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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。

元木ケンスケは、中堅のIT企業に勤めるシステムエンジニアだった。パソコンの前に座って、一日中画面に向かって作業することも珍しくない仕事だ。


そんな彼が最近見つけた楽しみは、会社の近くにある整骨院に通うことだった。
院長はカオルという女性で、まだ若く、働いているスタッフも全員、若い女性だった。
当然のこととして、この整骨院のメインターゲットは働く女性で、内装や店構えも女性が入りやすいような色や作りになっていた。逆に言えば、男性が入りづらいということである。


ケンスケは33歳の独り身で、休日には電器街やメイドカフェに繰り出すような男だったので、そんな女性のための整骨院に行くつもりはなかった。しかし仕事柄、常に肩こりや首の痛みに悩まされており、ある時ついに痛みに耐えかねて、飛びこむようにしてこの整骨院に入ってしまったのである。
一回目の訪問は、とにかく痛みをとってもらうことしか考えていなかったので、さほど気にならなかった。ただ、

「2,3日して、まだ痛かったら、また来てくださいね」

と言ってくれた院長のカオルの笑顔が、目に焼き付いてしまったのである。
それからというもの、ケンスケは週に二回ほど、この整骨院を訪れるようになった。すでに通い始めて3ヶ月になる。


待合室にいるのはいつも若い女性ばかりで、ケンスケが居づらい雰囲気ではある。ここは完全に、女性のための癒しの場なのだ。
それでもケンスケは、明らかに場違いな自分に嫌な顔一つせず応対してくれるスタッフと、いつも自分を気づかってくれるカオルの笑顔を見るために、せっせとこの整骨院を訪れているのである。
いつの間にかここは、ケンスケにとっても癒しの場になっているのだった。

「元木さん。元木ケンスケさん。どうぞ」

名前を呼ばれたとき、男がいるのかと顔をあげる女性たちの視線にももう慣れた。
ケンスケはむしろ堂々と、この整骨院の常連らしい顔をしていた。

「調子はどうですか、元木さん」

ベッドに座ると、いつも通り院長のカオルが、優しく声をかけてくれた。
年齢は30すぎだろうか。大きな瞳とセミロングの髪が、爽やかで清楚な印象を与える。整体師をやるということは、何かスポーツをやっていたのかもしれない。細身の体つきだったが、しなやかな筋肉が全身にバランスよくついているようだった。

「ああ、はい。まあまあですね。やっぱり肩こりがひどくて…」

これは事実だった。ここに通うようになってだいぶマシになったが、ケンスケの職業病ともいえるものだった。

「そうですか。仕事の合間に、ストレッチをやるといいんですよ」

「ああ、はい。そうですね」

ケンスケはマッサージよりもカオルの笑顔を見るだけで、肩こりがとれる思いだった。

「じゃあ、始めましょうか。あ、その前に…。ねえ、アレ、持ってきて」

カオルが声をかけると、女性スタッフはうなずいて奥に行き、お茶のようなものが入ったグラスを、盆に載せて戻ってきた。

「これ、最近ウチでオススメしているお茶なんですよ。血行を良くして、マッサージ前に飲むと、効果があるんです。どうぞ、試してみてください」

「あ、はい」

ケンスケは何の疑いもなく、渡されたグラスの中のお茶を飲みほした。
そのお茶はずいぶん苦いものだったが、健康にいいというお茶はこんなものだろうと思った。

「はい。じゃあ、うつ伏せになってください」

グラスをスタッフに返すと、ケンスケはいつものようにベッドにうつ伏せになった。これから、カオルの手による至福の一時が始まるはずだった。

「じゃあ、始めますねー」

カオルはケンスケの背中に手を当て、マッサージを始めた。
女性とはいえ、さすがにその手の力は強く、凝り固まったケンスケの筋肉を揉みほぐしていった。
ケンスケはカオルの指先の体温を背中に感じながら、頭の中を空っぽにして、ゆっくりと目を閉じていった。



「ん…?」

目が覚めると、そこは薄暗い部屋の中だった。
ケンスケは自分の置かれた状況が分からず、ちょっと戸惑う。

「…え…!?」

腕時計を見ようとして、初めて自分の手足がベッドに縛られていることに気がついた。しかも、薄いタオルが一枚かけられているが、どうやら自分はパンツ一枚の裸にさせられているらしい。
これはいったいどういうことなのか、理解に苦しんだ。

「す、すいません! 先生…?」

とりあえず、自分をマッサージしていたはずのカオルを呼んでみた。
すると突然、部屋の明かりが点いた。
蛍光灯の白い光に、ケンスケは目を細める。

「先生。起きたみたいです」

「そう。今、行くわ」

部屋の隅の方から、スタッフとカオルの声が聞こえた。
頭をあげて見ようとしたが、どうやら首も革のベルトのようなもので固定されているようだった。

「おはよう、元木さん」

戸惑うケンスケの頭上に、カオルが姿を現した。

「せ、先生! これは…!」

状況が理解できず、ただ驚くばかりのケンスケの顔を、カオルは見下ろしていた。

「さっきのお茶にね、睡眠薬が入っていたの。よく眠れたでしょ?」

「す、睡眠薬…!?」

「もう、元木さんには困っちゃって。どうにかしてウチに来られなくなるようにしたかったんだけど、これしか思いつかなかったわ。ちょっと手荒だけど、確実かなと思って」

カオルが言うと、周りにいた2人の女性スタッフも微笑した。
彼女たちはいったい、何をしようというのか。尋常ではない状況に、ケンスケの背中に冷たい汗が流れた。

「来られなくなるようにって…。え…? どういうことですか?」

カオルはスタッフと顔を見合わせて、ため息をついた。

「まったく、これだから困るのよね、元木さんは。ホントに鈍感なんだから。私たちが迷惑してることに、気付かなかったんですか?」

「え…? 迷惑って…」

戸惑うケンスケの様子を見て、スタッフの一人、川上アイコが口を開いた。

「元木さん、ウチのお客さんは女性の方ばかりなんですよ。なんで元木さんみたいな人が、ウチに来るんですか?」

するとさらにもう一人のスタッフ、木嶋ルミも、

「どうせ、院長目当てなんでしょ? 分かってますよ。院長にマッサージされた後、元木さんのズボンが膨らんでますもんね」

意地悪そうな笑いと共に言うのだった。

「そ、そんなこと…」

否定したかったが、事実だった。
それにしても、普段の彼女たちとは別人のように、まるで小馬鹿にしたような態度でケンスケのことを見ている。
いや、実際にはこちらの方が、彼女たちの真実の顔なのかもしれない。今までケンスケが接してきたのは、彼女たちが仕事上、やむなく行ってきた営業スマイルというものだったのだろう。

「まあ、元木さんが興奮するのはかまわないんですけどね。それもマッサージのうちですから」

カオルはむしろ勝ち誇ったような顔で、ケンスケを見下ろしていた。
ケンスケのような男が、自分のマッサージで興奮してしまうのは当然のことと言いたげだった。

「元木さんがウチに来ることで、他のお客さんに迷惑がかかっていると思うのよね。残念ながら」

「そうそう。元木さんみたいなオタクが来ると、ウチの雰囲気がおかしくなるっていうかあ」

「ウチ、そういうお店じゃありませんからって感じですよねー」

「そ、そんな…」

自分でも場違いだとは思っていたが、改めてカオル達の口から言われると、さすがにショックだった。
しかし、この店は別に女性専用とか会員制とか謳っているわけではない。ケンスケが来店することは、形式上、何の問題もないはずだった。

「だってここは別に、誰が来たっていいわけじゃないですか。そんなの、差別ですよ!」

ケンスケは声を荒げたが、その様子を見て、カオル達は再び顔を見合わせた。

「やっぱりねえ。そう思うわよねえ」

「だから、やっちゃうしかないですよ」

「ホント、こういう人は体で覚えないと分かんないですから」

「そうねえ」

アイコとルミが、カオルをけしかけているような調子だった。
ケンスケは彼女たちが一体なんのことを話しているのか、分からなかったし不安だった。

「じゃあ、元木さん。悪いけど、元木さんの大事な所を潰しますね?」

「え?」

振り向いたカオルの顔は、冗談を言っているようではなく、本気で残念そうだった。

「もう二度とウチに来なくなるように、元木さんの大事な所を潰します。ごめんなさいね」

「え? いや、あの…。何を…?」

ケンスケはまだ事態が飲みこめていなかった。

「だから、元木さんの金玉を潰すってば。ホント鈍いなあ、もう」

「一個だけだから。大丈夫ですよ」

アイコとルミが、追い打ちをかけるように言った。
しかしそう言われても、はいそうですかと返事をできるわけもなく、呆然と口を開けるばかりだった。
しかしカオルは、そんなケンスケを無視して、彼の体にかけてあったタオルをはぎ取った。

