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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


「おいチヒロ、決闘だ! 今日こそお前に勝ってやるからな!」

宮部カズユキは胸を張り、力強い声でそう宣言したが、返ってきた返事は予想外にあっさりしたものだった。

「いいよ。じゃあ、部活が終わった後でね」

クラスの友達とおしゃべりをしていた八木チヒロは、横目でちょっと振り向いただけだった。
カズユキは大声を出した手前、なんとなく間が悪くなってしまったが、大きくうなずいて、その場を立ち去った。

今年中学2年生になったカズユキとチヒロは、小学校からの同級生で、家も近所だったので、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。
カズユキは活発でやんちゃな男の子だったが、チヒロもそれに負けず劣らずで、二人で近所のガキ大将の地位を争ってケンカすることも多かった。
「決闘」は、そのころからカズユキとチヒロがよくやっていたケンカの方法で、一対一の素手で、反則は一切なしというのがルールだった。
小学校のころまでは、7割方カズユキの勝利で決着していたのだが、中学校に入って、その力関係は完全に逆転した。
その理由は、チヒロが中学から始めた部活動にあった。

「おい、チヒロ! 決闘だ!」

夕方遅く。部活動の時間が終わってから、カズユキは体育館横にある武道場を訪れた。

「あ、そうだった。じゃあ、やろっか」

チヒロはすでに帰り支度を済ませたところだったようで、ジャージ姿だった。
カズユキの顔を見ると、思い出したようにスポーツバッグを置いた。
カズユキは学生服のシャツを腕まくりし、武道場の板敷に上がった。

「今日こそ、お前を泣かしてやるからな。覚悟しろ!」

「うん。わかったわかった。アタシ、見たいテレビがあるからさ。早くしよ」

カズユキの気合は十分だったが、チヒロはまったく相手にしようとせず、とにかくこの決闘を早く終わらせたいようだった。
二人は板敷の中央に立ち、身構えた。
審判などはおらず、勝敗を決めるのは当事者の二人だけだった。

「行くぞ!」

カズユキは声を荒げて、まっすぐにチヒロに突っ込んでいった。
数分後。

「じゃあ、アタシは先に帰るから。鍵、閉めてきてね」

チヒロは汗一つかいておらず、何事もなかったかのような顔で、道場を出ていった。
武道場の真ん中には、股間をおさえてうずくまり、痛みに震えているカズユキがいた。

「うう…。くそ…」

中学校に上がってから、ほとんど毎週のように決闘を申し込んでいるが、カズユキが勝ったためしがなかった。
その理由は、チヒロが中学校から拳法部に入り、そこで金的蹴りの技を身につけたからだった。
初めてチヒロの金的蹴りをくらった時、カズユキは一瞬、目の前が真っ暗になった。
痛みが下腹部に広がり、膝から力が抜けて、自分の意志とは関係なく床に座り込んでしまったのを、今でも覚えている。

「なんだ。カズも一発なんだ」

習ったばかりの金的蹴りを打ち込んだチヒロは、半ばあきれたような顔でそう言った。
それ以来、チヒロはカズユキとの決闘では遠慮なく金的を狙ってきた。
しかもその技は日に日に向上し、今ではさまざまなフェイントや牽制を織り交ぜて、到底素人では防ぎきれないような金的攻撃の技術を身につけてしまっている。
体格は勝っているとはいえ、武道の経験のないカズユキには、とても敵う相手ではなくなってしまっているのだった。

「ハア…ハア…」

チヒロにノックアウトされてから15分ほど経ったころ、ようやくカズユキは起きあがることができた。
しかしチヒロの金的蹴りは、今日も正確にカズユキの睾丸をとらえて跳ね上げたから、普通に歩けるまでに回復するには、もう少し時間が必要だった。

「宮部くん、大丈夫…?」

顔をあげると、同じクラスの亀井ユカがいた。
ユキはチヒロの友達で、拳法部にも一緒に入部していた。しかし体格が小柄で、人一倍大人しい性格だったので、試合に出たり激しい稽古をすることは避けて、いつも一人で型の練習などをしているようだった。

