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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


とある大学に、実戦形式を標榜する拳法部があった。
この大学はスポーツが盛んで、拳法部の他にも空手部が存在し、表面化はしていなかったものの、部員同士は内心では互いにライバル心のようなものを抱いていた。

学生食堂で、空手部の部員である三年生のユウジとリュウが、同じゼミの女の子二人と一緒に話をしていた。
女の子たち、サキとエリコは空手をしているわけではなく、ユウジたちにさまざまな質問をしていたが、やがて話題は拳法部との関係になった。

「えー、じゃあ、拳法と空手と、どっちが強いの?」

サキはいかにも素人のように、だいそれた質問をする。
ユウジたちはしかし、その質問にさらに大胆な返答をするのだった。

「そりゃあ、空手に決まってんだろ。拳法なんか、型ばっかりやって、踊りみたいなもんだろ」

「空手部の組手を見たら、ビビるぜ。すげえ迫力だからな」

「へー。見たことないなあ。殴ったりするの?」

「殴ったり蹴ったり、何でもありだよ。拳法なんて、あれは伝統武術だから、格好だけなんだよ。実戦には使えないんだ」

ユウジとリュウは空手部の中でも特に武闘派で、その分性格も荒く、日頃から大きな口ばかり叩いていた。
しかしその実力は本物で、鍛え上げた太い腕が、Tシャツの袖をパンパンに膨らませている。

「へー。そうなんだあ。今度、空手の稽古を見に行こうかなあ」

サキとエリコは派手ではなかったが、いかにも軽いノリの女の子たちで、大学には勉強よりも遊び相手を探しに来ている様子だった。
ユウジとリュウはそれを承知で以前から声をかけ続けて、最近ようやく、落とせるかというところまできていたのだ。

「でもさあ。拳法の方が、女の子にはいいんじゃないの? 護身術とかできるかもよ」

エリコがそう言うと、リュウがすぐさま否定する。

「バーカ。拳法の護身術なんか、実戦では無理なんだよ。型の稽古しかしないんだから、動く相手には使えないんだぜ」

「えー。そうなのぉ?」

「そうそう。だから護身術なら、俺が教えてやるよ。マンツーマンで、じっくりとさ」

「えー。それはちょっとなあ…」

エリコはそう言いながらも、まんざらでもない様子で、リュウたちもそれを察して、駆け引きを楽しんでいる様子だった。

「ねえ。アンタ達、空手部?」

突然、ユウジたちが座るテーブルの前に、一人の女子生徒が立った。

「あ? 誰?」

彼女の名前は八木チヒロ、拳法部に所属する三年生だった。
身長はさほど高くなかったが、デニムのホットパンツから伸びる引き締まった両脚とウエスト、そしてその立ち姿が、いかにも運動経験を感じさせた。
しかし見上げると、薄手のニットをはち切らんばかりに豊満な胸がそこにあり、それには一瞬、ユウジとリュウは目を奪われてしまった。