「じゃあ、始めましょうか」

ケンスケは恐怖を感じた。
全身に力を入れて暴れようとしたが、その手足はガッチリとベッドに固定されている。

「く…! いや…いやだ! やめろ!」

悲鳴ともつかない声を上げた。
しかしカオルはそれすらも予測していたように、今はぎ取ったタオルを丸めて、ケンスケの口に深く押しこもうとした。

「こ、こんなことをして、ただじゃ済まないぞ! 警察だ! 監禁罪で警察に通報してやるからな!」

必死で叫ぶと、ルミが思い出したように携帯電話を取り出した。

「あ、そういうこともあるかと思って、ちゃんと証拠写真を撮っておきましたから。ほら、これ」

ルミがケンスケの目の前に突き出したスマートフォンの画面には、ベッドの上で服をはだけさせているアイコと、それに抱きつくように覆いかぶさっているケンスケの写真が映っていた。

「こ、これは…!」

「よく撮れてるでしょ? けっこう大変だったんですよー。元木さん、重たくて。もうちょっと痩せた方がいいですよ」

どうやら、ケンスケが寝ている間に撮影したものらしい。
写真ではケンスケの表情は確認できないが、アイコの方は明らかに嫌がっているようで、見ようによっては、レイプの証拠写真と言えなくもない。

「あと、元木さんの携帯から、アイコちゃんにいやらしいメール送っておきましたから。これで本人の証言があれば、完璧ですよね?」

ルミはにっこりと笑って、ケンスケの顔を覗きこんだ。
ケンスケが警察に訴えれば、いつでもこれらの写真を公開し、レイプされそうだったと証言するつもりだろう。そうなった場合、不利なのは明らかにケンスケの方だった。

「あらら。アタシ、レイプされそうだったんだ。危ない危ない。キャハハ!」

アイコは悪戯っぽく笑った。
睡眠薬のことといい、周到に計画されたことらしかった。
ケンスケはもはや何も言うことができず、愕然としていた。

「はい。納得してもらえましたか? じゃあ、ちょっと我慢して下さいね」

カオルは微笑みながら、ケンスケの口に丸めたタオルを押し込んだ。
鼻でなんとか呼吸はできるものの、うめくことしかできなくなってしまった。



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「お静かにお願いしますね」

カオルはにっこりと笑った。

「痛かったら、言って下さいねー。やめませんけど」

アイコが意地悪そうに笑った。
そしてカオルが、おもむろにケンスケの金玉をトランクス越しに握った。
ケンスケは思わずうっと呻いたが、カオルの手にはまだ、強い力はこめられていない。

「うーん。これが元木さんの大事な所ですね」

カオルはケンスケの二つの金玉を、掌の中で転がしている。
その手さばきは絶妙で、ケンスケは恐怖におびえながらも、快感を感じざるを得なかった。

「フフ。気持ちいいですか? 実は私、回春マッサージもマスターしてるんですよ」

本人の意に反して、ムクムクと成長してきたケンスケの股間を見て、カオルが囁いた。
男性の睾丸をマッサージして、その精力を高めるという回春マッサージは、ケンスケは体験したことがなかった。

「睾丸は、とてもデリケートな所ですもんねえ。軽くマッサージすれば気持ちがいいんでしょうけど、ちょっと強く握っただけでも痛がるから、女性には扱いが難しいんですよ」

「あ…ふ…」

ケンスケは思わず、喘ぎ声をあげた。
すでにそのペニスは膨張をはじめ、トランクスを突き破らんばかりにせり上がっている。

「あらあら。これから玉を潰されるのに、元気ですね」

カオルは金玉を揉みながら、笑った。

「ホント、相当溜まってるんですねー」

「エッチする彼女とかも、いないんでしょうね。アニメとか見て、オナってるんですよ、絶対」

「うわあ。キモーイ。生身の女の子に興味ないとか? もしかして、童貞ですか?」

アイコとルミは、ケンスケの外見から得たイメージだけで、好き放題に言った。
しかしそれはあながち的外れでもなく、半分以上は当たっていた。
ケンスケはシステムエンジニアとしては標準以上の技術を持っていたものの、プライベートの彼は、絵にかいたようなオタクだった。
これまで女性と深い交際をしたことはなかったし、したいとも思わなかった。
この整骨院に通うようになって初めて、いつも優しく声をかけてくれるカオルに淡い恋心のようなものを抱いていたのである。

「こらこらアナタ達。あんまり失礼よ。睾丸をマッサージされたら、男の人は大きくなるに決まってるじゃない。それに元木さんも、風俗くらい行ったことがあるはずよ。ねえ?」

かばっているのかどうかわからないカオルの言葉に、ケンスケ快感の中で思わず哀しみすら覚えてしまった。

「違いますよ。元木さんは、先生に触ってもらってるから、嬉しいんですよね?」

「アタシが触っても、あんまり嬉しくないでしょ? ほら」

そう言って、アイコはおもむろにケンスケの股間に手を伸ばした。

「う! あ…」

一応、マッサージのように揉みしだいてはいるものの、それはカオルのとは比べ物にならないほど不器用な手つきだった。
自然と、ケンスケのペニスはそれまでの膨張を止めて、張り裂けんばかりに膨らんでいたトランクスがしぼんでしまう。

「ほらー。やっぱりこうなるでしょ?」

「ふうん。そうかしらねえ。でもアイコさん、あなたのそれは、マッサージになってないわよ」

「でもアタシの彼は、これで十分ギンギンになりますよ。ホント、正直すぎてムカつくなあ。えい!」

アイコは悔しそうに、ケンスケの股間の膨らみを、下から軽く叩き上げた。
それはちょうどケンスケの睾丸にうまく当たり、体を震わせた。

「うっ!!」

「あ、こんなのでも痛いんだ? ホント、金玉って急所なんですねー。えい、えい!」

アイコは面白がって、続けざまにケンスケの股間を叩いた。
その度に、ケンスケの股間には鋭い痛みが走り、やがて下腹部に重しを乗せたような鈍痛が広がっていく。

「こらこら。あんまり苛めないの。金玉の痛みは、男性にとって最大の痛みなのよ。潰れると、ショックで気絶してしまうこともあるんだから」

「先生は、男の金玉を潰したことがあるんですか?」

「えー。アタシ、蹴っ飛ばしたことはあるけど、潰したことはないなあ。あるんですか、先生?」

ルミとアイコが尋ねると、ケンスケもその答えが気になり、思わずカオルを見つめた。
カオルは少し黙っていたが、やがて思わせぶりに微笑した。

「そうねえ。まあ、私も色んな人とお付き合いしたりしたから。色々あったわよ?」

アイコとルミは興奮したように歓声を上げたが、ケンスケの顔からは血の気が引いていった。

「えー。すごーい。潰したら、どうなっちゃったんですか? 死んじゃいました?」

「何人くらい潰したんですか?」

「まさか、死にはしないわよ。潰したのは、当時付き合ってた人が二人と、痴漢が一人かしら。彼氏のは一個ずつだけど、痴漢のは、二つとも潰しちゃった」

「すごーい。先生に痴漢するとか、バカですねー。やっぱり、握りつぶしたんですか?」

「そうね。電車に乗っているときだったかしら。後ろから、お尻を触ってきたものだから、グッと握ってね」

カオルは右手を握りしめてみせた。
ケンスケにとっては、これ以上聞きたくもない話だったが、アイコとルミにとっては興味津々な武勇伝だった。

「えー。潰す時って、どんな手応えなんですか? 気持ち悪いですか?」

「うーん。なんていうかこう、ブチュッていうかグシュッていうか。独特の感触はあるわね。あんまり、気持ちのいいものじゃないと思うけど」

「へー。先生は握力が強いから潰せるんでしょうけど、アタシ達には無理かなー」

「そう? でも、意外と潰れそうで潰れないっていう話は、聞くわね。よかったら、試してみたら?」

「ホントですかあ?」

ケンスケの意見がまったく及ばないところで、彼の金玉の処遇が決められようとしていた。 
思わず涙目になりながら、必死で叫ぼうとしたが、口に詰められたタオルのおかげで、その声は唸り声になってしまう。

