ピシャッ!

カズキの背後で、部室のドアが勢いよく閉められた。
同時に電気がつき、カズキは目を細める。

「やっと来たわね」

部室の奥に、カズキと同じ2年生の女子部員マキが、同じく部員で1年生のユイが制服姿で立っていた。
さらに後ろでドアを閉めたのは、2年生のヨウコだ。

「な、なにしてんだ、お前ら。部活はもう終わったのか?」

「部活は今日は休みよ。緊急にね。もう、みんな帰った」

「休み? なんで?」

「それは、アンタが知ってんじゃないの?」

「そうそう。白々しいヤツ!」

「え? なんだよ。何のことだよ?」

ただならぬマキとヨウコの雰囲気に、カズキは動揺した。
とりあえず、二人はかなり怒っているようだったが、それがカズキとどう関係があるのか、まるで分からない。
この中学の陸上部には女子が多く、2年の男子はカズキ1人しかいない。3年生の半分は男子だったが、それも先日の大会を最後に引退してしまった。あとは1年生に3人ほどいるだけである。
自然と現在の陸上部は女子に牛耳られた形になっており、3年生引退後の新部長は、目の前のマキが、副部長には背後にいるヨウコが任命されていた。
マキは真面目で練習熱心な生徒だったが、かなりキツイ性格として有名で、黙っていれば大きな目をした、明るくてかわいいタイプだったが、一度口を開けば、彼女には教師でさえいい負かされることもあった。

「私たちはね、アンタをずっと待ってたの。遅いと思ったら、まさか居残りさせれてるとはね。これだから、バカズキには困るわ」

カズキは1年のころから、このマキとヨウコが苦手だった。二人はカズキと違って成績優秀で、陸上の大会でもマキは短距離走、ヨウコは走り幅跳びで、それぞれいい成績をおさめていた。
一方のカズキは、短距離走で大会に出ているものの、予選一回戦を突破したことはなく、勉強の方はさらに惨憺たるものだった。
そんなカズキを、マキとヨウコは「バカズキ」とあだ名をつけて、日頃から馬鹿にしていた。
カズキは持ち前の明るさで、ひどく落ち込むようなことはなかったにしろ、やはりこの二人とはあまり面と向かって話をしたくなかった。

「居残りのお仕置きは終わったの?」

「お、おう。まあな」

カズキはヨウコの言い方に、何か不穏な雰囲気を感じ取った。

「じゃあ、今度はこっちのお仕置きね」

「え? なんだよ、お仕置きって?」

カズキはわけがわからず、マキとヨウコを交互に見た。

「今日ね、部室に置いてあった、1年生の女子のユニフォームが無くなってたの。この、ユイちゃんのがね」

先ほどからマキの隣でじっとカズキを見つめている、1年生のユイを指した。
ユイは色白で線の細い、見るからにおとなしそうな女の子だった。しかし、しなやかで長い脚を持っていたので、短距離走とハードル走の選手に任命されて、以来、練習に励んでいる。

「え? ホントかよ。泥棒が入ったのか?」

「泥棒? フン! どんだけとぼけんのよ、アンタ!」

マキはカズキを鼻で笑って、見下すように睨みつけた。
ヨウコも背後でため息をついている。

「とぼける? いや、まさかお前ら、俺が盗ったっていうのかよ、そのユニフォーム」

「決まってんじゃない! ユニフォームは部室に置いてあったのよ。部室の鍵は隠してあって、それは部員しか知らないし、鍵が壊されたような様子もないの。てことは、部員の中に犯人がいるってことじゃない。つまり、アンタよ!」

恐るべき三段論法で、マキはカズキの有罪を決めつけた。
カズキはまったく身に覚えのないことに動揺し、全否定する。

「何言ってんだよ。俺がそんなことするはずないだろ! どこに証拠があるんだよ!」

「アンタ昨日、一番最後に帰ったでしょ。珍しく、居残り練習して。おかしいと思ったよ。バカズキが真面目に練習するなんて。意味ないのに」

ヨウコは吐き捨てるように言った。
確かにカズキは昨日、一番遅くまで練習して、最後に部室の鍵を閉めて帰った。

「それは、今日居残り勉強しないといけなかったから、昨日できるだけ練習しとこうと思ったんだよ。俺はいつも真面目に練習してるだろ! それだけでユニフォームを盗んだなんて、言いがかりだぞ!」

「どうだか。じゃあ、アンタが帰るときに、ユイちゃんのユニフォームはまだあったわけ?」

「いや、それは知らないけど…」

「いい加減にしなさいよ。ユイちゃんはね、昨日、確かに部室のロッカーに自分のユニフォームを置いて帰ったの。それが、朝練のときに無くなってるのに気がついて、すごい怖くなったのよ。昼休みになって、ようやく私に相談してくれたんだから」

マキの手はユイをいたわるように、その肩に置かれていた。
部長としての責任感が、カズキへの怒りに変わっているようだった。

「私たちも色々考えてみたけど、やっぱり陸上部には、アンタしかいないのよね。ユニフォーム盗むような男はさ」

「ユイちゃんは、まだ1年生なのよ。悪いと思わないの? まず、謝りなさいよ!」

まくしたてるマキとヨウコによって、すでに自分が犯人に仕立て上げられてしまっている状況に、カズキはどうしていいか分からなかった。
もともと頭の回転が早い方ではないが、この二人にかかれば、口喧嘩で勝つのは誰であろうと無理だった。

「ユイちゃん、ごめんね。こんなヤツが陸上部にいたせいで、怖い思いして」

「いえ…。あの…先輩、ユニフォーム、返してください。私、アレがないと大会に出られないんです」

1年生のユイまでもが、カズキが犯人だと信じこんでしまっているようだった。勇気を振り絞った様子で、カズキに頭を下げてくる。
カズキはもう、何がどうなっているのか分からず、とりあえず一刻でも早くこの場を離れたかった。



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