「アンタ達、空手部でしょ? アタシ、拳法部」

チヒロはにっこりと笑って、そう言った。
ユウジ達はそんなチヒロに少し気を呑まれた。

「あ、そう。それで。なんか用かよ?」

「うーん。用っていうかあ。変なこと言うなあ、と思ってさ。拳法より空手の方が強いとか、拳法は実戦では使えないとか」

ユウジとリュウは気まずい表情で顔を見わせたが、相手が女子で、傍らには意中の女の子たちもいるとあって、強気の姿勢を崩さなかった。

「ああ。そう言ったかもな。ま、ホントのことだしな」

「そうだな。ウチの空手部は組手重視だからな。拳法部は型重視ってことで、それはそれでいいんじゃないか?」

チヒロはそれを聞いて、少し沈黙したが、貼りつけたような笑顔は崩さなかった。

「ふーん。アンタ達、ウチの拳法部のことをよく知らないみたいだね。よかったら、教えてあげようか?」

「はあ?」

「教えるって、なんだよ?」

「拳法と空手と、どっちが強いか試してみようよ。アンタ達の大好きな、組手でさ」

チヒロは笑顔のまま、そう言った。
ユウジとリュウは一瞬、呆気にとられたが、やがて口を大きく開けて笑いだした。

「ハ…ハハハハ! マジかよ。拳法部が空手と組手しようってのか? アハハハハ!」

「やめとけって。恥かくだけだからさ。拳法部はおとなしく、型踊りをやってなって。ハハハ!」

チヒロはなおも表情を変えなかったが、その雰囲気は、そばにいたサキとエリコにも伝わるくらい、緊張したものだった。

「あ、そう。じゃあ、やってみようよ。アンタ達くらいなら、ウチの男子がやるまでもないよ。アタシでも倒せそうだね」

その言葉に、ユウジとリュウはさすがにむっとして、笑うのをやめた。

「おい、マジかよ。お前が俺らとやるって?」

「俺ら、あんまり冗談通じねえ方だよ。本気にするぜ」

「じゃあ、決まりね。さっそく今からやろうよ。拳法部の道場に来てよ」

チヒロはユウジ達のすごみに動ずる気配もなく、手を打って喜んだ。
ユウジ達はそれを見て、ますますイラついた様子だった。

「上等だよ。相手してやろうか」

「そっちは何人だよ」

「ああ、ちょっと待って。今、ウチの一年生を呼ぶからさ」

そう言って、チヒロは携帯で電話をかけ始めた。

「一年?」

ユウジはますます顔をしかめた。
そんな二人の様子に、サキとエリコは不安げな表情を浮かべる。

「ちょっと。やめなよ、女の子相手に」

「本気でやるつもりなの?」

「いいから、黙ってろよ。あっちからやるっていってきたんだろ」

「本気でやるわけじゃねえよ。ちょっと、組手するだけだ。試合だよ、試合」

男たちはここまで来た以上、引き下がるわけにはいかないという顔つきだった。
その不穏な気配に、サキとエリコは眉をひそめる。

「あ、ナナミ? お疲れー。あのさあ、今からちょっと道場に来てよ。…え? いいから、いいから。とりあえず、来なって。ね?」

チヒロは強引に相手を呼び出している様子だった。
電話を切ると、さらに二人を挑発するように、ほほ笑んだ。

「ま、試合だから。ちゃんと手加減してあげるよ。怪我することはないでしょ。たぶんね」

ユウジ達は苛立ちとともに立ちあがり、チヒロをにらみつけた。

「上等だよ! やろうぜ!」

「お前らもこいよ。面白いもん見せてやるから」

サキとエリコは顔を見合わせたが、わずかな興味も感じていたので、チヒロとユウジ達四人は、連れだって学食を出ていった。




拳法部が普段、稽古をしている道場に着くと、そこにはすでに小柄な女の子が一人、待っていた。
ミニスカートにカラフルなストッキングを履いて、茶髪の髪をツインテールにした、コケティッシュな風貌の彼女の名前はナナミ。チヒロの拳法部の後輩だった。

「せんぱーい。なんですかあ。急に呼び出して」

ナナミはチヒロの姿を見ると、アニメのキャラクターのような声で恨めしそうに言った。

「アタシ、これからバイトなんですけどお」

「悪い、悪い。すぐ済むからさ。ちょっと、コイツらと組手しようかと思うんだけど、2対1じゃん。リオは今月、教育実習でいないからさ」

「えー。組手って…。どちら様ですか?」

ナナミはチヒロに連れて来られたユウジとリュウを見た。
二人は自分たちの相手をするのが、こんな中学生のような女の子だと分かって、明らかに苛立っていた。

「空手部の人たちだって。空手部は拳法部よりずーっと強いから、稽古つけてくれるんだってよ」

チヒロは笑いながらそう言ったが、ナナミはその笑顔の裏にあるチヒロの真意に、即座に気がついた。
しかし、自分よりもはるかに大きく、鍛え上げられた肉体を持った二人の男を見て、さすがに戸惑ってしまう。

「えー! マズイですって。ウチの空手部、けっこう強いって評判じゃないですか。そんな人たちと組手するんですか? ムリムリ!」

ナナミの驚き方は、やや大げさにも見えたが、先ほどからプライドを傷つけられて苛立っているユウジとリュウには、それを疑う様子はなかった。
むしろようやく自分たちの実力を評価する人間が現れて、嬉しく思っていた。

「大丈夫だって。アンタでも勝てるよ。こんなヤツら」

チヒロは空手部の二人を背にして、堂々と言ってのけた。
再び、ユウジとリュウは苛立つことになる。

「えー。そうかなあ…」

「おい! いいから、さっさとやろうぜ。時間がねえんだろ?」

チヒロ達のやり取りに痺れを切らしたユウジが、叫ぶように言った。

「ん? そうだね。じゃあ、やろうか。アンタ達は、その辺で見てな」

チヒロは余裕そうな顔で振り向くと、サキとエリコに道場の隅で見ているようにうながした。

「着替えはしなくてもいいか。実戦形式ってヤツだもんね」

通常の組手ならば、拳法にしろ空手にしろ、道着に着替えるのが当たり前だったが、チヒロはあえて挑発するようにそう言った。
もちろん、ユウジ達も道着を着て本気で組手をするつもりなどない。
これは、生意気な拳法部の女子を懲らしめるための制裁だと思っていた。

