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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


春。新しい出会いと生活に溢れる季節。
とある大学に入学した佐々木マサヤは、その空手部の門を叩こうとしていた。
小学校から高校まで、某空手道の道場に通っていた彼の実力は確かで、組手の大会で優勝したこともあった。
そんな彼が、今さら普通大学の空手部などに通うメリットはあまりなかったが、ちょっと腕試しというか、自分の実力を誇示するための道場破りのようなことをしてみたくなったのだった。

「お願いします!」

道場に入るとすぐ、大きく声を上げた。
それは挨拶というより、威嚇に近いものだった。

「はい。こんにちは」

見ると、道場の真ん中に、ちょこんと一人の女性が正座している。
時間が早すぎたのか、まだ稽古は始まっていないようだった。
すでに道着に着替えてきていたマサヤは、軽く失望した。

「あの…。ここは、空手部の稽古場ですよね?」

「はい。おっしゃる通りです。アナタは新入生かしら? 私は、ここの指導をしています西ノ宮です。よろしく」

女性は座ったまま、ペコリと頭を下げた。
まだ30歳にはなっていないようなその女性は、小柄で、いかにも大人しそうな女性教師という印象だった。

「ああ、はい。佐々木です。よろしくお願いします。…その、稽古はまだ…ですよね?」

「そうですね。みんなが揃うには、まだちょっと時間がありますね。佐々木さんは、空手の経験がおありなんですか?」

「はい。まあ、少しは…」

「まあ。それは素晴らしいですね。経験者の方が入部されれば、部長たちも喜ぶと思いますよ。頑張りましょうね」

その女性、西ノ宮チホは、笑顔でうなずいた。

「ああ、いや、まあ…。まだ入部するって決めたわけじゃないスけど…」

マサヤはきまりが悪そうに、頭を掻いた。
実際は入部するつもりなどなく、この空手部で一番強そうな人間、例えば部長などに勝負を挑んで、叩きのめしてやろうと考えていたのだ。
しかし、目の前にいる小柄な女性が指導をしていると聞いて、これは想像以上に軟弱な空手部だったと思い、それなりに気合を入れてきた自分に後悔している。そんな状態だった。

「あらあら。それはまた、どうしてですか? せっかく道着まで着てこられたのに。みんな仲良しで、楽しいですよ、ウチは」

「いや、まあその…。俺は自分より強い人と稽古したいんスよね。そうじゃないと、強くはなれないでしょ。ここに、俺より強い人がいますかね?」

どうせ入部はしないと思い、かなり失礼にあたるとは思いながらも、そう言った。

「まあ。そういうことですか。佐々木さんは、とても熱心なんですね。でもそういうことでしたら、私がきちんと佐々木さんを指導して差し上げますから、大丈夫ですよ。一緒に頑張りましょう」

マサヤが拍子抜けするほどに、ペースの違う相手だった。

「え? あ、いや、頑張るっていうか…。アナタが指導するんですか? 俺に?」

「はい。もちろん」

チホは笑顔でうなずいた。
どう見ても、空手の鍛錬を積んできたとは思えない体つきだったが、よく見ると、彼女の道着を締めている帯は、紛れもない黒帯だった。
しかし、マサヤももちろん黒帯である。黒帯といっても、いろいろな人間がいる。そう思って、マサヤは再び無礼なことを言った。

「じゃあ、ちょっと今ここで、稽古つけてくれないスかね? それによって、入部するかどうか決めますから」

「なるほど。佐々木さんは、実践主義の方なんですね。分かりました。お相手しましょう」

臆することもなく、チホはすっと立ち上がった。
身長は150センチそこそこ。
どう見ても、180センチ近いマサヤの稽古相手が務まるとは思えなかった。

「ハハッ! マジッスか? 組手でもします?」

「いいでしょう。他の部員たちが来るまでですけど」

そんなに時間はいらない。速攻で叩きのめしてやる、と、マサヤは道場に上がった。

「準備運動とかは、いいんスか?」

「私は武道家です。武道に準備などありませんよ。佐々木さんは準備運動したければ、どうぞ」

見かけに反して、一丁前なことを言うと思い、マサヤはむっとした。

「いや、俺もいいッス。俺も武道家ッスから」

「では…」

すっと、ごく自然な様子で、チホはかまえをとった。
それに合わせて、マサヤも慣れたかまえをとる。
ルールも決めず、開始の合図もなかったが、二人の間ではすでに試合が始まっていた。

(ヤバイ…)

と思ったのは、マサヤである。
不覚にも向かい合ってみて初めて、相手の実力が分かった。
いや、そこで分かっただけでも誉めてやるべきだったかもしれない。それくらい、西ノ宮チホの見た目と実力には、大きすぎる開きがあったのだから。

「せぇい!」

道場の窓が震えるような声を発したのは、チホの方だった。
しかも彼女は微動だにせず、声に気圧されたマサヤの方が、うかつにも手を出してしまった。

「わっ!」

自分でも、何をしたのか覚えていない。
右の正拳突きで、彼女の顔面を狙ったような気がするが、定かではない。
とにかく気がついたときには、佐々木マサヤの股間には、西ノ宮チホの右足が深々とめり込んでいたのだ。

「ふうぅっ!!」

瞬時に背中を丸めて、その場に這いつくばった。
例えようのない重苦しい痛みが、全身に広がり始める。

「あらあら。大丈夫ですか?」

両手で股間をおさえ、じたばたと足を動かしながら転がるマサヤに声をかけた。
しかしその表情は、先程と変わらぬ穏やかさで、相変わらず微笑さえ浮かべているように見えた。