「ん? どうしました、元木さん?」

カオルが気がついて、口に詰めたタオルを半分ほど出してやった。

「ハア…ハア…。す、すいませんでした! もうここには来ませんから! 見逃して下さい! 潰さないでください!」

口から涎が流れ落ちるのもかまわずに、ケンスケは必死に叫んだ。

「あら。そうですか? でも、さっきは差別だとか、警察に行くとか…」

「あ、あれは間違いでした! ここは、本当はボクなんかが来たら行けなかったんです。ボクが間違ってました! 警察にも行きませんから、許して下さい!」

「うーん。どうしようかしら…」

カオルはちょっと考え始めたが、必死の形相で謝るケンスケを見ても、特に心を動かされる様子ではなかった。それは、医者が手術をするかどうかを考えるように、事務的で冷静な思案だった。

「ダメですよ、先生。アタシ達に潰させてくれるんでしょ? もう決まりなんだから」

「そうですよ。アタシ達にも、経験させてください」

アイコとルミの要求は、おもちゃを奪われた子供のように、無邪気なものだった。

「そうねえ」

カオルは首をかしげて、ひとしきり考えていた。
その時間を、まるで死刑判決か否かを待つような気持で、ケンスケは待たなければいけない。

「じゃあ、こうしましょう。このコ達が金玉を潰せるかどうかは分かりませんから、とりあえず、元木さんには頑張ってもらって。潰れなければ、それでお終いということで。いいですか?」

まるで旅の目的地を決めるかのような自然さで言ったので、ケンスケには、ちょっと言っている意味が分からなかった。
つまり、アイコとルミがケンスケの金玉を潰すことにチャレンジして、潰れてしまえばそれまで。潰れなければ、それで解放してやるということらしい。

「あ…そ、それは…」

ケンスケが何か言おうとする前に、アイコとルミが歓声を上げた。

「やったあ! そうしましょ、先生!」

「よーし! アタシ、頑張りますね!」

嬉しそうな彼女たちを見て、カオルもまた満足そうにうなずいている。

「じゃあ、そういうことで。潰れないように、頑張ってくださいね、元木さん?」

それだけ言うと、再びケンスケの口にタオルを詰め込んでしまった。
ケンスケの頭は、真っ白になってしまった。
頑張れと言われても、頑張って金玉が潰れないようにできるものなのかどうか。
自分は一体、どうすれば良かったのか。
色々と考えているうちに、アイコの手は、容赦なくケンスケの股間に伸びてしまっていた。
うっと声を詰まらせても、もはや彼女たちはケンスケの顔を見もしなかった。





「えーっと。それじゃあ、始めますね。どっちがいいかな。こっちにしょう」

アイコはつぶやきながら、ケンスケの右の睾丸を掴んだ。

「やっぱり、一個だけ握った方がいいですよね、先生?」

「そうねえ。アナタ達の握力じゃ、二個同時は無理でしょうねえ」

「先生が、痴漢のを潰した時は、二個同時だったんですか?」

「うーんっと、確か、そうだったかしら。あの人のは、ちょっと小さめだったんじゃない。こう、グッと握れたわ。でも、元木さんのは無理よ。一個だけにしておきなさい」

まるで、デザートに食べる果物か何かのことを話しているようだった。
とても、男の最大の急所、命の次に大切とも言える金玉のことを話している様子ではない。
金玉を持たない女という生き物が、いかにそれに対して無情で無関心か、ケンスケは腹の底が震えるような恐怖を感じた。

「はーい。じゃあ、元木さん、いきますね? せーの!」

掛け声と共に、強烈な圧力が、ケンスケの右の睾丸にかけられた。

「むむ…ぐぅぅ…!!」

声にならない叫び声を上げ、全身を震わせ始めた。
今までに感じたことのない痛みが、アイコに握られた丸い玉から、発せられている。

「潰れろーっ!!」

アイコはさらに、両手を使って、哀れなケンスケの睾丸に圧力をかけていく。
いまやケンスケの睾丸は、アイコの手の中で細長く変形し、潰されないように、必死で耐えているようだった。

「ぐぐぐ…!!」

「でもさあ、アイコちゃんがこのまま潰しちゃったら、アタシはどうなるんですか? アタシの番、こないのかな?」

地獄の苦しみに呻くケンスケの頭上で、拍子抜けするほど気軽な調子で、ルミがしゃべっていた。

「ええ? 大丈夫よ。金玉は二個あるんだから。一個、余ってるじゃん」

アイコは渾身の力を両手に込め、顔を真っ赤にしている。

「え? でも、潰すのって、一個だけじゃ…」

確認するかのようにカオルを見ると、カオルは横目でチラリとケンスケを見た後、微笑んだ。

「大丈夫よ。元木さんは、優しい人だもの。ルミちゃんのためなら、ね?」

「ホントですか? ありがとう、元木さん!」

ケンスケは必死に首を振ろうとしたが、アイコの手にさらに力が込められると、体をのけぞらせて呻くしかなかった。

「じゃあ、アタシは遠慮なく、こっちを潰しますね。えーい!!」

「ぐむーっ!!」

ほとんど全裸に近い状態のケンスケの体から、大量の汗が吹き出し始めた。
本当なら、今すぐにでも身をよじって、アイコの手から金玉を振りほどきたかったのだが、医療用の革ベルトは頑丈で、ケンスケが全力で動いても、ビクともしなかった。

「んんーっ!! …はあっ。ダメだ…」

全力で握り続けていたアイコは、突然、その手を放した。
どうやら、ついに疲れてしまったようだったが、ケンスケの睾丸は、まだ潰れてはいなかった。

「あれえ? まだ潰れてないでしょ? もういいの?」

「もう、ムリムリ。意外と潰れないよ、コレ。なんか、コロコロして握りにくいしさ」

「へー。そうなんだあ」

アイコは本当に全力を出し切ったようで、肩で息をしていた。
しかし、潰れるには至らなかったとはいえ、ケンスケの疲労は、アイコの比ではなかった。
強烈な圧力からは解放されたものの、まだ下半身には、焼けつくような痛みが、ジンジンと残っていて、股間に杭でも打ち込まれているようだった。
自分の金玉が本当に無事なのかどうか、ケンスケは確かめたかったが、もちろんそれは許されてはいない。

「じゃあ、アタシはこっちを握ってみようかなー。えい!」

休む暇もなく、ルミがケンスケの左の睾丸に手をかけて、握りしめた。
ケンスケの体を、再び悪夢のような激痛が襲う。

「むーっ!!」

その痛みは、内臓を掻きまわすように突き上げ、吐き気さえ催してくるものだった。

「ホントだあ。握りにくいね、コレ。すぐ動いちゃう あ、こら!」

ルミの言うとおり、彼女の手の中で、ケンスケの睾丸はコロコロと動いていた。
それは、あたかも潰されることを拒否するかのような、金玉の必死の回避行動のようだった。

「うっ! はっ!」

金玉がルミの掌の中を泳ぐたびに、ケンスケは息が止まる思いだった。
しかし、ルミの握力はアイコのそれよりもずいぶん弱いようで、どうやら潰されることはないようだと感じた。

「先生、これってなんか、コツとかあるんですかあ?」

これまで、女の子たちが金玉を握りしめる様子を黙って見守っていたカオルに、ルミが助けを求めた。
何といっても、カオルは男の金玉を実際に潰した経験の持ち主なのだ。
ケンスケの背中に、冷たいものが流れた。

「そうねえ。さっきから見てたけど、アナタ達の握力じゃ、ちょっと無理そうねえ」

するとカオルは、チラリとケンスケの顔を見下ろした。
その顔には、いつもケンスケが治療に訪れた時に見せるのと同じような、穏やかな微笑がたたえられている。
いつもならケンスケはその微笑に癒されて、幸せな気分に浸れるのだが、今はそれが、何より恐怖だった。

「ルミちゃん、ちょっと爪を立ててみれば? こう、親指の爪を」

「こうですか?」

カオルが手真似をしてやると、ルミはそのとおりに、ケンスケの睾丸を握り直して、爪を立てた。

「ああぁぁぁー!!!」

ケンスケは、タオルを吐きださんばかりに、口を広げて叫んだ。
かっと見開かれた両目は、血走っていて、その激痛を物語っている。

「あ。これが痛いんだあ。さすが、先生! 金玉潰しのことはよく知ってますね」

ルミは楽しそうに、突きたてた親指の爪を、さらにグリグリと食い込ませた。

「フフフ…。まあ、経験かしらね」

カオルは奥ゆかしそうに笑った。
その下では、ケンスケが悪夢のような激痛に耐えている。

「ふぐ…ぐぐぐ…!!」

やがてケンスケの体が、本人の意思とは無関係に、ビクビクと大きく痙攣し始めた。

「あれ? なんか、ヤバイかな?」

思わずルミは、睾丸から手を放してしまった。
その瞬間、ケンスケの痙攣は止み、ベルトで固定された首は、ガックリと横向きに倒れた。
口に入れたタオルの隙間から、細かい泡がこぼれている。