「あ、ああ…。まあな。今日もやられた…。くそ…」

「大丈夫? まだ、大人しくしてた方がいいよ」

「ああ、そうだな…。でも、帰らないと…く!」

立ち上がろうとすると、股間から下腹部にかけて痛みがぶり返してきた。
ユカは思わず、カズユキの側に寄り、背中をさすってやった。

「ダメだよ。チヒロの蹴りはすごいから。拳法部の男子でも、立てなくなる時があるんだよ」

「ホントだな…。アイツ、だんだん蹴りがキツクなってきてんなあ。くっそー、ぜんぜん勝てねえ」

ユカは中学校に来てからチヒロと仲良くなったのだが、その幼馴染であるカズユキのことはすぐに教えてもらったし、二人が昔から決闘をしている事情も知っていた。

「宮部くんも、拳法部に入ればいいのに。決闘じゃないけど、毎日チヒロと試合出来ると思うよ」

「うん…。それもそうなんだけどなあ」

カズユキは拳法部はおろか、どの部活動にも入っていなかった。
昔から運動神経は悪い方ではなかったが、野球やサッカーなどの団体競技が性に合わないのだ。

「なんか違うんだよなあ。俺は、俺だけの力で強くなりたいっていうか、アイツを泣かしたいんだよなあ。拳法とかじゃなくてさ」

「そうなんだ…」

ユカには、カズユキのこだわりは理解できなかった。
しかしカズユキは、筋トレなどをしてそれなりに体を鍛えているようで、体格だけは運動部の生徒に劣るものではなかった。
これで拳法の技を身につければ、チヒロに勝つことも難しくはないと思えるのだが、他人の意見を素直に聞くような性格でないことは、ユカはカズユキと知り合った当初から感じていた。

「宮部くん。いいものがあるんだけど…」

「ん?」

ユカは立ち上がると、拳法部の男子更衣室に入っていった。

「え…と…。あった。これ」

何か探しているような音が聞こえ、更衣室から出てきた時には、その手に白い物体が握られていた。

「あの…。たぶん、これだと思うんだけど…。うちの男子が使ってるやつで…」

いつも小さい声をより一層細くして、ためらいがちに白い物体を差し出した。

「なんだ、これ?」

それはゴムバンドにプラスチックのカップのようなものが着いたもので、カズユキが初めて見るものだった。

「それ、あの…。ファールカップっていうの。みんな、その…金カップとか言ってるけど…」

カズユキはうなずいた。

「ああ、これか。これが、そうなんだ。初めて見た。これ、どうするんだ? 履くのかな?」

カズユキは慎重に立ち上がって、ファールカップをズボンの上から履いてみようとした。
それはビキニパンツのように履き、ゴムバンドでしっかりと固定するもののようで、カズユキの体にはピッタリ合った。

「こうかな。このカップの中に入れればいいんだろ? よいしょっと」

ズボンの上から自分のイチモツを握って、カップの中におさめた。
ユカはその様子に思わず目を逸らしたが、横目で観察していた。

「ああ、こりゃいいや。これなら、蹴られても痛くないかもな」

ズボンの上からファールカップを装着したカズユキは、ちょっと滑稽な姿になっていたが、その目は期待に輝いていた。

「うん。ウチの男子も、よくチヒロに蹴られてるけど、それを着けてるから、割と平気みたい」

「そうかあ。そうだよな。アイツの金蹴りをくらってたら、稽古なんかできなくなるもんなあ。なあんだ。いいのがあるんだなあ」

カズユキは心底感心したようで、ファールカップを着けた股間を自分の拳で軽く叩いてみた。
衝撃はあるが、痛みは感じない。これなら、チヒロの金的蹴りを受けても、ある程度耐えられそうだった。

「これ、借りていいのか?」

「うん、たぶん…。予備があると思うから」

「よし。じゃあ、これを着けて、もう一回アイツに挑戦してやるか。明日また…。いや、明日はまだアレだな。明後日にするか!」

「うん。そうした方がいいよ」

金的蹴りをまともにくらえば、一日くらいで痛みは回復しない。金玉が腫れあがってしまって、それを蹴られでもしたら、さらに痛みが増すことになるのだ。
カズユキはとりあえず、明日いっぱいは様子を見ることにした。