「く…く…!!」

地獄のような重苦しい痛みの中で、マサヤは必死に今の立ち合いを反芻しようとしていた。
チホが放った金的蹴りは、自分が今まで食らったどの金的蹴りよりも鮮やかで、正確だった。最小限の動きで正拳突きをかわし、これ以上ないというタイミングで、右足を跳ね上げたのである。そこには一切の無駄な動きがなく、迷いもためらいもなかった。
男の最大の急所を最も効果的に蹴り上げて、最も大きなダメージを与えようという、恐ろしいまでの冷徹な意思を、マサヤはチホの金的蹴りから読み取らざるを得なかった。

「大丈夫ですか? ちょっと休憩しましょうね」

「参りました」という言葉が喉まででかけていたマサヤは、顔を上げた。
その表情を読み取ったのか、チホはにっこりとほほ笑む。

「どうしました? 他の部員が来るまでは、稽古をつけてあげますよ?」

「……!!」

以前、道場にいた、冷酷なまでに厳しい稽古を要求する先輩を、マサヤは思い出していた。
チホの目の奥は、決して笑ってはいない。
折れそうになった心を必死に立て直して、マサヤは歯を食いしばり、なんとか立ち上がろうとした。

「お、お願いします…!」

「はい。お願いします」

よろよろと立ち上がり、完全に腰を引いたかまえをマサヤがとっても、チホはためらう様子はなかった。

「佐々木さんは、かなり稽古を積んでいるようですが、まだ動きが固いですね。ちょっと打ってきてください」

どうやら本当に指導をしてやるつもりで、チホは立ち合っているようだった。
気を抜けば膝をついてしまいそうになる痛みの中で、マサヤはそれでも懸命に自らを鼓舞した。

「せいっ!」

これまで厳しい稽古を続けてきた自分が、こんな小柄な女性に負けるはずはない。
そう思って、先程とは比べ物にならないほど集中し、気合を込めた正拳突きを放った。

「はい。固いですね」

しかしチホは、繰り出された拳を無造作に払いのけると、易々とその懐に入ってしまった。
そしてまた、極めて滑らかな動きで足を跳ね上げ、マサヤの股間を蹴り上げようとする。

「うっ!!」

思わず飛び跳ねるようにして腰を引いたが、意外にもその足はマサヤの急所の寸前で止まっていた。

「動きが固いから、相手に簡単に読まれてしまうんですよ。さあ、もう一度」

「く…そっ!」

完全にもてあそばれていると感じたマサヤは、下半身の痛みを振り払うようにして、次々と攻撃を繰り出した。
しかしそれらは一発として当たらず、すべて空しく空を切ったり、絶妙なタイミングで受け流されたりしてしまった。

「はい、固い。これもそう。これもダメですね」

しかもチホは、何発かに一発は、完璧なカウンターの金的蹴りを織り交ぜてくるのである。
それらはすべて寸止めだったが、一発でも当たれば、またマサヤは床に這いつくばってしまうことは明らかだった。

「ハア…ハア…」

すべての攻撃をかわされて、さすがにマサヤの息が切れてきた。
一方のチホは、汗一つかいている様子はない。

「あらあら。疲れてきたみたいですね。じゃあ次は、守りの方もみてあげましょうか」

「なにを…!」

「はい」

と、マサヤが身構える暇もなく、チホはすっと射程距離に入ると、再び金的蹴りを放った。その絶妙な呼吸は、とてもマサヤの実力で見切れるものではない。
今度は寸止めではなく、先程よりも軽く、ほんの少し当たる程度の蹴りだった。

「うっ!!」

それでも、男にとっては激痛である。
マサヤはたまらず、内股になって股間をおさえてしまう。

「最も効果的で狙いやすい急所の一つが、金的です。部活の生徒たちにも、隙があれば積極的に金的を狙いなさい、と教えています。逆に、佐々木さんは金的の防御を常に意識しなくてはいけませんよ。男の子なんですから」

「…このっ…!」

まだ怒りが保てるほどの痛みだった。
あるいはチホは、それを狙って、力を調節したのかもしれない。
なりふり構わず殴りかかったが、チホにとってはかわすことなど造作もなかった。

「ほら、また」

ビシッと、チホの金的蹴りががら空きになったマサヤの股間に決まった。

「っっつ…!!」

まだ痛みが残っている睾丸をさらに跳ね上げられて、マサヤは声にならない悲鳴を上げ、膝をついてしまった。

「金的のガードがおろそかになってますよ。男性にとっては最大の急所なんですから、しっかりと守ってください」

「く…そっ…!」

膝をつきながら、内臓を掻き回すような重苦しい痛みに耐えるマサヤ。
見上げれば、そこには自分よりもずっと小柄で華奢な女性しかいないのである。
こんな相手に翻弄されている自分に、マサヤは激しい怒りを覚えた。

「私は金的しか狙いませんので、頑張って守ってください。佐々木さんは金的の防御が特に甘いようなので、いい稽古になると思いますよ」

にっこりと笑いながら言うチホの笑顔に、マサヤは戦慄する思いだったが、すぐにそれを振り払うように、怒りを込めた目つきで立ち上がった。

「おらぁ!」

普段は禁止されている、顔面への蹴りを放つ。
もはや女性を相手にしているという意識は、マサヤにはなかった。

「ああ、蹴りはいけませんよ」

マサヤの蹴りを、鼻先スレスレでかわしたチホは、そのままマサヤの足が着く前に、がら空きの股間につま先を当てた。

「はうっ!!」

その蹴りはそれほど素早いものではなかったが、チホの指は、正確にマサヤの金玉を押し潰したようだった。

「足を高く上げるときは、よほど注意しないといけませんよ。今みたいに、金的が狙いやすくなっていますからね」

「う…ぐぐ…!!」

金玉の痛みは、わずかな時間差をおいて上がってくる。
その時間差は、男に大切なシンボルを攻撃されたという怒りを感じさせるには十分なものだ。
マサヤは本格的な痛みが上がってくる前に、かっとなって、再びチホの顔面めがけて蹴りを放った。