「潰れちゃったの?」

「えー。まだ、潰れてないと思うけど…。元木さん、大丈夫ですか?」

ケンスケに地獄のような苦しみを与え、気絶寸前まで追い込んだアイコとルミは、心配そうに顔を覗き込んだ。
しかしその声や表情には、ほとんど心がこもっていないことは明らかだった。
言葉では言い表せないほどの苦痛を味わい、金玉を潰されるかもしれないという、男にとっても残酷な恐怖と戦っていたケンスケだったのだが、金玉の痛みを毛ほども想像できない彼女たちには、それはまったく伝わっていないのだ。

「うーん。潰れてはいないみたいね。ちょっと腫れるかもしれないけど、まあ、大丈夫でしょう。良かったですね、元木さん」

カオルが、トランクスの上からケンスケの金玉袋を軽く撫でて確かめてやった。
しかし、にっこりと笑いかけたその顔を、もうケンスケは見ることができない。

「なんだかんだで、けっこう頑張りましたね、元木さん。なかなか潰れないものなんだなあ」

「ホントに。もっと簡単かと思ったけど、全然ダメだったね。どうすれば潰れるんですか、先生?」

「そうねえ。まずは、アナタ達の力不足でしょうね。もっと握力を鍛えないと。いいマッサージもできないわよ」

一仕事終えたかのようなテンションで、まるで仕事の反省会のように、女性たちは語り始めた。

「そうですかあ? これでも、けっこう握力がついてきたと思ってたんですけど…」

「まあ、握力といっても、金玉を潰す時に必要なのは、瞬発力なのよね。マッサージに必要なのは、どちらかといえば持久力の方だから、ちょっと違うかもね」

「瞬発力ですか?」

「そう。一気に、グシャッと握り潰さないといけないから、瞬発力は大事よ。もちろん、基本の握力も必要だけどね」

次第に熱を帯びてくるカオルの指導と、それを熱心に聞き入るアイコとルミ。
ケンスケは、朦朧とした意識の中で、ぼんやりとそれを聞いていた。

「えー。でも、そんなに簡単に、グシャッと潰せますかあ? けっこう、堅かったですよ」

「アナタ達のを見てたけど、やっぱり思い切りがよくなかったわ。潰す時はね、ためらわずに、一気に、思い切り握り潰さないとダメなのよ」

カオルはスッと、ケンスケの睾丸の一つに手をかけた。
先ほどアイコに握りしめられた睾丸は、すでに腫れあがり始めており、熱を帯びている。
極度に敏感になっている急所を触られて、ケンスケはビクリと体を震わせた。
しかし、カオル達はそんなことを気にもかけていない。

「いい? こうやって、金玉を握るでしょ? そしたら、逃げないように、しっかりと掌で包むの。このポジションを、握った瞬間にできるようにならないとダメよ」

アイコとルミは、興味深そうにカオルの右手に注目していた。
その手には、まだほとんど力はこめられていなかったが、カオルの言うとおり、手の中のベストポジションに、金玉がおさまっているようだった。

「そうしたら、さっき言ったように、一気に握りつぶすの。本当に一気によ。こんな感じに…」

カオルが右手に力を込めると、その手の中で、パチンと、風船が弾けたような感触があった。

「つっっっ!!!!」

瞬間、ケンスケの体は大きく空中にのけぞって、口に詰め込まれたタオルが吐きだされた。
やがてドスンと、大きな音を立ててベッドに着地したケンスケは、完全に白目をむいて、気絶していた。

「あら…? 元木さん…?」

カオル自身も、何が起こったのか分からない様子だった。
やがてハッと気がついて、その手の中を確かめると、そこには、先ほどまで確かにあったはずの小さな卵状の物体がなくなっていた。

「あ…。ごめんなさい。潰しちゃったみたい…」

さすがに申し訳なさそうに、つぶやいた。
ケンスケはベッドの上で、完全に意識を失っているようで、口から泡を吹いて、細かく痙攣している。

「えー! 先生、潰しちゃったんですか? ちょっと握っただけで? すごーい!」

「すっごい! 先生! 超怪力ですね!」

アイコとルミは、驚いて、しかしどこか楽しそうに笑っていた。

「そ、そんなことないわよ。ちょっと握ってみただけだったのに…。その前にも握られてたから、金玉が弱ってたのかしら…。まさか、潰れるなんて…」

どうやら本当に不慮の事故だったようで、カオルは神妙な顔つきでケンスケの股間を見つめていた。

「まあ、でも、最初から潰すつもりだったし、いいですよ。先生の金玉潰しが見られて、アタシ、興奮しました!」

「アタシも! すっごい勉強になりました。今度、彼氏とケンカした時、やってみます」

アイコとルミにそう言われて、カオルもためらいがちにうなずいた。

「そう? そうね。予定通りにできたっていうことで。元木さんも、もうウチには来なくなるでしょう。でも本当に、男の人って大変ねえ…。こんなことで気絶しちゃうくらい痛いなんて…」

「そうですねえ。アタシ、生まれ変わっても男には生まれたくないなあ。めんどくさそう…」

「アタシも。男に生まれても、金玉なんかいらないなあ。なんで、こんなのついてるんだろう…」

女性たちは、白目をむいて横たわっているケンスケを見下ろして、しみじみとつぶやいていた。

この後、整骨院には救急車が到着し、階段で転んで股間を打ったという男性一人が、病院に運ばれていった。
そしてその男性は、どんなに肩が凝っても、二度と整骨院に行くことはなかったという。


終わり。




水泳部の男子といえば、日に焼けた黒い肌と、引き締まった筋肉。肩幅の広い、逆三角形の肉体美が、いかにも男らしいといえる存在だろう。
さらに極端に面積の狭い、「Vパン」と呼ばれるビキニタイプの水着を彼らがはいたときなどは、その股間の膨らみが強調されて、ある意味で非常に男を感じさせるようになる。
この高校の水泳部にも、そんな男らしい部員たちが集まっていた。

「そのまま、全員動かないで!」

ガラリ、と更衣室のドアをいきなり開けたのは、女子水泳部の部長、アオイだった。
部活が終わり、濡れた体を拭いて、今まさに着替えようとしていた男子部員たちは、驚いて一斉に振り向いた。

「な、なんだよ! いきなり開けるなよ!」

競泳水着に手をかけてさえいた男子水泳部の部長、タツヤは、あわてて水着を引き上げた。

「うるさい。黙って。そのまま動かないで」

すでに水着を着替え、ジャージ姿になっていたアオイは、厳しく冷たい調子で男子部員たちを制した。
その様子に、男子たちは思わず口をつぐんでしまう。
男子水泳部には、アオイに逆らってはならないという、絶対のタブーがあったのだ。

「ちょっと、調べさせてもらうから」

そう言うなり、ロッカーに積まれた男子部員たちのスポーツバッグの中身を、遠慮もなくあさり始めた。
これには全員、驚いてしまう。

「お、おい! なんだってんだよ! お前、勝手に…」

見かねた男子の一人、キョウヘイが、アオイの肩に手をかけた。
彼女が今まさにあさっているのは、彼のスポーツバッグだったのだ。
しかし。

「はうっ!」

返事をする代わりに、アオイは得意の金蹴りを、キョウヘイの股間に叩き込んだ。
冷たいプールで泳ぎ、キュッと引き締まっていたキョウヘイのVパンの股間は、アオイの足の甲によって哀れなほどにその形を変えた。
当然、キョウヘイはすぐさまその場にうずくまり、痛みに震えることになる。やはり彼女には逆らってはならないと、その場にいる男子全員が再確認した。

「動かないでって言ったでしょ」

まるで当然の報いだとでも言わんばかりに言い放ち、そのままスポーツバッグをあさり続けた。
男子全員、うずくまるキョウヘイの介護もできずに、突っ立っているしかなかった。

「な、なんだよ! どういうことか、説明しろよ!」

部長のタツヤが、いくぶん声を震わせながら、それでも勇気を振り絞って尋ねた。
アオイがキッと振り向くと、思わずその場にいた男子全員が、股間に手を当てて急所を守ってしまう。

「女子の更衣室に、泥棒が入ったのよ。一年生の着替えが盗まれてるの。部活に来る前はあったっていうし。だから、調べさせてもらってるの」

タツヤをはじめ、男子部員たちは呆気にとられた。
それは、自分たちが女子の着替えを盗んだと疑われているということだったからだ。
いくら思春期の男子高校生とはいえ、そんな犯罪行為をするわけがないと、彼らは叫びたかった。

