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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


「じゃあ、とにかく始めようか。第三試合、ファイッ!」

アサミの合図で、いよいよ開始のゴングが鳴った。
すぐさま、ナオキは両手を上げてガードを固め、さらにいつも以上に体を斜めにして、股間を正面から隠すかまえをとった。
一方のミオは、相変わらず余裕のある顔つきで、足を大きく引いた、空手のかまえをとっている。
一見して膠着状態に陥りそうだったが、数秒もしないうちに、ミオの方からナオキに歩み寄ってきた。

「シッ!」

ゴングが鳴ってしまえば、ナオキはむしろいつもの落ち着きを取り戻していた。
慣れた様子で、ミオの顔面に向かってジャブを放ってくる。
男子ボクシング部も、男子空手部と同様、女子の胸を攻撃することはできるだけ避けていたが、グローブをしているためか、顔面を打つことに抵抗はなかった。
あるいはそうしなければ、自分たちの身が危ないことを、もはや彼らは知っていたためだった。

「シッ! シッ!」

ナオキのジャブは、さすがにボクシング部の部長らしく基本に忠実なもので、思った以上に有効だった。
ミオは空手の経験しかしたことがなかったため、これほど速いパンチを受けた経験がなかったのである。
ただ、ナオキがジャブを打った直後、いつも通りコンビネーションパンチを打とうと踏み込むと、ミオの脚が防御のためか、スッと上がるのである。
それは、ナオキにとっては金的を攻撃されるかと思い、つい、過剰に反応してしまう動作だった。

「…くっ!」

うかつに踏み込めば、1発や2発のパンチは当てられるだろうが、その後に膝で金的を蹴り上げられるかもしれないという恐怖があった。
実際に、第1試合のジュンは、そうやってサトミに金的を攻撃されてしまったのである。

「えいっ! やあっ!」

ミオは、ナオキが間合いを詰める意識が薄いとみると、さかんに蹴り技を使ってきた。
そこは、股間に急所の無い女の子のことで、少々体勢を崩しても、反撃される不安はないようだった。

「ぐ…あ!」

慣れないボディへの蹴りの連続に、ナオキは思わず顔を歪めた。
グローブを使って、ある程度ガードはできているものの、やはり衝撃のすべてを吸収できるわけではない。
散々ボディへの中段蹴りを放った後、ミオはさらに、上段への回し蹴りを放とうとした。

「せいっ!」

気合と共に脚が上がり、ナオキもそれにつられて、両手のガードを上げてしまったが、次の瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、ミオのほくそ笑む顔だった。

「はいっ!」

胸まで上げかけた足を素早くおろし、その反動で、反対側の脚を振り上げた。
狙いはもちろん、ナオキの股間であった。

コーン!

と、高い音が響いた。
ミオの脚が、ナオキの股間のファールカップを蹴り上げた音だった。

「ふっ!」

股間に響く衝撃に、ナオキは思わず左手で股間をおさえた。
ミオの蹴りは、ナオキが内股になっていたため、両脚の間には入らず、斜め下から蹴り上げる形になった。
男がファールカップを着けている場合、この蹴り方でも股間全体に衝撃を響かせることができると、ミオは知っていたのだった。

「く…く…!」

ナオキはしかし、少し前かがみになる程度で踏みとどまることができた。
ファールカップを着けていなければ、確実にダウンしているところだったろう。

「えいっ!」

そこへ、ミオの中段突きが決まった。
胸をまともに突かれたナオキは、その衝撃で膝をついてしまう。

「一本!」

ミオに一本を取られてしまった。
しかし、ダメージは深刻なものではなく、ナオキはすぐに立ち上がることができた。
まだ股間と胸に、ジンジンと響くものはあったが、とりあえず試合続行できそうだった。

「ナオキ! 頑張ってよ!」

「負けたら、許さないからね!」

女子ボクシング部員から、容赦のない檄が飛んだ。

「ミオ! ナイス!」

「油断しないで!」

女子空手部員からも、声援が飛ぶ。
ミオはその声に、手を振って応えるほどの余裕があった。

「ファイッ!」

試合が再開された。
まだダメージの残るナオキは、自分から攻めに行くことはできなかった。
そこへ、余裕そうな表情で歩み寄ってくるミオ。
彼女がちょっと脚をあげる仕草を見せるたび、ナオキは過剰に反応してしまうようになった。

「……っ!」

ナオキは徐々に後退し、いつの間にかコーナーに追い詰められてしまっていた。
リングの使い方に関しては、ボクシング部である自分の方が上だと思っていたが、いつの間にか空手部のミオも、コーナーに追い詰める術を理解していたようだった。

「くそっ!」

困った時ほど基本に忠実にと、ナオキはジャブを放った。
しかしそのジャブには、先程のようなキレと重みはなさそうだった。
ミオは間合いのわずか外から、じっくりとナオキの様子を観察しているようだった。

「金カップ着けてれば、あんまり痛くないと思ったでしょ?」

「…え!?」

パンチを打ちながら、ナオキは動揺した。

「さっきのは、全然本気じゃなかったからね。ただ、アンタの動きを止めるためだけの金的蹴り。次は、思いっきり蹴ってあげる」

ナオキの脳裏に、先程の痛みがよみがえってきた。
そしてミオはまた、スッと右脚をあげて、金的を蹴るそぶりを見せる。

「うわっ!」

思わず、グローブを着けた両手で、股間をガードしてしまった。

「せいっ!」

そこへミオが大きく踏み込み、がら空きになったナオキのボディへ、渾身の下突きを放った。

ボグッ!