「ほら、また!」

行動を読んでいたのか、チホはマサヤの蹴り足が届く前に、カウンター気味にその股間に蹴りを当てた。

「はあっ!!」

そのつま先は正確に、マサヤの金玉袋の裏側を捉えた。
マサヤ自身の蹴りの動作とチホの蹴りの速度が重なったことで、さっきとは比べ物にならない衝撃が、マサヤの股間を突き抜ける。

「ダメですよ。ちょっとは反省しなさい」

「ぐう…う!!」

マサヤはすぐさまその場にうずくまり、床に額を擦りつけ、両手で股間をおさえた。
下半身には、これまでで最も重たく、鋭い痛みが広がり始めている。

「今の蹴りは、金的の裏を狙ったんですよ。分かりましたか? 金的の裏には、副睾丸というのがあって、そこは急所の中の急所といわれるくらい、危険な場所なんです。気を付けてくださいね」

ニコニコと笑いながら話す内容ではなかった。
マサヤはもちろん、金玉袋に裏から当てられると、普段よりも遥かに痛いということは経験で知っていた。
しかし目の前の女性が、自分のそこを狙って攻撃してきたということに、これ以上ないくらいの恐怖を覚えた。
彼女が本気だったなら、今以上の苦しみを自分に与えることができたのは、間違いない。
掌の上でもてあそばれているよりももっとひどい、決して埋まることのない実力の差が、そこにはあると思わざるを得なかった。

「佐々木さん? もうおしまいですか?」

マサヤの心境の変化を感じ取ったのか、チホの体からふっと気合のようなものが抜け、うずくまるマサヤの側にしゃがみこんだ。
それはきついお仕置きを終えた後の主人のような、ごく自然な動作だった。

「す…すいませんでした…。すいません…」

消え入るような小声で、マサヤはつぶやいた。
覗き込むチホの顔を、見ることができない。
何に対して謝っているのか、自分でも分からなかった。

「アナタは、みくびっていましたね。最初に私を見て、大したことないと思ったんでしょう。女性で、小さいから、自分より弱いと思ったんじゃないですか? それは武道家にはあってはならない油断です。分かりますか?」

チホの顔には、先程までの笑顔はなかった。
少しだけ声を低くしてつぶやいただけだったが、マサヤにはそれは閻魔大王の底響きするような声に聞こえた。

「あ…あ…すいません…!」

「勝負の世界で油断をすれば、痛いだけはすまないこともあるんですよ。私が佐々木さんの金的を潰すチャンスが、何回あったと思いますか? 金的を潰されれば、男性はショック死することもあるんですよ。分かっていますか?」

「はい…はい!」

チホに食らった金的蹴りの感触が蘇ってきて、マサヤは何度もうなずいた。
確かに彼女が本気だったなら、マサヤの金玉は10回は潰されていたかもしれない。それくらい正確な蹴りを、マサヤは何度も食らっていた。

「あの…すいませんでした…! ホントに…調子乗って…すいません!」

いつの間にか、股間をおさえたまま、土下座するような格好で、チホに謝っていた。
自分の男のシンボルである最大の急所が、彼女の手の中に握られているような心境が、マサヤを襲ってしまっていたのだ。

「うん。まあ、そうですね。次からは、もう少し真剣に相手を観察して…」

チホがそう言いかけたとき、道場の入り口に一人の女子生徒が現れた。

「あーっ! 先生、またやってる!」

「あら。部長。こんにちは。もうそんな時間かしら」

部長と呼ばれたその女子生徒は、チホの質問には答えず、駆け寄るようにしてマサヤのそばに近づいてきた。

「もー、先生。この子、新入生でしょ? やめてって言ったじゃないですか。新入生の男子をいじめるのは。また空手部の変な噂がひろまっちゃうでしょ。新入部員がこなくなったら、どうするんですか?」

「変な噂? そんなのがあるんですか?」

「そうですよ。あの空手部に入ったら、急所を潰されるとか、オカマになるとか。先生のせいですからね!」

部長にそう言われると、チホは「まあ」と一声上げて、黙ってしまった。

「ちょっとアナタ、大丈夫? ゴメンね。この先生、金的マスターって呼ばれてるからさ。金的ばっかり蹴ってきたでしょ? 普段は優しい人だから、女子にはすごい人気あるんだけど、男子にはね…。ウチに入部しようとしてたんじゃないの? ホントにゴメンね」

金的をおさえてうずくまるマサヤの姿を見て、部長はすべて承知したようだった。
マサヤは声を出す気力もなかったが、わずかにうなずくことができた。

「でも、佐々木さんはかなり強かったですよ。相当、稽古を積んでるみたいですね。ぜひ、ウチに入ってもらえれば…」

「もー、先生! いくら強くても、金的蹴ったら同じでしょ! 先生の金的はマジでヤバイんだから、ちょっとは自覚してくださいよ。そんなんだから、ウチは男子の部員が少なくなっちゃったんですよ! みんな、先生に金的を蹴られ過ぎて、辞めちゃうんだから」