「それは…お前、そんなこと…!」

怒りのあまり、タツヤはうまく言葉が出なかった。アオイの胸ぐらを掴んでしまいそうになる欲求を、かろうじてこらえていた。

「やってないって言うの? じゃあ、いいじゃない。ちょっと調べるくらい。協力してよね」

「な…! か、勝手にしろ!」

これが他の女子だったら、男のプライドにかけてやめさせるところだったが、相手はアオイだったのだ。
彼女に股間の急所を蹴り上げられた男子は、水泳部のほぼ全員。同じ学年の男子にも、相当数いただろう。学校の不良生徒でさえ、アオイに対してはうかつなことはしないといわれていたから、タツヤが大人しく従ったのも、当然といえた。


そして10分後。
男子全員のスポーツバッグをひっくり返して調べたが、何も出てこなかった。

「…ふうん。無いみたいね。アンタたちじゃなかったんだ」

「あ、当たり前だろ! オレたちが、そんなことするわけないじゃないか!」

「うん。まあ、今回は見つからなかったけど、覚えておきなさいよ。アタシたちは、いつでも見張ってるからね」

まったく悪びれる様子もないアオイに、タツヤの怒りは沸騰した。

「お前、ふざけんなよ! 謝れよな!」

怒りのあまり、アオイの肩を掴んでしまったが、すぐに自分が何をしているのかを悟り、そのままタツヤの動きは止まった。
泥棒に疑われた屈辱と、急所を蹴られる恐怖がせめぎ合い、額に汗を浮かべるほど緊張していた。

「…そうね。さすがに今回は、アタシが悪かったかな」

アオイは、タツヤが自分の肩に手をかけたのを気にする様子もなく、意外にも自分の非を認めた。

「でもさ。男子には、前科があるからね。疑われてもしょうがないところもあるんじゃないの?」

言いながら、肩にかかったタツヤの手首を握った。アオイがその気になれば、今すぐにでも膝の一撃で、タツヤに地獄の苦しみを味わわせることが可能だった。
彼女の言う前科とは、タツヤたちより一年上の先輩たちが起こした事件のことで、当時の男子水泳部員たちが、女子更衣室から数点の下着を盗んだことがあったのだった。
それはすぐに発覚したのだが、県大会を間近に控えた水泳部のことを考え、男子と女子の部長同士による話し合いの末、公にされることはなかったのだった。
しかし、その話し合いののち、盗みに加担した先輩たちが、しっかりとけじめをつけさせられたことを、タツヤたちは知っていた。そして、そのけじめの先頭に立ったのが、アオイであることも漏れ聞いていたのだ。

「アイツだけは怒らせるな」

と、2日間学校を休んで、その後も股間をかばうような歩き方をしばらく続けていた先輩の言葉は、今でもタツヤの耳に残っている。

「あ、あれは…俺たちは関係ないだろ。一緒にするなよ」

「だといいけどね。念のため言っとくけど、もし今度アンタたちがあんなことしたら、タマを蹴るくらいじゃすまないから。最低一個潰すからね。覚えておいてよ」

「つ、潰すって…」

眉一つ動かさずに言い放ったその迫力に、タツヤは思わず肩にかけていた手を引いた。

「当然でしょ。二回目なんだもん。去年は先輩だったから手加減してあげたけど、アンタたちはそうはいかないからね」

その場にいる男子全員、水着の中のイチモツがキュッと引き締まるのを感じた。
中には無意識に内股になってしまった者もいる。アオイの金蹴りを想像しただけで、あのどうしようもない痛みと苦しみがよみがえってくるようだった。
アオイはそんな男子たちの情けない様子を見て、ちょっと笑ったようだった。

「じゃあね。お疲れ様」

更衣室の扉が閉まった時、その場にいる全員が、ほっとため息をついた。




「あ、あの…先輩…」

アオイという男にとって最悪の怪物が去った後、少し放心状態に陥っていたタツヤに、一年生のユウジが恐る恐る声をかけた。

「あ…? ああ。なんだよ」

「あの…その…よく分からないんですけど…。もしかすると、その…」

ユウジは大人しいタイプで、いつも自分から話をしてくる方ではなかったが、今回は何か言いにくそうにしている。

「これ…あの…部室の前で拾ったんですけど…。あの…隠してたわけじゃなくて…分からなかったので…。でも、たぶん…」

「はあ?」

ユウジは自分のジャージのポケットから、何かを握りしめて取り出した。
タツヤがそれを受け取ると、折りたたまれていたそれは、すぐに掌の中で広がった。

「!! お前、これ…!」

それは、真っ白な女物のパンティーだった。タツヤをはじめ、男子全員が、それこそがアオイが探していたものだと直感する。

「い、いや…違うんです…! ボクが盗ったとかじゃなくて…拾ったんです。更衣室の前に、落ちてたから…。何だろうと思って、拾ったんです。でも急いでたから、ポケットにしまってて…それで…」

男子全員、顔から血の気が引いていた。
ユウジが下着を盗んだり、ウソをつくような人間ではないことは、皆知っている。しかしこの状況で、さきほどのアオイに、そんな話が通じるのかどうか。おそらく、いや確実に通じないだろう。
女子更衣室は、男子更衣室と壁一枚隔てた隣にある。
とりあえず、このことを悟られないように、部員全員が小声になっていた。

「ど、どうすんだよ…。それ…。返しに行ったって、信用してもらえないぞ…」

ようやくアオイの金蹴りのダメージから回復しかけたキョウヘイが、まだ下腹を押さえながら言った。

「だな…。俺ら、最初っから犯人扱いだったからな」

「…タマ、潰すって言ってたな…」

男子更衣室に、沈黙が流れた。
アオイの言葉が脅しでないことは、男子全員がよく分かっていた。

「す、すいません! ボクが悪いんです! ボクが拾ったりしなければ…。ボク、それを返して、謝ってきます。蹴られるかもしれないけど…。自分の責任ですから…!」

ユウジが泣き出しそうな顔で頭を下げた。真面目な彼らしい言葉で、おそらく本気でそう思っているはずだった。
キョウヘイや他の男子部員たちも、そんなユウジを止めようとはしない。彼らも皆、アオイに一度は金玉を蹴られていて、その恐怖が頭に残っているのだ。

「いや。ちょっと待てよ」

ユウジがタツヤの手からパンティーを取ろうとしたとき、他ならぬタツヤがそれを制した。

「お前が今、行ったって、アイツが信用するわけないだろ。先輩に脅かされたとか何とか、俺たちのせいにするに決まってる」

タツヤの言うとおりだった。
ユウジの性格が大人しく、真面目なことは水泳部の皆が知っている。
そんな彼が下着泥棒をするはずがないし、本人がそう言ったところで、先輩から言わされていると考えるのが当然だった。

「じゃあ、どうすんだよ…?」

「いっそのこと、捨てちまえば…。分かんないように」

そう考えるのも当然だったが、タツヤだけは、何か考えているような顔をして、黙っていた。

「…いや、これはある意味、チャンスだろ。アイツが今後、俺たちに手出しできないようにしてやる」

「はあ?」

「そもそも、アイツは俺たちをなめてるんだよ。だから証拠もなく、俺たちの荷物を漁ったりするんだ。そんなの、許せるか? 俺は許せないぜ」

「そ、そりゃあ、そうだけど…」

「だろう? だから、コレを使って、アイツが反省するようにしてやるんだよ。コレが女子更衣室から見つかれば、アイツはちゃんと調べもしないで、俺たちを疑ったってことになるだろ。そしたら、アイツもちゃんと頭を下げて、俺たちに偉そうな態度をとれなくなるってわけさ」

「ああ、そういうことか…」

キョウヘイなどは納得したようにうなずいていたが、男子部員のほとんどは、そんなにうまくいくものかと思っていた。
今、タツヤが持っている女子の下着を、どうやって女子更衣室に持ち込むというのだろう。
ユウジがそれを尋ねると、タツヤはちょっと考えた後、ニヤリと笑った。