「見てろよ、チヒロのヤツ。今度こそ、俺が勝つからな!」

ちょっと腰を引き気味にしながら、それでも気合を入れるカズユキの姿を見て、ユカは少しだけ笑った。


翌々日、再び決闘を申し入れてきたカズユキに、チヒロはさすがに呆れた顔をした。

「また? 一昨日、負けたばっかりじゃん。潰れても知らないからね」

金的攻撃を予告するかのような言葉だったが、カズユキはひるまなかった。

「おう! 今日の俺は、いつもとは違うぜ。今日こそ、お前に勝ってやる!」

「あ、そう。じゃあ、部活が終わった後でね」

例によって、チヒロはカズユキの強がりをまったく相手にすることはなかった。
それでもカズユキは、今日こそは勝てるということを確信していた。
なにしろ、彼の学生服のズボンの中には、すでにユカから貸してもらったファールカップが装着されているのだ。
これがある限り、チヒロの金的蹴りは恐れるに足りないものとなり、金的蹴りさえなければ、負けることはないという確信があった。

「宮部くん、やっぱり、今日…?」

チヒロに宣戦布告をした後、ユカがカズユキのもとに近づいてきた。

「おう。こないだ借りたヤツ、もう着けてるからな。これで、負ける気がしねえよ」

自信ありげに話すカズユキを見て、ユカも笑顔を見せた。

「そっか。じゃあ、わたしも応援に行くね。あ、チヒロには秘密だよ。私が宮部くんにそれを貸したってことも、誰にも言ってないから」

「あ、そうか。じゃあ、よろしく頼むな!」

ユカの顔には、恋をする少女の明るい面影が、なんとなく感じられた。
カズユキはそれまで、ユカのことを異性として見たことはなかったが、自分に親切にしてくれる彼女に対し、好意を抱かないわけもなかった。
ファールカップを貸してくれたユカのためにも、負けるわけにはいかないと、改めて気を引き締めた。


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放課後。
いつものように部活が終わった後、カズユキは武道場を尋ねた。
するとそこには、道着姿のチヒロが待ちかねたようにして立っていた。

「お。今日は着替えてないのか」

いつもはジャージ姿で立ちあうことが多かったが、この日は練習後も着替えずに、待っていたようだった。

「まあね。なんか、今日はアンタも気合が入ってるみたいだからさ。ここらでちょっと、キツーく懲らしめとかないといけないかなって思ってね。いい加減、諦めた方がいいって、気がつくようにね」

「へっ! お前こそ、覚悟しとけよ。今日の俺は、いつもと違うからな。次はお前の方から、決闘を申し込んでくるようになるぜ」

言葉通り、チヒロはまるで試合前のような緊張感に包まれていた。いつものように、軽く相手をしてやるつもりではないらしい。
道場の隅では、ユカが、その様子を心配そうに見守っていた。

「ねえ、カズ。良かったら、金的を蹴らないであげてもいいんだよ? アタシ、だいぶ上達したからさ。金的なしで勝負してあげてもいいよ?」

意外な申し出だった。
二人の決闘は、反則が一切ないことがルールだったため、チヒロも遠慮なく金的攻撃をしてきたのだが、金的攻撃を受けたときのカズユキのあまりの脆さに、後ろめたくなったのだろう。
それは幼馴染としてのいたわりから出た言葉だったのかもしれないが、カズユキのプライドを傷つけるものだった。

「ふ、ふざけんなよ! 金的なしでも、俺に勝てると思ってんのかよ!」

「うん。ていうか、金的ありだと、あんまりあっけなくてさ。やっぱり、男子は急所をやられるとキツイのかなーって」

傍らで聞いていたユカも、意外そうに口を開けて見ていた。
カズユキは、そんなユカの方をチラリと見てから、ここまで準備した以上、チヒロの金的蹴りを正面から受けて、それに耐えて倒さなければ意味がないような気がしてきた。