「ええ? そうだったんですか? それはまた…。でもやっぱり、金的蹴りは簡単で効果も高いですし…しっかり守れば問題は…。ホントにそうなんですか?」

チホは部長の言葉が、まだ信じられない様子だった。

「もー、先生!」

部長がため息をつく。
マサヤは床にうずくまりながら、まだまだおさまりそうのない痛みの中で、この空手部にだけは絶対に入部しないと心に誓っていた。



終わり。


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当ブログを見て頂いて、ありがとうございます。
管理人の McQueen です。


非常に忙しい日が続き、ブログを更新する時間がありませんでした。
作品を楽しみにして頂いている方には、申し訳ありません。


今回、更新しました「金的の達人」は、以前から書きかけていた作品を仕上げたものです。
コメント欄などに頂いているリクエストにお応えする作品は、まだ完成しておりません。


思いのほか、たくさんのリクエストやアイデアを頂き、誰よりも私が興奮させて頂いている状態です。
私にうまく表現できるか分かりませんが、できる限りお応えする作品を書いてみたいと思っていますので、リクエストをして頂いた方には申し訳ありませんが、もう少しお待ちください。


最近は、金的蹴りや急所攻めのAVなどが、以前と比べて充実してきたような気もしますが、なかなか自分の好みに完璧にフィットする作品というのは出会えないものです。
私の場合、普通のSM行為にはほとんど興味がありませんので、そういう行為と金玉責めを混同した作品には、違和感を感じてしまうようです。


女性の蹴り方、男性のリアクション、カメラのアングル、スローモーションの有無など。
同じように見えても、少し違うだけで、興奮の度合いがまったく違ってしまうのが、この性癖の奇妙なところだと、自覚しています。


それにしても、作中で実際に金玉を蹴られている男性は、本当に尊敬します。
今後もぜひ、素晴らしい作品をたくさん作って頂きたいと思います。




高級ホテルの一室で、二人の女が向かい合っていた。
一人はソファーに腰をおろし、もう一人は、壁を背にして立ちながら話をしている。

「話は分かった。いつまでにやればいい?」

「早ければ早いほどいいわね。最悪でも、一か月以内に。できるかしら?」

「まず一つ。それで変化がなければ、二つめ。それを一か月以内ということでいいか?」

「そうね。そうしてちょうだい」

「分かった。やってみよう」

部屋のドアが開いた。
壁に立っていた女は警戒の色を見せたが、すかさずソファーの女が手を挙げた。

「大丈夫。ウチの人間よ。彼にも事情を説明していい?」

「それはそちらの問題だ。仕事に支障が出なければ、私はそれでいい」

「ありがとう」

壁に立っていた女は振り向くと、部屋の出口へと歩いて行った。
スイートルームの長い廊下で、たった今、部屋に入ってきた男とすれちがった。
互いに挨拶をすることもなく、通り過ぎる。

「やあ。今のは誰だ? 見ない顔だったが」

ソファーに座った女は、ワイングラスを傾けていた。

「うん。そうね。あなたには関係ないわ。いえ、あなたは知らない方がいいということよ」

「なんだい、それは? うちの組織のことで、ボクに隠すことがあるのか?」

「そうね…」

女はワインを飲みほして、グラスを見つめた。

「ボールキラーって、聞いたことあるかしら? 彼女がそれよ」

「ボールキラー? 殺し屋か何かか? いや、待て。それはもしかして…」

「殺し屋っていうのとは、ちょっと違うわね。彼女が狙うのはボールズ、つまり男のタマだけなんだから。殺しはしないわ」

「依頼を受ければ、どんな男でもそのタマを潰してしまうっていう、あのボールキラーか? 今の女が?」

「そう。彼女に依頼すれば、ことを荒立てずに揉め事を解決できるのよ。ちょっと痛い思いをするかもしれないけど。平和的だと思わない?」

「それは、まあ…。で、相手は誰なんだ?」

「それは私の口からは言えないわ。想像するのは勝手だけど」

「…G社の社長か? うちとセンタービル建設の権利を争ってるっていう」

「そうね。あそこの社長が手を引いてくれたら、うちには相当なお金が入ってくるのにね。まったく、困ったものだわ」

「しかし、相手は素人だぞ。手荒な真似は…」

「別に。私は何もしてないわよ。ただ近いうちに、社長の大切なタマタマが一つ、プチっと潰れてしまうかもしれないだけ。その後のことは、社長自身が考えるでしょう」

「そ、そうか…」

「そうよ。ただ、それだけ」

男が目をそらした後、何気なく自分の股間に手を当てて確認したのを、女は見逃さなかった。





広いリビングには、二人の男たちがいた。
一人はソファーに座り、タバコをふかしている。
インターホンが鳴り、立っていたもう一人の男が壁のモニターを確認して、玄関へ迎えに行った。

「調子はどうだ?」

「ボス。お疲れ様です」

二人がリビングへ来ると、ソファーに座っていた男は立ち上がった。

「社長は? 変わりないか?」

「はい。ずっと部屋で、コレと」

男は小指を立てて、ニヤリと笑った。
ボスはソファーに腰を下ろした。

「どんな女だ?」

「はい。金髪の。そりゃあもう、胸のでけえ女で…」

「身元を調べたのかって聞いてんだ。胸なんかどうでもいい」

「ああ、はい。いや、でも、いつも使ってる女みたいなんで。社長も別に何とも…」

「馬鹿野郎。お前、昨日俺が言ったこと、もう忘れたのか?」

「はい。あの、社長が狙われてるって話ですよね。そりゃあ、覚えてます。でもボス、ありゃあ、ただの娼婦ですよ。荷物はそこに置いてあるし、素っ裸で何ができるってこともありませんよ」