「明日は土曜日だよな…。部活も休みだ。ちょうどいいや。俺に任せとけ」

男子水泳部員たちは、タツヤの自信ありげな顔に頼もしさを感じると同時に、同じ量の不安も感じつつあった。





週が明けて、月曜日の放課後。
水泳部の男子たちが、更衣室で着替えをしていた。

「なあ、タツヤ。あの…アレ、どうしたんだ?」

「ん? ああ、あの、女子更衣室のアレか? まあ、うまくやっといたから、心配すんなよ」

タツヤはすでに、あのユウジが拾った女子のパンティーを手元に持っていない様子だった。
いぶかしそうに見つめるキョウヘイに、笑顔で説明してやった。

「土曜日にな、俺、学校来たんだよ。更衣室に忘れ物しましたって。ここの鍵を借りる時にさ、ついでに女子更衣室の鍵も借りといたってわけさ」

「あ! じゃあ、お前、中に…?」

「おう。ちょっと緊張したけどな。誰もいなかったから、さっと入って、ロッカーの隙間に入れといたよ。すぐには見つからないかもしれないけど、逆にその方がいいからな」

タツヤは意外なほど周到かつ大胆に、それをやってのけたらしかった。

「お前、すげえな…。尊敬するよ」

「ハハ。大げさだな。まあこれで、アオイのヤツも大人しくなるんじゃないか。アイツが何も言わなくても、そのうち、こっちから探りを入れてみようぜ。そういえば、アレ、どうなったって」

「そうだな。そうすれば、俺たちに謝ってくるかもな」

「そういうこと。アイツももう、俺たちを前科者扱いしなくなるってことさ」

タツヤの顔には、自信が溢れていた。
確かに、彼の計画通りに行けば、あのいつも男子を見下していて、躊躇いもなく男の股間を蹴り上げてくるアオイを、ぎゃふんといわせることができるはずだった。
キョウヘイ他、男子の水泳部員全員が、それを期待していた。

やがて部活が始まり、水泳部は男女とも、いつも通りの練習をした。
その途中で、アオイが下級生の女の子とプールサイドで何か話をしているようだったが、タツヤを含め、ほとんどの男子部員が、それに気がつかなかった。

「よーし。これで終わり。お疲れ様―」

あたりも暗くなり始めたころ、部活動の時間が終わった。
タツヤの号令で、男子水泳部員たちは練習をやめて、次々にプールサイドに上がり始めた。

「ふー。今日も疲れたなあ」

体中から水滴を滴らせながら、男子部員たちは部室に向かう。
男子更衣室のドアを開けると、そこにはいつ入ったのか、先程までプールにいたはずのアオイが、水着姿のまま、腕組みをして立っていた。

「え! あ、なんだよ…?」

タツヤは思わず、声を上げてしまうが、アオイは無言のまま、男子部員たちを見つめていた。
すると彼らの後ろから、彼らを更衣室に押し入れるようにして、女子部員たちが迫ってきた。
彼女たちもまた、無言のままグイグイと男子たちの背中を押すものだから、その雰囲気に負けて、男子たちは更衣室に詰め込まれるかたちになってしまった。

「ちょっ…。なんだよ、どういうことだよ!」

「閉めて」

アオイが言うと、男子たちの背後で、ピシャリと更衣室のドアが閉められ、鍵がかけられた。
せまい男子更衣室の中に、水泳部員全員が入る形になった。

「おい、お前ら…!」

女の子たちの意味不明な行動に、痺れを切らしたキョウヘイが叫ぶと同時だった。

ピシャッ!

と、アオイの足の甲が、濡れたキョウヘイの水着の股間を蹴り上げた。

「はうっ!」

ビキニタイプの競泳水着一枚に包まれただけの、キョウヘイの男としての最大の急所が、グニャリと変形した。
キョウヘイの頭は、すでに何度も経験しているあの痛みが、数瞬後にまた訪れることを速やかに悟った。
蹴られた瞬間の痛みは、まだ我慢できる。我慢できないのは、その直後に襲ってくる、内臓を突き上げるような、あの重苦しい痛みなのだ。
その痛みは二つの睾丸から発せられて、腰を突き抜け、胃を震わせ、喉元まで上がってくる。
キョウヘイが吐き気を感じ始めたときには、すでに両膝から力が抜けて、立っていられることもできなくなっていた。

「ううぅ…!!」

股間をおさえ、その場にうずくまってしまったキョウヘイを見て、男子たちは戦慄し、女子部員たちは、心なしか嘲笑っているかのような笑みを浮かべていた。

「お前…! いきなり、何すんだよ!?」

「…アンタたちの荷物を調べたのが、先週の金耀だったよね。あのときは、何も見つからなかったけど…」

アオイはタツヤの質問には答えず、彼の顔を見つめながら、淡々と話し始めた。

「あの時、言ったよね。今度は許さないよって。蹴るぐらいじゃすまないって」

「あ、ああ…まあ…。ていうか、アレはどうなったんだよ。見つかったのか、その、下着は?」

突然のことに、タツヤをはじめ、男子部員たちは驚くことしかできなかったが、なんとか当初の計画通り、アオイに盗まれた下着のことを問いただすことができた。
しかしアオイや他の女子部員たちも皆、眉一つ動かさずに、それを聞いていた。これはタツヤたちにとって、まったく予想外のことだった。

「ああ、あの下着ね。見つかったよ。さっき。女子更衣室のロッカーの隙間に落ちてた」

「あ…そ、そっか。良かったな、見つかって…。ていうか、それならなんで…」

「でもアタシさ、下着って言ったっけ? 着替えとしか言ってないと思うんだけど」

「え…!? あ、いや…俺…下着って言ったっけ? 着替えっていうから、そりゃあ、下着のことじゃないかと…」

タツヤの全身の汗が、一気に冷たいものに変わっていった。
やや上目がちに、冷たく厳しい視線を浴びせてくるアオイから目をそらしたくても、できなかった。

「着替えが盗まれた後、探しても全然見つからないから、やっぱり泥棒の仕業だと思ったわけ。それで、その話を一年生のコが親に話したら、そのコの家が電気屋さんでさ。監視カメラを付けてあげようってことになったの。それが、土曜日の朝の話」

アオイの話を聞いて、タツヤの心臓の鼓動が急激に早くなっていった。

「さっそくつけてもらって、とりあえず試しに動かしてみたんだけど…。バッチリ映ってたんだよね、犯人の姿が。気づかなかったでしょ? カメラがあるなんて」

「あ…いや…それは…」

タツヤの口だけがパクパクと動いて、言葉が出なかった。
焦りのあまり、後ずさりしようとすると、その両脇を、おもむろに女子の水泳部員二人が掴んだ。

「あっ…!」

タツヤがアオイから目をそらした瞬間、それを待ってましたとばかりに、アオイの蹴りが股間に向かって振り上げられた。

ピシィッ!!

と、思いのほか高い音と共に、タツヤの金的はアオイによって蹴り上げられた。
キョウヘイの時と同じように、競泳水着に包まれたその男のシンボルは、アオイの小さな素足によって射抜かれ、衝撃の波は、内部にあるはずの二つの睾丸をブルンと震わせた。

「うっ!!」

タツヤの目には、アオイの右足が自分の胸のあたりまで振りぬかれたように見えた。そしてその脚が下がると同時に、タツヤの両脚からも力が抜けて、その場に跪き、やがて睾丸を万力で締め上げられるような痛みが襲ってきた。

「ぐぐ…! あぁっ…!!」

両手で股間をおさえて、奥歯をかみしめてみても、一向にその痛みが治まる気配は無い。
先程、股間を蹴られたキョウヘイと同じように、まるでアオイに土下座するかのような姿勢で、無限とも思える地獄のような時間に耐えることしかできなかった。
しかし、蹴った当人のアオイは、眉一つ動かさずに、その様子を見下ろしている。

「おーい、まだだぞぉ。立ちなって」

そう言うと、女子たちに目配せして、痛みに震えるタツヤの両脇を抱え上げさせた。
タツヤの両脚にはまったく力が入らず、自力で立つことは不可能だったが、女の子が3人がかりで彼の体を支えた。




「は…あ…。な、なにを…!」

とめどない痛みに苦しみながらも、タツヤは恐怖に顔をひきつらせた。

「まったく、まんまと騙されたって感じだよねえ。あの時、どこに隠してたわけ? 気づかなかったなあ。でもそれを、わざわざ返しに来て見つかるなんてね。やっぱり男子は頭悪いっていうか、油断してるっていうか。バカだよねえ」

アオイが言うと、周りにいる他の女子たちも、その通りだとばかりにほくそ笑んだ。

「あ…! ち、違うんだ! アレは、ウチの一年生が拾って…。俺はただ、それを返しに行っただけなんだ…。だから…!」

「はあ?」

アオイは一瞬、理解ができないといったような表情をして、女子たちと顔を見合わせた。
そして次の瞬間、タツヤの股間に手を伸ばし、下から思い切り握りしめた。

「ぎゃあっ!!」

すでに痛めつけられたタツヤの睾丸は、さらなる痛みをもってその持ち主に危険を知らせた。
アオイの握力はさほど強くもないが、ゴロゴロと二つを擦り合わせるように睾丸を握られると、男にとってはこれ以上ない苦しみとなる。