「余計なこと考えるなよな! 俺は、全力のお前に勝ちたいんだよ。手加減されたって、意味ねえんだよ!」

「まあ、アンタがいいなら…」

「いくぞ! おりゃあ!」

カズユキは、自分を奮い立たせるように大声を上げて、いつものようにチヒロに殴りかかっていった。

「よっ。ほっ」

チヒロは冷静に見極め、軽やかにかわしている。
毎日のように行っている拳法部の男子との稽古に比べれば、退屈してしまうような作業だった。

「な、なめんなよ。ハア…ハア…!」

すでにカズユキの息は上がっていたが、チヒロは違和感を感じていた。
カズユキの下半身が、あまりにも無防備すぎるのである。
今まで何度となく金的蹴りをくらってKOされてきた癖に、今日に限ってまったく金的の防御を考えていない様子だった。
いつもなら、相手の攻撃の合間に金的を蹴り上げて、決着をつけてしまうところだったが、慎重に攻めることにした。

「やっ!」

まず、鋭い下段蹴りで、カズユキの左膝のあたりを攻撃した。

「くっ!」

カズユキはたまらずよろめいてしまうが、なんとか持ちこたえた。
しかしそれが、チヒロの狙い通りだったのである。

「えいっ!」

崩れた体勢を支えるために、大きく足を開いてしまう。
そこへ、チヒロの得意の金的蹴りが炸裂した。

パコーン!

と、高い音がして、チヒロの足は跳ね返された。
予想外の手ごたえに、チヒロは思わず一歩飛びのいてしまう。

「かっ! く…」

カズユキは反射的に顔を歪ませたが、それほどの痛みは感じなかった。
どうやらファールカップにうまくあたり、金的蹴りの威力は殺せたようだった。

「それ!」

思わず顔をほころばせながら、カズユキは右脚で思い切りチヒロを蹴飛ばした。

「きゃあ!」

突然の出来事に混乱していたチヒロは、カズユキの素人じみた蹴りをまともにくらい、尻もちをついてしまった。

「やった! 倒したぞ!」

中学校に上がって以来、カズユキがチヒロからダウンを取ったのは、初めてのことだった。
もちろん、ダウンしただけで勝負に勝ったことにはならないのだが、かつてない会心の攻撃に、カズユキは思わずガッツポーズを取って喜んでいた。

「どうだ、チヒロ! もう、お前の金蹴りなんか、効かねえんだからな! 覚悟しろ!」

道場の床に座り込むチヒロを見下ろすのは、気分が良かった。
ユカの方を見ると、彼女もまた、作戦が成功したことを喜んでいるようで、優しく微笑んでいた。

「痛ったー! 久しぶりにダウンしちゃったなー。よいしょっと」

しかし、チヒロには思ったほどのダメージはないようで、また、金的蹴りが効かなかったことの混乱も、すでにないようだった。
すぐに立ち上がると、道着の帯を締め直して、カズユキに向かい合った。

「カズ。アンタ、金カップ着けてるでしょ? おかしいと思ったんだよねー。やけに自信満々だからさ」

あっさりと見破られて、カズユキは少し面食らった。

「そ、それがどうした。別に俺が何着けてようと、卑怯じゃないはずだぞ。決闘は、反則なしなんだからな」

「別に、卑怯とは言ってないよ。ていうか、ずっと前から金的蹴られまくってるくせに、今ごろ着けたのかって感じ。別にいいんだよ。部活の男子は、アタシとやるときはみんな着けてるしね」

カズユキが想像していたよりも、チヒロは冷静だった。
金的蹴りが効かないことで、もっととり乱し、絶望するかと思っていたのだが。

「アタシが思うのはさ。これでやっと、思いっきり金的蹴りできるってことなんだけど。金カップ着けてれば、とりあえず潰れちゃうことはないんでしょ? けっこう大変だったんだよ、手加減するのって」