隣の部屋から、女の喘ぎ声が聞こえてきた。

「あ…! あぁ…! あぁん!」

「終わったみたいですね」

「うるせえ」

しばらく時間がたった後、ドアが開いて、女が一人出てきた。
真っ赤なミニスカートを履いた女は、ソファーに置いてあったハンドバッグを取ると、男たちを見回して、手を差し出した。

「社長が、外にいるヤツらから貰えって」

ちっと舌打ちをして、ボスが財布を出した。

「ねえ、アンタたちさ。クスリ持ってない?」

金を数えながら、女は尋ねた。

「うるせえ。さっさと行け!」

女が出て行くと、隣の部屋からバスローブ姿の男が出てきた。

「帰ったか。ふん…」

「社長。困りますよ。女を呼ぶ時は、うちを通してもらわないと」

「あれはいつもの女だ。問題ない」

「万が一ということがあります。社長を狙う殺し屋を雇ったという情報もありますから。注意してもらわないと」

「それは昨日も聞いた。だからこうやって、お前たちに守ってもらってるんじゃないか。しかし、隣に人がいると思うと、どうも面白くない。集中できん」

「我々は全力でお守りしますが、社長自身にその気がないと、意味がありませんよ。センタービル建設の件が決定するまでは、慎んでいただかないと」

「馬鹿な。その間、女を抱けないなんて考えられん。何が問題なんだ。ドアは鋼鉄製にして電子錠をつけたし、窓も防弾ガラスにした。あの部屋にいる限り、私は安全なはずだろう」

「相手はどこからくるか、分かりません。用心しないと」

「もういい。私はあの部屋から出ることはないから、それで十分だろう。だが、女は毎日呼ぶからな。それは私の自由にさせてもらう。お前たちがここで、身体検査でもすればいいだろう。それで十分なはずだ」

「それは、しかし…」

「私が殺されれば、一番困るのはお前たちだろう。今まで一体いくら払ったと思ってるんだ。その分、きっちりと働いてみせろ!」

バスローブ姿の社長は、部屋に入っていった。
重たそうなドアが閉まると、電子音と共に錠がおりた。
取っ手の部分には、ナンバーロックシステムが付いているようだった。

「ふん。大した女好きですね。あの歳で」

「やめろ」

ボスは不機嫌そうにソファーに座った。

「それで、俺たちはどうすればいいんですか、ボス?」

「今まで通りやるだけだ。ここに最低二人を置いて、24時間体制で社長を守る。社長が女を呼んだら、できるだけ念入りにチェックをするんだ。それしかない」

「へへっ。念入りにですね。分かりました」

「お前たち、銃は持っているな? 俺もできる限りここに来るようにする。なに、ビル建設の件が決定するまでの辛抱だ。それが決まってしまえば、向こうも手出しはしないだろう」

インターホンが鳴った。
男たちは顔を見合わせて、やがてさっきボスを迎えに行った男が、モニターを確認する。
そこには、金髪の女が映っていた。

「さっきの女です」

振り向くと、ボスはうなずいた。
男はインターホンの通話ボタンを押した。

「何だ?」

「あ、アタシ。ピアス忘れちゃって。社長の部屋かな」

「分からん。次、来た時でいいだろう」

「えー。あのピアス、社長から貰ったヤツなのよ。いつも着けとけって、うるさいのよね。ベッドの横にあると思うから、社長に聞いてよ」

男が振り向くと、ボスは舌打ちをした。

「入れてやれ。目を離すな」

男はうなずいた。

「今、そっちに行く。待ってろ」

男はリビングを出て、玄関へ向かった。

「もう一回、身体検査しときますか? 念のため。へへっ」

「うるせえ」

ボスは不機嫌そうに、タバコに火をつけた。





玄関につくと、男は扉の鍵を開け始めた。

「ねえ、まだ?」

「待て。今、開けてやる」

重たそうな扉を開けると、そこには金髪の女が立っている。

「入れ」

玄関に入ると同時に、女はすっと男の懐に入った。
そして、男が戸惑う間もなく、その股間に向かって膝を振り上げた。
男の踵が浮くほどの、強烈な一撃だった。
ミシっという音が男の脳裏に響き、男は意識を失った。

「うぅ…」

白目をむき、涎を流して、男は人形のように玄関に倒れ込んだ。
ドスンという物音が、リビングまで聞こえた。
女はその場で、次の獲物を待ち構えることにした。

「おい。ちょっと見てこい」

不審な物音を聞いたボスが、男に命令した。
男はうなずくと、ポケットから銃を取り出して、リビングを出た。
玄関につくと、扉が開け放されており、男と女が倒れているのを発見した。

「おい! どうした?」

男は近寄って、二人の様子を見た。
倒れている男は気絶しているようで、金髪の女は、震えながら怯えていた。

「い、今…急に変な男が入ってきて…。アタシ…」

「なに? どんなヤツだ?」

「わ、分からない…。突然だったから…。いきなりつかまれて…」

女が上半身を起こすと、服がはだけて、その胸が半分露わになっているのが分かった。
男は思わず、ゴクリと唾を飲みこんだ。

「わ、分かった。そいつは災難だったな」

「アタシ…! 怖かった!」

女が男の首に抱きついた。
男は驚いたが、自分の胸に女の柔らかい乳房が当たっているのを感じると、そのまま女の背中を抱きしめてやった。

「そうか。もう大丈夫だ。もう大丈夫…うっ!?」

女の手が男の股間に伸びて、その睾丸を握りしめていた。
同時に、女は男の口を手で抑えて、声を上げられないようにする。
女とは思えない強烈な握力が、男の睾丸を締め上げていた。