「あ…ああぁ!!」

「この期に及んで、くだらないウソついてんじゃないよ! しかも、後輩のせいにするとか。アタシ、そういうのが一番嫌いなの。男らしくない! タマついてんじゃないの? これは飾りなの?」

「ああっ!!」

タツヤは必死に首を横に振った。

「あっそう! これ、偽物じゃないんだ。アンタも一応、男なんだね。でも、アンタみたいなヤツは男らしくないからさ、これも潰してあげるよ。そういう約束だったしね。いいでしょ?」

タツヤは涙目になりながら、必死に首を振る。
弁解しようとしても、あまりの痛みに息が詰まってしまい、声にならなかった。

「あ…ご…め…! ごめ…なさい…!」

「フン!」

タツヤの必死の願いが通じたのか、アオイは股間から手を放してやった。
しかし安心する間もなく、次の瞬間には、アオイの白い膝が股間の膨らみにめり込み、タツヤは腰が一瞬宙に浮くほどの衝撃を受ける。

「はうっ!!」

もはや、悲鳴も上げられなかった。
女子たちが抱えていた両脇を解放してやると、タツヤの体はグニャリとその場に崩れ落ちて、更衣室の床の上を、釣り上げたばかりの魚のように痙攣しながら転がりはじめた。

「ったく。バッカみたい」

その様子を、アオイはみすぼらしいものでも見るかのような目で見おろし、周りにいた女子水泳部員たちも、タツヤのあまりの痛がりように、クスクスと笑いをこぼしていた。
ここまでのあまりに衝撃的な展開に、一歩も動くことができなかった他の男子水泳部員たちはというと、タツヤの苦しむ様子を見て、一様に青ざめていた。
彼らが履いている競泳水着の下では、その金玉袋が、これ以上ないくらいにキュッと縮こまってしまっているはずである。

「アオイが蹴るとさ、男子はみんなすっごい痛がるよね」

「そうだよね。なんか、コツとかあるの?」

「ん? 別に。ただ、軽く蹴ってるだけだけど。男子はいつも、大げさなんだよ。男らしく、我慢してほしいよね」

何気ない女子たちの会話にも、男子たちはそこにある、決して埋まることのない隔たりを感じていた。
女子たちが身につけている競泳水着の股間部分は、男子のものよりさらにハイカットで、おそらく男子がそれを着れば、両側から睾丸からこぼれ出てしまうほどのものだった。
しかし女子の股間にはもちろん睾丸などついておらず、スッキリとしていて、そこにはうっすらとした膨らみがあるだけである。
男子たちが女子の股間に目を奪われるのは日常茶飯事だったが、今日ばかりは性的な欲求は抜きにして、純粋な憧れの視線を、その股間に注がざるを得なかった。

「みんなも、蹴ってみればいいじゃん。ていうか、最初からそのつもりだったでしょ? これは、男子たちの連帯責任なんだから」

アオイの言葉に、男子たちが一斉に振り返った。

「そっか。そういう話だったね。じゃあ、そうしよっか」

「そうしよー! みんなで蹴っちゃえ!」

男子たちが抵抗する暇もなく、女子たちは股間を蹴る用意を始めた。
もともと、水泳部には女子の人数の方が多く、しかも男子たちはすでに二人、ノックアウトされている。
後ろから羽交い絞めにされてしまえば、男といえどもそう抵抗することはできなかった。

「いくよー! えい!」

「やあっ!」

「こうかな? えい!」

ビシッ! バシッ!

と、次々に強烈な金的蹴りが、男子たちの股間を襲った。
蹴られた男子たちが、次々に膝をついてしまっても、今度は羽交い絞めにする役を交代して、また違う女子が股間を蹴り続けた。

「うげえっ!」

「ぐあっ!」

こうして男子水泳部員たちはもれなく、金玉の痛みに打ちひしがれることとなった。

「よし…。このくらいで、許してあげようか?」

女子部員の一人が、一仕事終えたかのように言う。
股間を蹴られた男子たちは皆、更衣室の床に蹲り、中には涙を流している者もいる。
下着泥棒をしたことは許せなかったが、彼らのあまりの痛がりように、女子たちの気持ちも一応はおさまったようだった。
するとアオイが、ようやくわずかに痛みが治まり始めたタツヤの横にしゃがんで、首をかしげた。

「うーん。そうだねえ。でも私、最低でも一個潰すって言ったんだよねー。ねえ? そうだよね?」

タツヤは戦慄する思いで、アオイの顔を見上げた。

「まあ、もう許してあげてもいいんだけど…。ねえ、ちょっとコイツ仰向けにしてみて」

アオイが言うと、女子たちが協力して、タツヤの体を引き起こして、仰向けにしてしまった。
その両手両足はしっかりと掴まれて、股間を手でおさえることも、脚を閉じることもできなくなってしまった。

「よいっしょっと」

アオイはおもむろに、右足をタツヤの股間の上に乗せた。
その足の裏に、すでに熱を持ち始めているタツヤの金玉袋の柔らかい感触が伝わる。

「まだ、アンタから正直に聞いてないんだよね。アンタが下着を盗んだんでしょ? だったら、ハッキリそう言いなさいよ」

「あ…は…それは…」

思わずタツヤが言い淀むと、その瞬間、アオイの足が股間を激しく踏みつけた。

「ぎゃうっ!!」

「アンタが盗んだんでしょ! ハッキリ言いなさい!」

アオイは足の裏の踵、最も堅い部分を使って、タツヤの睾丸を恥骨に押し付けるようにして踏みつけていた。
タツヤの睾丸はゴムボールのように変形し、強烈な痛みを彼に与えた。

「はあっ! あっ! は、はいっ! 俺が盗みました! あっ!」

「そうなんでしょ? 早くそう言えばいいのに」

アオイが踏みつけるのをやめると、タツヤはようやく呼吸ができる思いだった。

「で、いつ、どうやって盗んだの? 更衣室の鍵は、ちゃんとかけてあると思ったけど。部長の私の責任になるのかな?」

「え…? あ、いや…その…ぎゃあっ!」

言葉を濁そうとすると、再びアオイは股間を踏みつけた。
今度は睾丸をグリグリと押し込むようにして、リズミカルに踏み込んでくる。
もちろんタツヤは実際に盗んだわけではないから、この質問には答えようがなかったわけだが、必死に頭を回転させて、この痛みから逃れようとした。

「あっ! あの…鍵を…! 合鍵を…職員室からとってきて…! ぐえぇっ!」

「合鍵ぃ? アンタ、そんなことしたの? 最っ低! やっぱり潰そうかな、この変なタマ!」

アオイの顔に怒りが表れて、その右足にますます強い力が込められた。

「ぎゃあーっ!! や、やめて! お願いしますっ! やめてください!!」

「うるさい! このバカ! 泥棒! ヘンタイ!」

怒声に合わせるかのように、股間に踵を打ちつけ続け、タツヤの口から白い泡のようなものが出始めたころ、ようやくアオイは疲れたように、その脚をおろした。

「ふう…。はあ…ホンット、男子って最悪。こんなヤツらと一緒に練習したくないね」

「ホントだね。わざわざ合鍵使うとか、信じられない」

「どうするの、これから? こんなんじゃ、安心して更衣室で着替えられないじゃん」

タツヤの口から出たのは、金玉の痛みから逃れるためのでまかせだったのだが、女の子たちはそれをすっかり信用してしまったようだった。
アオイは少し考えてから、言った。

「よし。これからは、合鍵を含めて、全部私が持ってることにするね。先生にもそう言っとくから。女子の部員以外に、もう誰にも鍵は触れないようにする。それで安心じゃないかな」

女子たちはこの提案に、納得したようだった。

「それと…。男子更衣室の鍵も、私が預かっとく。男子たちの荷物は全部外に置かせて、更衣室に入れないようにするから。更衣室に入れとくのは、練習で使う備品だけにするの。それでよくない?」

「そっか。それなら、盗んだものを隠れてバッグに入れたりできなくなるね。うん、それ、いいかも」

アオイのアイデアに、女子たちは一斉にうなずいたが、男子たちは驚いてしまった。
更衣室に入れないとなると、男子たちは一体どこで水着に着替えるというのだろう。
まだ股間をおさえて立ち上がれないでいるキョウヘイが、顔を上げて意見した。