「え?」

チヒロは嬉々とした様子で、屈伸運動を始めた。
そしてカズユキが戸惑うヒマもなく、構えをとって決闘を再開した。

「いくよー。えい! えい!」

意外にも、チヒロは金的蹴りではなく、拳を握ってカズユキを突いてきた。
その突きは威力はないがスピードがあり、連続してカズユキの胸や腹に襲い掛かってきた。
素人のカズユキには、もちろんそれらがさばけるわけもなく、背中を丸めて、両腕でなんとか顔面を守ることしかできなかった。

「宮部くん! 頑張って!」

不意に、ユカが声をかけた。劣勢のカズユキを見かねてのことだったろう。
それは必死で防御に徹するカズユキには聞こえたかどうか分からなかったが、逆に攻撃しているチヒロの手を止めさせた。

「ユカ?」

チヒロにしてみれば、友達のユカがカズユキの応援をするのが不審だったのだろう。
カズユキはその隙を見逃さず、目の前のチヒロの肩を掴んだ。

「おりゃ!」

チヒロを押し倒そうと、両脚を開いて踏ん張ったのが、カズユキの迂闊だった。

「あ。えい!」

軽い掛け声と共に、チヒロの膝がカズユキの股間に跳ね上げられた。
ボコっと、股間のファールカップが鈍い音を立てる。
もちろん、チヒロの膝がカズユキの睾丸に直接当たることはなかったが、その衝撃は十分ファールカップの中にまで伝わるものだった。

「うぐっ!」

先ほどの金的蹴りよりも、かなり激しい痛みがカズユキの股間に走った。
思わずチヒロの肩にかけた手を離して、両手でおさえてしまう。

「どう? 膝蹴りはきくでしょ? 強烈すぎるから、相手が金カップ着けてないと、できないんだよねー」

背中を丸めて股間をおさえるカズユキを、チヒロは笑いながら見下ろしていた。
確かにチヒロが金的に膝蹴りをしたのは、二人の決闘では初めてのことだった。

「前に部活で、金カップ着けてない男子に膝蹴りしたら、泡吹いて気絶しちゃったんだもん。あのときは、笑ったなー。可哀想だけど」

その時のことを思い出したのか、チヒロの顔に笑顔が見えた。
一方のカズユキは、座り込んでしまうほどのダメージは受けていなかったが、その下腹部には十分な痛みが広がっていた。
ファールカップを着けていてこれなのだから、確かにまともにくらえば、気絶してしまうかもしれない。

「でも、まだいけるでしょ? さあこい!」

「く…そ…」

カズユキは自らの油断を悔んでいた。
ファールカップさえ着けていれば、金的蹴りを受けても大丈夫なものと思っていたが、それはチヒロが手加減していればの話で、本気の金的蹴りを受ければ、やはり十分すぎるほどの痛みがある。
ファールカップは、ただ睾丸が潰れてしまわないようにするための保護具だったのだ。

「この野郎…! なめんなよ!」

痛みに折れてしまいそうになる心を、今までチヒロに手加減されていたという屈辱への怒りで支えた。
なんとか体を起こして、再び戦闘態勢に入る。

「宮部くん! 大丈夫だよ。頑張って!」

ユカの声援は、今度は確かにカズユキの耳に届いた。
自分を応援してくれるユカのためにも、負けるわけにはいかないという気持ちになった。
彼女の貸してくれたファールカップのおかげで、いつもは一発で沈んでしまう金的蹴りを二回も耐えられたのだ。
うまく芯を外すことができれば、あと一、二回くらいは耐えられるかもしれない。
カズユキは一縷の望みを、ユカのくれたファールカップに託した。

「アンタ達、どういう関係なの?」

再びカズユキに声援を送ったユカを、不思議そうに見た。
いつの間にか距離を縮めているかのような二人の様子が、チヒロにとっては疑問だった。

「うるせえ! いくぞオラァ!」

大声で気合を入れながら、カズユキが殴りかかっていった。

「おっと」

不意をつかれても、チヒロは冷静だった。
避けると同時に、カズユキの右足の膝の部分に、軽い蹴りを入れていった。
カズユキには、さすがにもうチヒロの狙いは分かっていた。
足を攻撃して、体勢が崩れたところで金的蹴りを繰り出すつもりなのだろう。
そう思ったから、膝の痛みに耐えつつ、すぐに股間に手をあててガードした。