「うぅ…!! ぐ…!」

「社長の部屋のナンバーロックの番号を知っているか?」

女が男に尋ねた。
暗く冷たいその声は、明らかにさきほどの娼婦ではなかった。

「う…うう…」

「番号を知っているか? 答えなければ、お前の金玉を潰すぞ」

女の手に力が込められ、男の睾丸は大きく変形した。
信じられないほどの痛みが、男の股間から発せられていた。
男は呻きながら、必死に首を横に振った。

「誰が知っている? お前のボスか?」

男はうなずいた。
その目には、涙が溜まっている。

「そうか」

女は冷たい目で言うと、そのまま男の睾丸を掴む手に、より一層の力を込めた。

「……っ!!」

男はビクッと痙攣し、細かく肩を震わせた後、声も上げずに気絶してしまった。
女が手を離し、立ち上がると、男の体はその場にドサリと崩れ落ちた。
白目をむき、泡を吹き始めた男の上に、女は金髪のカツラと真っ赤なミニスカートを脱ぎ捨てた。





リビングにいたボスは、すでに銃を取り出していた。
部下二人が戻っていない状況に警戒し、隣の部屋の社長に声をかけた。

「社長! 社長! 聞こえますか?」

「なんだ?」

「俺がいいというまで、絶対に部屋を出ないでください! 絶対にですよ!」

社長の返事は聞こえなかったが、状況は伝わったはずだった。
ボスは携帯電話を取り出して、電話をかけた。

「俺だ。今すぐ社長の家に来い。そこにいる全員だ。銃も持ってこい。すぐにだぞ!」

その時、部屋の灯りが消えた。
建物中の電源が切れたようで、一斉に真っ暗闇になった。
隣の部屋から、社長の悲鳴が聞こえた。

「ちっ!」

ボスは舌打ちして、ポケットからライターを取り出して、火を点けた。
わずかな火灯りが、暗闇を照らす。
社長の部屋のドアを確認すると、異常はないようで、電子錠も機能しているようだった。
やがて非常電源が入ったようで、薄暗い非常灯が、天井に灯った。
ほっとため息をついたとき、目の前に女が立っていることに気がついた。

「てめえっ!」

とっさに銃を向けたが、女が右手を振り上げ、その手から紐のようなものが出たと思うと、次の瞬間にはボスの手から銃が離れ、宙に舞っていた。

「なっ!?」

宙を舞った銃は、魔法のように女の手の中に吸い込まれた。
女は銃を手に取ると、それを相手に向けるわけではなく、弾倉を取り出し、器用に分解して、背後に放り投げてしまった。

「て、てめえ。何者だ!」

女は黒いボディスーツのようなものを身に着けていた。
その胸は、さきほどの娼婦にも負けないくらいに大きい。

「そのドアのナンバーロックの番号を教えろ」

「なに?」

「番号を教えなければ、お前の金玉を潰すぞ」

「この野郎!」

銃を奪われたボスは、女に向かって殴りかかった。
女はいとも簡単にそれをかわすと、腕を掴み、鮮やかにボスの体を放り投げた。
大きな音が響いて、床に叩きつけられる。

「ぐっ!」

背中に衝撃を受けて、呼吸が止まる思いだった。
女は間髪入れず、仰向けになったボスの股間に素足をねじ込んだ。

「ぐえっ!!」

痛みで、上半身がバネのように跳ね上がったが、女の足はビクともしなかった。
恐ろしく強い圧力で、睾丸を二つとも踏みしめている。

「番号を言え。金玉が潰れてしまうぞ」

「く…てめえ…! ぎゃあっ!!」

女が足をわずかに動かしただけで、股間に激痛が走った。
それは一瞬で心が折れてしまいそうなほどの、耐えがたい痛みだった。

「聞け。私は社長を殺しにきたわけじゃない。ただヤツの金玉を一つ、潰しに来ただけだ」

「な…に…?」

「お前が番号を言わないのなら、他の所から入ればいいだけのことだ。ただの時間稼ぎのために、お前は自分の大切な金玉を犠牲にするのか? よく考えろ」

「そ、それは…ぎゃあぁっ!!」

女が踏みつける力は、どんどん強くなっていった。
ボスは絶叫し、それは隣の部屋の社長にも聞こえていた。





「ひいっ!」

社長はベッドの上で毛布にくるまり、電子錠のかかったドアを凝視していた。
やがて、ボスの叫び声がやむと、静寂が流れた。
薄暗い非常灯の灯りの中、社長はただドアだけを見つめている。
ドアの向こう側で、ナンバーロックを操作する音がした。
社長とボスしか知らないはずのその暗証番号を、誰かが入力しているようだった。
電子錠が開いた。
ゆっくりとドアが開き始めると、社長は体をビクリと震わせた。
あるいはボスかというかすかな期待が、その目に現れている。
しかしその期待に反して、ドアの陰には、誰もいなかった。

「ひいっ!」

社長は毛布の下に握っていた拳銃を、ドアにむかって撃ちまくった。
鋼鉄製のドアに、弾が次々と反射する。
やがて撃ち尽くすと、カチンカチンというトリガーの音が、空しく響いた。

「だ、誰か! 誰か助けてくれ!」

転げるようにしてベッドを降りると、窓に向かって走った。
窓の鍵を開けようとしたとき、バスローブをつかまれ、引きずり倒された。

「な…! だ、誰だ、お前は!?」

仰向けになった社長を、女が見下ろしていた。
女は無言のまま、社長の股間をサッカーボールのように、思い切り蹴り上げた。

「~~っつ!!」

男にしか分からない激痛が、全身を突き抜けた。
反射的に股間をおさえ、体を丸めて、急所を守ろうとする。
海老のように丸くなった社長の体から、女はバスローブをはぎ取り、下着まで脱がせた。
痛みで体が硬直したのか、まったく抵抗することができなかった。
女の目の前で、丸裸になった社長は、両手で必死に股間をおさえ続けていた。