「そ、それって…。俺らはどこで着替えればいいんだよ…?」

キッと振り向いたアオイの視線に、キョウヘイの金玉袋が縮こまり、圧迫された睾丸から、また鋭い痛みが股間に走った。

「外で着替えればいいでしょ。男の裸なんて、別に見せても構わないんだから。言っとくけど、何か隠してるものがないかどうか、その度にチェックさせてもらうからね」

「そ、そんな…」

無情すぎるアオイの言葉だったが、それに抵抗する気力は、もはや男子たちには残されていなかった。
男子たちはみな、打ちひしがれたような表情でうつむき、それとは対照的に、女子たちは相手を屈服させた時のような、満足げな征服感に満ちている様子だった。

「ハッキリ言うけど、これも全部、アンタたちがいけないんだからね。私たちだって、こんなことに時間を取られるのは、めんどくさくてしょうがないんだから。分かった? ホントのホントにこれが最後だからね。もし、次に何かあったら、その時は…」

アオイの足が、ゆっくりとタツヤの股間の上に移動してきた。
今にも踏みつけようかというその足の動きに、男子たちはみな恐怖しながらも、釘づけになっていた。

「ぶっ潰すからね!!」

ドスン、と、タツヤの股間からほんの数ミリ外れた所に、アオイの右足が落ちた。
その瞬間、男子全員が再び自分の股間を両手で守り、その無事を確認する。
その情けない姿に、女子たちは笑いをこらえきれず吹き出し、そのまま男子更衣室をあとにした。


終わり。




保育士をしていると、毎日のように小さな子供たちと接することになるわけだが、ときに彼らの想像力や情報力に驚かされることがある。
これは保育士のアユミが、実際に目撃した話だ。

「ねえねえ、じゃあ次は、キンタマごっこしよう」

「あ、そうだね。しようしよう」

子供たちが散らかしたおもちゃの後片付けをしていたアユミの耳に飛び込んできたのは、およそ保育園では聞きなれない単語だった。
「キンタマ」。確かにそう聞こえたが、気のせいだったろうか。
ふと見ると、マットが敷かれた大部屋のすみで、メイ、ユズ、カンナのいつも仲良し三人組が遊んでいる。

「じゃあね、アタシが女の子やるー!」

「あ、ずるーい。アタシも女の子がいい」

「アタシもー」

思わず片付けの手を止めてしまったアユミだったが、どうということはないようだった。
園児たちがよくやる、何かの遊びの順番を決めているようだ。
その順番決めがもう少し加熱してしまったら、自分が間に入ってあげようかな、などと思いつつ、歩みはおもちゃの片づけを再開した。

「じゃあ、メイちゃんが男の子ね。アタシとカンナちゃんが女の子。じゃあ、やろう」

「えー。後で、交代だからね。ちょっと待ってて」

どうやら順番争いは解決したようで、女の子たちは遊びをはじめるようだった。アユミは手を動かしながらも、彼女たちの方に注意を配っていた。いつ、何をするか予測のつかない幼児たちを相手にする保育士の、職業病のようなものだった。

「いくよー! えい!」

「それ! あ、外れた―」

「えへへー! そんなの、当たりませんよー」

声と動き回る音から察するに、何か鬼ごっこのようなものをしているのかと思った。
逃げ回っているのはメイで、それをユズとカンナが追いかけているようだった。
ようやく片付けの終わったアユミが顔を上げると、不思議なことに気がついた。

「あっ! もう! なかなか当たんなーい!」

「へへー! ちゃんと狙ってよ。ほらほら。ブーラブーラ」

逃げ回っているメイの足元を見ると、片方のソックスを履いていなかった。
そしてそのソックスがどこにいったかというと、どうやら彼女が体操服のズボンのウエスト部分にぶら下げているものがそうらしい。
そしてその靴下の中には、何か小さなボール状のものが入っていて、メイが動くたびに、それは彼女の股の間でブラブラと揺れていた。

「メイちゃん、それ…」

思わず声をかけてしまいそうになったが、いつの間にかカンナがメイの背後に回り込んでいた。

「えい!」

カンナの脚がメイの股間に振り上げられ、そこにぶら下がっていたソックスをポーンと跳ね上げた。

「あっ!」

背後に回り込んだカンナの動きにまったく気づいていなかったメイは、驚いたような表情で、自分の股間を見た。
すると、それを正面から見ていたユズが、うれしそうな声を上げる。

「あ! 当たった! キンタマに当たったよー!」

「もー。カンナちゃん、ずるーい!」

「えへへ! やっちゃった!」

悔しそうに振り向くメイに、カンナは得意げな笑みを返した。

「じゃあさ、キンタマに当たったから。ほら、ちゃんと痛がってよ、メイちゃん」

「あ、そうか。あーん。痛いよー! 金玉、痛い、痛い!」

メイは思い出したように股の間にぶら下がったソックスを両手でおさえ、内股になった。
そしてそのまま膝をつき、うんうんと唸りながら苦しんでいるフリをするのだった。

「うーん…。キンタマ、痛いよー。どうすればいいの? ねえ、教えて?」

「我慢できないの?」

「うん、我慢できない。ボク男の子だから、キンタマ我慢できないの」

「じゃあさ、一個ちぎっちゃえば? キンタマは二つあるから、一個だけなら大丈夫だよ」

「あ、そうか。じゃあ、キンタマ一個ちぎっちゃうね!」

そう言うと、メイはソックスの中に手を突っ込んで、中からおもちゃの小さなボールを一個取り出した。
そしてそれを放り投げると、何事もなかったかのように立ち上がった。

「よし! 痛い方のキンタマちぎったから、もういいよ。もう一回ね」

「うん。あと一回当たったら、メイちゃんの負けだからね」

「もう当たらないもーん!」

そう言うと、女の子たちは再び追いかけっこを始めた。
どうやらそれが、彼女たちの考えた遊びらしかった。
2回目も、メイは軽やかに身をひるがえして、ユズとカンナの攻撃をよけ続けたが、やがて挟み撃ちになったところで、ユズのパンチがメイの股間にヒットした。

「やったあ! 当たったよ!」

「あーん。また当たっちゃったあ。キンタマって、よけるの難しいねー」

「ほらほら、メイちゃん。ちゃんと痛がって」

「はーい。…あ、そうだ。ピョンピョン20回したら、復活できることにしない? アタシ、もっとやりたいもん」

「ピョンピョンって?」

「ほら、こうやってさ。ピョンピョンってするの。どう?」

メイは、股間を蹴られた男の子がマンガなどでよくやるように、前かがみになってピョンピョンと飛び跳ねた。

「アハハハ! それ、面白―い。メイちゃん、もっとやって!」

「いいよお。ピョンピョンピョーン! こうすると、痛くなくなるんだよ」

「そうなの? じゃあ、それでもいいよ。でも、一回だけね」

女の子たちは笑いながら、楽しく遊んでいるようだった。
アユミはその一部始終を見ていたが、これを止めるべきかどうか、ちょっと悩んでしまった。
別に悪いことをしているわけではないと思うが、幼児への性教育という観点から言えば、どうだろう。
あるいは、女の子にとって将来必要になるかもしれない、護身術の勉強になるのでは、などなど。
考えているうちに、ついに止めるチャンスを失い、女の子たちの遊びは終了したようだった。

「うーん。痛い痛い! こんなキンタマ、もういらない!」

再び股間のソックスを蹴られたメイは、先程と同じように苦しむ真似事をしたあと、ついにそのソックスを掴んで、引きちぎるようにして捨ててしまった。

「あー、スッキリした。もう痛くないや」

「やったね、メイちゃん!」

「女の子に戻れたね!」

「うん。キンタマがないって、らくちんだね。やっぱり、女の子がいいや」

ニコニコと笑う女の子たちに、アユミが声をかけた。

「ねえ、あなた達。それ、何の遊びなの?」

それは保育園の先生としての質問というよりも、半分以上はアユミ自身の好奇心だった。

「え? キンタマごっこ。アタシとユズちゃんが考えたの」

メイの言葉に、ユズもうなずいた。

「アタシたちにはキンタマ付いてないけど、もし付いてたらどうなるかなーって。キンタマって、ブラブラして面白いよ。先生もやろう」

「あ、そう…。キ、キン…タマ…なの…。へー」

その言葉づかいを直してやるべきか迷ったが、そうした場合、どうしても「キンタマ」という単語を連呼してしまうことになりそうで、アユミはためらった。

「まあ…じゃあ、先生はまた今度にするから、誰か他の人とやってね」

「はーい」

結局、その場は避けることにして、じっくり考えるか、誰かに相談してみようと思った。
まったく子供というのは、油断のならない観察力と発想をしているらしい。アユミは改めて、そう思った。


終わり。



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