「え…。じゃあ、まずはアタシですか?」

ナナミは恐る恐るたずねた。

「そうだね。まあ、胸を借りてきな。実戦形式で、何でもアリみたいだから。ね?」

チヒロは意味ありげにそう言って、ユウジ達に確かめた。

「もちろんだ! 俺がやってやるよ」

リュウはストレッチがわりに肩をぐるぐる回しながら、ナナミの前に立った。
ナナミはさすがにストッキングは脱いで裸足になったが、ミニスカートにジージャンという出で立ちは、とても組手をする格好には見えなかった。

「せんぱーい。アタシ、ミニスカートなんですけどお。パンツ見えちゃいますよ」

ナナミが恨めしそうに言う。

「いいから、いいから。じゃあ、始めるよ。勝負はどっちかがギブアップするまでね!」

ナナミとリュウは道場の床の中央、組手をする際の開始線に立ち、向かい合った。

「よろしくお願いしまーす」

ナナミはペコリと頭を下げたが、リュウは礼もしなかった。
苛立ちながらナナミに近寄り、挑発するように両手を広げて見せた。

「さあ。どっからでも攻撃してこいよ。お前の拳法なんかじゃ、痛くもかゆくもねえんだ」

リュウの鍛え上げられた、筋骨隆々の肉体を前にして、ナナミはさすがに息を飲んだ。
横目でチラリとチヒロを見ると、チヒロはほほ笑みながらうなずいた。

「あ! ちょ、ちょっと待って。構えたら、ブラがずれちゃった…」

ナナミは突然、そう言うと、クルリと後ろを向いた。
Tシャツの中に手を入れて、ブラジャーの位置を直している様子だった。

「ああ?」

リュウはその緊張感のなさにあきれ、両手を広げたまま、黙ってその様子を見ていた。
すると次の瞬間、ナナミが勢いよく振り向き、右の肘打ちがリュウのわき腹に突き刺さった。

「ぐえっ!」

小柄なナナミだったが、遠心力を利用した肘打ちは強烈で、しかもリュウは完全に気を抜いた状態でくらってしまったため、そのダメージは大きかった。
人体で最も堅く尖った肘で、筋肉の薄い脇腹をえぐるように狙う、実戦拳法の見事な技だった。

「う…く…」

リュウはわき腹をおさえて、体を傾ける。
そしてさらに、がら空きになったリュウの鳩尾に、ナナミは拳を固めて突きを入れた。

ドスッ!

と鈍い音がして、呼吸が一瞬、止まった。
ナナミはリュウが鳩尾をおさえるのよりも早く、飛びのいて、距離をとっていた。

「かはっ! げほっ!」

リュウは鳩尾をおさえて、前かがみになって咳こんだ。

「よし! ナイス、チヒロ」

チヒロが声をかけると、ナナミはうれしそうにガッツポーズをとった。
横で見ていたユウジは悔しそうに舌打ちして、チヒロに抗議した。

「おい! なんだよ、今のは。汚ねえじゃねえか!」

チヒロはそれを聞いて、わざとらしく驚いて見せた。

「えー。だって、実戦形式なんでしょう。空手部はどうか知らないけど、ウチは武道だからさ。相手を油断させるのも、武道のうちなんだけど」

そう言われると、ユウジは悔しそうに舌打ちすることしかできなかった。

「おい、リュウ! 大してきいてないだろ! やっちまえよ!」

ユウジが声をかけると、リュウはまだダメージが残っていたものの、なんとか体を起こして構えなおした。

「リュウ君、がんばれー!」

「ガンバ!」

連れの女の子たちが見ていることもあって、あまりみっともない所は見せたくなかった。
さきほどの肘打ちは、油断していたとはいえ、急所を的確に打ち抜いた見事なもので、ナナミの戦闘能力の高さをうかがわせるものだった。
しかしリュウは、そんなことを認めたくはなかった。
なんといっても、相手は自分より20センチも小さい、女の子なのだ。
男のプライドにかけて、負けるわけにはいかなかった。