「手を離せ」

女は社長の手の上から、股間を蹴りつけた。
社長の両手と睾丸に、とてつもない痛みが走る。

「ぎゃあっ!!」

「手を離せ」

女はさらに容赦なく、股間を蹴り続ける。

「タ、タマは…ここだけはやめてくれ…!」

「手を離せ」

さらに数回、蹴りつけられて、ようやく両手を股間から離した。
真っ赤に腫れ上がった両手を、女は容赦なく後ろ手に縛り上げた。
さらに女は、社長の体を引きずってベッドのそばに持っていくと、その両脚をベッドの足に結び付け、大きく股を広げさせるのだった。

「な、何なんだお前は…? 一体、誰に…」

「今から私が言うことを、よく聞け」

「か、金なら払うぞ。いくらでも払うから、見逃して…」

言いかけた時、女の手が大きく振り上げられ、無防備になっていた社長の股間に向かって打ちつけられた。
バチン、と音がして、社長の金玉袋がゴムボールのように跳ねた。

「ぐおぉっ!! おぉっお…!!」

「今から私が言うことを、よく聞け。分かったな?」

身動きできない社長は、体を芋虫のようにくねらせて、痛みに耐えていた。
女がその顔を覗き込むと、必死にうなずいた。

「今からお前の金玉を潰す。片方だけだ。もう片方は見逃してやる。しかし、お前には今からある約束をしてもらうが、その約束を守れなかった場合、残ったもう片方の金玉も潰す。いいな?」

「ひ…い、いやだ…」

痛みと恐怖に耐えかねたのか、社長は子供のように首を振った。
すると女は、再び拳を振り上げて、金玉袋に叩きつけた。
乾いた音が響き、再び絶望的な痛みが全身を突き抜ける。

「うぎゃあぁぁ!!」

「いいな?」

耐えがたい痛みだった。
社長は涙を流しながら、うなずいた。

「よし。では、センタービルの建設の件から手を引け。言ってる意味が分かるな?」

「え? そ、それは…」

社長の顔色が変わった瞬間、女は手を伸ばし、金玉袋を握りしめた。
すでに赤黒く腫れあがっていた金玉袋にとっては、女の手の感触が異様なほど冷たく感じた。

「ひいっ!」

「約束できないというなら、今ここで、お前の金玉を二つとも潰すぞ」

女の手には、すでに力が込めらていた。
さらにそれは、ジワジワと強くなっているようだった。

「うっ! ぐうぅ…! あ、あのビルの建設には、莫大な金が動いてるんだ。今さらやめることなんて、できるわけない…! ぐあ…!」

「そうか」

「こ、こんな脅しに、私が屈すると思ったら、大間違いだぞ! 今まで、危ない橋をいくつも渡ってきたんだ。こんなことくらいで…ぎゃあぁっ!!」

女は片方の金玉を掴むと、その手に今まで以上の力を込め始めた。
女の手の中で、睾丸は信じられないほど変形していた。

「言い忘れたが、お前の金玉は、一つずつ潰すことにする。せっかく二つあるんだから、順番に、ゆっくりと潰していこう。どうだ? もう少し強く握っても大丈夫かな?」

社長は痛みのあまり、声が出なかった。
魚のように口をパクパクと動かして、小さく首を横に振る。

「この…ク…ソ…お……な…!!」

血走った目で社長が女を見つめたとき、女の手の中で、パチン、と何かが弾けた。

「おっと」

「ぎゃあうっ!!」

縛りつけられた社長の体は、電気ショックを受けたかのように大きく反り返った。全身の筋肉が限界まで硬直した状態になり、数秒後、今度はガックリと弛緩して、床に落ちた。

「う…ぐ…ぐえぇっ!!」

急激に喉にせりあがってきた吐しゃ物を、床にまき散らした。
社長の目は虚ろで、細かく痙攣し、もはや痛みとも呼べない絶望的な感覚が全身に溢れているようだった。

「すまない。うっかり潰してしまったな。そんなに力を入れたつもりはなかったんだが。次はちゃんと言ってから潰すようにする」

女が手を離すと、社長の金玉袋はだらりと垂れさがった。
片方にはまだ丸い睾丸が入っているようだったが、もう片方は、少ししぼんだような、いびつな形になってしまっていた。

「どれ。本当に潰れたかな? ああ。まだ少し形が残っているな。ちゃんと全部潰しておこう」

女は再び金玉袋を掴んで、いびつになった方の睾丸を、指で挟んですり潰し始めた。

「うぎゃあぁっ!! ああっ!! おぉうっ!!」

社長は絶叫し、縛られた両手両足で必死にもがいた。

「うるさいぞ。静かにしろ」

女は床に落ちていたバスタオルを見つけ、その端を丸めて、社長の口に押し込んだ。
そして再び、金玉袋に残った睾丸の残骸をすり潰し始める。
女の指が動くたびに、社長の体が大きく痙攣したが、女はかまわず作業を続けた。
しばらくすると、社長の右の睾丸は完全に潰れたようで、ゼリーのように柔らかい物体だけが袋に入っている状態になった。

「さて。少し休憩をしようか」

女はぐったりとしている社長の腹の上に座った。
口にタオルを詰め込まれた社長は、汗と涙で顔面をドロドロにし、かろうじて呼吸をしているような状態だった。

「何か言いたいことはあるか?」

女はタオルをとってやった。

「あ…ぁ…は…。ゆ、許してくれ…。もう許して…」

「お前は本当に立派な経営者だな。会社の利益のために、自分の大切な金玉を犠牲にしようというんだから、偉いものだ。そのビルの建設で、どのくらいの金が入ってくるんだ? 何十億? 何百億か? その金に比べたら、確かに金玉の一つや二つ、潰れても大したことはないだろうな」