と、拳が腹筋を突き破り、内臓にめり込む音がした。

「ぐえぇっ!!」

強烈な一撃だった。
ナオキは股間を守っていた両手を上げて、腹をおさえるしかなかった。

「あ、いっぽ…」

「まだまだ!」

アサミが手を挙げかけたとき、ミオがさらにもう一歩踏み込んで、ナオキの両肩を掴んだ。
そしてグッと沈み込むと、両脚のバネを使って、飛び上がるような膝蹴りを、ナオキの股間めがけて打ち込んだのである。

ゴンッ!

という鈍い音は、ファールカップがナオキの恥骨にめり込んだ音だったろう。
ミオの膝は、ナオキの金玉に直接触れることはなかったが、一瞬体を浮かすほどのその衝撃は、十分に伝わった。

「はあっ!!」

ドーム状になっているファールカップの容器は、その中にすっぽりとおさまっている二つの睾丸に、かえって四方から衝撃を伝えることになった。
金玉袋の真下、正面、左右、そして裏側。それぞれからまんべんなくミオの膝蹴りのエネルギーが伝わり、それらが袋の中に入っている金玉の中でぶつかり合い、反射する。
お寺の釣鐘を突いたときに、その振動がいつまでも中に留まるように、その衝撃はナオキの急所を痛めつけ続けることになってしまった。

「うっ…くあっ…!!」

ナオキは、自分の天地が一瞬でひっくり返ったことにも気がつかなかった。
股間からせりあがってくる強烈な痛みが、電撃のように背骨を伝って全身に広がり、呼吸さえできなくなっていたのだ。
自分が今、どんな格好をしているのかさえ分からないほどに、彼の全身は痛みで覆われてしまったのだった。

「い、一本! 合わせて、二本! 空手部の勝ち!」

ナオキが、力なくリング上に倒れたのを確認して、アサミが試合終了を宣言した。

「やった!」

ミオは、それに合わせて高々と両手を上げる。

「やったね、ミオ!」

「さすが!」

女子空手部員たちがリングに上がり、ミオの勝利を祝福する。
そんな中、彼女たちの足元に転がって、真っ青な顔で震えているナオキを、アサミはボクシング部の仲間として、一応、心配してやった。

「うわー…。ちょっと、大丈夫?」

唇を震わせながら、口の端から涎を流しているナオキを見て、アサミはちょっと引いたような声を上げた。
もちろんナオキは、返事をするどころではない。
すると、彼に代わって、彼をこんな状態にした張本人であるミオが答えてやった。

「ん? ああ、大丈夫。金カップしてれば、潰れないから。ただ、痛いだけ」

「え? ああ、そうなんだ。ただ痛いだけなんだ。ふーん」

アサミはそれを聞いて、急に冷めたような顔つきになった。

「あーあ。負けちゃったなあ。もー、ナオキってば、あっさり負けちゃって。情けないなー」

アサミの言葉はナオキの耳にも届いたが、それに言い返すだけの気力も余裕もなかった。

「ホント。アタシたちは勝ったけど、男子は負けちゃったね。これじゃあ、練習場の件も無理かな」

「うーん…」

女子ボクシング部の女の子たちに、沈んだ空気が流れてしまった。

「まあね。ウチも男子は負けたけど、アタシたちが勝ったから、なんとかなったよ。まあ、ギリギリかなあ」

ミオの言葉に、女子空手部の女の子たちもうなずく。
ふと、彼女たちの間に共通の意識があることに、ここで初めて気がついた。

「ホント、男子って弱いよねえ」

ハッと、女子ボクシング部、女子空手部の女の子たちは気がついた。
練習場所を賭けたこの試合で、生き残っているのは、ボクシング部と空手部、両方の女の子たちだけではないかと。

「ねえ、ちょっといいアイデアがあるんだけど…」

「ホント? たぶんそれ、アタシも考えてた」

ニッコリと、アサミとミオは笑いあった。
そして、これまでの試合で傷つき、まだ股間をおさえて呻いている男子たちに向かって言った。

「これから、女子が優先的に練習場所を決めるから。男子たちは、どっかで勝手に練習しといて!」

女の子たちが声をそろえてそう言ったため、その場にいる男子たちは、誰も何も言い返せなかった。
言い返そうにも、「文句があるなら、かかってこい」と言わんばかりの女の子たちの強気な態度に、すでに心を折られている男の子たちは、何も言うことができなかった。
男子空手部と男子ボクシングの苦労は、これからだった。



終わり。


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本当に興奮しました。男の無力さ、女性の強さを感じる話でした。ファウルカップの滑稽さも良かったです。
[2014/12/24 Wed] URL // 7 #- [ 編集 ] @
すごいバリエーションも、豊富で楽しませてもらいました。
この物語のミオさんが、痴漢にあって金的蹴りを二回副睾丸に決めたストーリーを外伝とした描いていただけたらなあと思いました。それぐらい各キャラの個性がたっていました^_^
[2014/12/26 Fri] URL // #- [ 編集 ] @
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2014/12/27 Sat] // # [ 編集 ] @
対決ものはいいですね。男女の力の差に興奮です!
[2014/12/27 Sat] URL // なん #- [ 編集 ] @
管理人様のネタの豊富さに感服いたしました!
[2015/01/19 Mon] URL // #- [ 編集 ] @
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[2019/04/17 Wed] // # [ 編集 ] @

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