「えー。まだやるんですかあ。もう、いいじゃないですか。怪我する前に、やめときましょうよ」

微妙に挑発するようなナナミの発言に、リュウは憤りを覚えた。

「いくぞ!」

問答無用で、ナナミに突進していった。
構えた姿勢から、素早く正拳突きを放つが、ナナミは演技かどうか、悲鳴をあげながら逃げてしまう。

「きゃあ!」

空手の組手では考えられない、明らかな敵前逃亡だった。
しかし手が届かなければ、どんな攻撃も当たることはない。
リュウは逃げるナナミをつかまえようと、追いかけた。

「この野郎! 待て!」

ナナミは追いかけてくるリュウに背を向けて、子供のように必死に逃げた。
リュウも追いかけるが、追いながらの攻撃は、どうしても中途半端なものになってしまい、しかも攻撃して止まるたびにナナミとの距離が開くから、どうしようもなかった。

「おい! こんなの、組手じゃねえだろ!」

ユウジが再び、チヒロに噛みついた。

「逃げるのも武道のうちよ。身を守るには、逃げるのが一番。戦わない事が、最上の護身術だよ」

チヒロは堂々とそう言った。
ユウジは納得いかなかったが、そばで聞いていたサキとエリコは、感心した様子だった。

「くそっ!」

それでも、リュウも稽古を積んだ空手家である。
やがて一瞬の隙をついて、ナナミの逃げる先に回り込むことに成功した。
この数分間で初めて、両者が向かい合う形になった。

「ありゃ。まずいなー」

ナナミはしかし、どこか余裕がありそうにつぶやいた。
リュウは息を切らしつつも、ようやく訪れたチャンスにほくそ笑んだ。

「せいっ!」

ここぞとばかりにリュウは大きく踏み込んで、右の回し蹴りをナナミの顔面めがけて放った。
手加減はしていたが、女の子相手にすることではない。
苛立ち、疲れ切ったリュウの思考は、完全に麻痺していた。

「きゃっ!」

ナナミは叫んで、ストンと腰を落とした。
避けたというよりは、床に尻もちをついた形だった。
リュウの回し蹴りは空振りし、体勢を崩す。
しかしリュウの目は、あるところに釘づけになった。

「痛てて…」

尻もちをついて痛そうにしているナナミの脚は無防備に開かれ、ミニスカートの奥に、薄いグリーンのパンティーが見えた。
組手中とはいえ、丸見えになったナナミの下着に、リュウは男の性として、見入ってしまった。
またナナミの気の抜けた雰囲気が、完全にリュウの油断を誘っていた。

「隙あり!」

そんなリュウの邪心と油断を計算していたかのように、ナナミは即座に動いた。
体勢を崩して腰を落としていたリュウの足元に素早く近寄り、しゃがみこんだ体勢から、ひざのばねを存分に使ったアッパーカットを股間に打ち込んだのだ。

バシィン!

という音が、道場に響いた。
ナナミは拳を握らずに、手のひら全体でリュウの股間を打ち上げた。
リュウはジーンズを履いており、股間の急所の位置が正確につかめなかったので、より広い範囲を攻撃する必要があったのだ。
もちろん拳を握るより威力は落ちるが、それでも男の最大の急所にダメージを与えるには、十分すぎる威力だった。

「ううっ!!」

突然のナナミの反撃に、リュウは何が起こったか分からなかった。
しかし股間に受けた衝撃と、すぐに湧きだしてきた重苦しくも痺れるような痛みに、自分の身に起こったことを理解せざるをえなかった。
反射的に股間を両手でおさえると、前かがみになった、痛みに耐える体勢をとる。

「やったあ!」

ナナミは嬉しそうに叫んだ。
しかしチヒロが、横から声をかける。

「まだだよ!」

「あ。はい!」

ナナミはすぐに立ちあがると、前かがみになって脂汗を流しているリュウの顔面に、指先全体を使って目打ちを打ち込んだ。

「う!」

眼球を直接攻撃するものではないが、相手の視界と思考力を奪うには十分で、リュウは思わず両手で顔面をおさえた。
当然、その股間はがら空きになる。内股になっているとはいえ、ナナミの小さい足は、十分その隙間を狙えた。

「はいっ!」

ナナミはとどめとばかりに、鞭のようにしなる金的蹴りをリュウの股間に放った。
グニっとした金玉の感触を、ナナミは足の甲に感じた。

「はうっ!!」

リュウは顔面の痛みと股間へのさらなる打撃に、パニックになってしまった。
先ほどの手のひらの打撃とは比べ物にならない衝撃が金玉に加えられたことで、リュウのひざはその意志とは無関係に崩れ、前のめりに床に突っ伏してしまった。

「くうぅ…!」

湧きあがってきた金玉の痛みに、情けない悲鳴をあげる。
両手で股間をおさえて尻を高く上げ、額を床にこすりつけるその姿は、男の逞しさとは程遠いものだった。


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