「あ…うぅ…」

女はうっすらと笑いを浮かべていた。

「金玉が潰れたところで、どうってことないだろう。自慢のモノが役立たずになるくらいだ。女を抱けなくなってしまうな」

女は、黒いボディスーツのジッパーを下げた。
下には何も着ておらず、へそまで開いたジッパーの隙間から、白い乳房がこぼれ落ちそうだった。

「若い女の体に、ギンギンに勃ったペニスを突き立てるのは、どんな気持ちなんだ? 今のうちに思い出して、記憶に焼き付けておいた方がいい。もう永遠にすることはないんだからな」

「う…うう…!」

社長の目が、女の体を凝視していた。
女は、残された社長の睾丸を掴んだ。

「うっ!!」

「さっき潰してしまったお前の金玉だが、びっくりするほど脆かったな。こうやって掴んでいると、こっちもうっかり潰してしまいそうだよ」

「あぁ…! ぐぅ…」

「安心しろ。今度はちゃんと潰すタイミングを教えてやる。今から私が10数える。それと同時にプチンと潰してやるから、そのつもりでかまえておくといい。いいか。10、9、8…」

女の手に、徐々に力が込められていくようだった。
すでに焼けつくような痛みを発している社長の股間からは、さらに強烈に疼くような痛みが湧き上がってくる。

「う…がぁ…!! ま、待って…あぁっ!」

「何か言ったか? よく聞こえなかったな。7、6、5…」

「うぅ…す、する! 約束するから…! は、離してくれ!」

「約束? ああ、もう気にしないでくれ。済んだ話だ。4、3…」

女の手の中で、社長の睾丸が大きく変形し始めた。

「ぎゃあぁっ!! ま、待ってくれ! 手を引くから! 頼む! 手を引かせてくれ!」

「手を引くって? 何から手を引くんだ? 2、1…」

「センタービルの建設からだ! 頼む、潰さないでくれぇ!」

社長は絶叫した。
女は金玉袋から手を離してやった。

「はあ…はあ…」

社長の全身には、冷たい汗が流れていた。

「センタービルの建設から手を引く。お前はそう約束するんだな?」

「あ…ああ…はい…」

「お前が約束を破った時には、すぐにまた金玉を潰しに来るからな。お前がどこにいようと関係ない。必ずお前の金玉を潰しに来る。分かったか?」

「は…はい…」

大粒の涙を流しながら、社長はうなずいた。

「よし。確かに約束したぞ」

女は振り向くと、社長の金玉を再び殴りつけた。

「ぐえぇっ!!」

社長の意識は、そこで途切れた。





ある日の午後。街角のオープンカフェに、女が座っていた。
女はコーヒーを飲みながら、書類を見ているようだった。
そこへ男が一人、近づいてきた。

「やあ。例のセンタービルの件、うまくいったようだな」

「ああ。おかげさまでね」

男はテーブルの向かい側に腰を下ろし、コーヒーを注文した。

「G社の社長が、建設計画の中止を発表したからな。だいぶ進んでいたはずなのに。突然の発表だった」

「そうね。こっちは大助かりだけど。かなりの利益が見込めると思うわ」

「そうか」

「ええ」

「それで…きみがあの女に依頼した件は、成功したと考えていいのかな?」

「え?」

女は書類から目を上げた。

「きみがホテルで会っていた、あの女だよ。G社の社長の、その、タマを潰したんだろうか?」

「たぶんね。でも、どっちでもいいわ。私にとって大事なのは、G社がこの件から手を引いたって事実だけだもの。それに比べれば、どうでもいいことでしょ。社長のタマが潰れたかどうかなんて」

「ああ…。まあ、そうだな」

男はうなずいた。

「だがボクが思うのは、その女の始末をつけておいた方がいいんじゃないかってことさ。こういうことは、どこから洩れるか分からないし…」

「ちょっと待って」

女は口に指を当てて、沈黙を促した。

「気を付けた方がいいわ。彼女は依頼人の裏切りを、決して許さないらしいから。前に彼女を始末しようとした男が突然行方不明になって、廃人同然になって発見されたらしいわよ。もちろん、タマを二つとも潰されてね。その男がどんな方法でタマを潰されたか、あなた想像できる?」

「そ、そんなまさか…。じゃあ、きみが裏切った時はどうするっていうんだ? 潰すものがないじゃないか」

「それは分からないけど。とにかく彼女からは、世界中のどんな男も逃げられないってことよ。その足の間に、大切なタマタマをぶら下げている限りはね」

「か、彼女は何者なんだ?」

「東洋のニンジャの末裔って噂もあるけど。はっきりとしたことは誰にも分からないわ」

男がゴクリと唾を飲みこんだ。
ウエイトレスが、男にコーヒーを運んできた。

「お待たせいたしました」

「あ、ああ。ありがとう…」

「お客様。足元に何か…」

「え?」

ウエイトレスがしゃがみこみ、男が下を向いた。
男は一瞬、股間を撫でられるような感触を感じた。

「うわ!」

よく見ると、そのウエイトレスの顔には見覚えがあった。
ウエイトレスは微笑すると、頭を下げて、その場を立ち去っていった。

「どうしたの?」

「い、いや…。なんでもない…」

男はコーヒーカップを手に取ったが、手が震えて、口にすることはできなかった。




終わり。


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