「やっぱり金カップ着けてても、怖いんだ?」

カズユキが必死に金的を守ろうとする様子を見て、チヒロは微笑んだ。

「う、うるせえ!」

悔しいが、チヒロの言うとおりだった。しかし勝つためには、金的を守るしかない。
チヒロは余裕を見せながらも、攻め方を考えていた。
拳法部の男子との稽古だったら、防具をつけているので、顔面などを攻撃することもできる。
相手の注意を上に向けておいて、不意を突いて下段の金的蹴りを決めるというのが、彼女が得意とする戦法だったのだ。
しかしこの決闘の場合、カズユキは防具も着けておらず、顔面を直接攻撃するのは、さすがに気が引けた。この状態で、なんとか会心の金的蹴りを決めることはできないかと考えるのである。
顔面攻撃はためらうが、金的は思い切り蹴り上げたいと思うのは、女の子であるチヒロの残酷な選択だった。

「やあっ!」

チヒロは何かを思いついたようで、自信ありげな表情で、カズユキの太もものあたりに、鞭のような蹴りを入れた。

「ううっ!」

カズユキはたまらず顔をしかめるが、金的のガードは崩さない。
すると、不意にチヒロがカズユキの目の前に手を伸ばした。
パンチかと思って身構えたが、チヒロの顔は悪戯っぽく笑っていた。

「デコピーン!」

バチン! と、カズユキの眉間の部分に、チヒロの強烈なデコピンが決まった。

「痛っ!」

デコピンとはいえ、ピンポイントに決まれば相当に痛い。
カズユキは思わず目をつぶって、額を両手でおさえた。
チヒロの狙いは、まさしくこの瞬間である。

「えいっ!」

今日一番の気合を込めて、チヒロの右脚は素早く、しなやかにカズユキの股間めがけて振り上げられた。
乾いた音と共に、カズユキの両脚の踵は浮き上がり、チヒロは指先で股間を抉るようにして、足を引き戻した。
いつもの決闘で決めているものとは、比べ物にならないほど、強烈な金的蹴りだった。

「はぐうっ!」

衝撃は、カズユキの脳天を突き抜けるようだった。
もはや耐えるとか我慢するという発想さえも浮かばず、踵が着くと同時に、膝から崩れ落ちてしまう。
やがて重苦しい痛みの波が全身に広がり、何も考えられず、ただ背中を丸めてうずくまることしかできなかった。

「よし! 決まった!」

カズユキが真っ青な顔をしてうずくまるのを見て、チヒロは勝利を確信した。
自分でも満足するほどの、会心の金的蹴りだったようだ。

「どう? アタシの勝ちでいいでしょ?」

カズユキの顔を覗きこむと、唇を震わせながら、わずかにうなずいていた。

「宮部くん…」

勝負が決したのを見て、ユカがカズユキの側に歩み寄ってきた。

「痛いの…? 大丈夫?」

優しく言葉をかけるが、カズユキは顔をあげることもできず、話しかけられることさえ迷惑そうだった。
その様子を見て、ユカの顔に、ふと意地悪そうな笑顔がこぼれたのを、チヒロは見逃さなかった。

「ユカ。アンタがカズに金カップ貸したんでしょ? ったく、アンタも意地悪だよね」

そう言われると、ユカはイタズラがバレた子供のような顔をした。

「だって…。最近、部活の男子たちは金的を嫌がって、チヒロと試合しなくなってきてるでしょ。だから、宮部くんに頑張ってほしくて…」

「アンタ、男子が金的蹴られるとこ見るの、好きだもんねー。まあ、確かに面白いけどね」

「そうなの。あの、金的を蹴られた男子が、アソコをおさえて必死に我慢しようとするとこ。アレが一番好きなんだよね。宮部くんって、いつも一発で倒れちゃうでしょ。だから、少し我慢できるように、貸してあげたの。宮部くんのあの顔、すっごい良かったー」

ユカの声と表情は、普段とはまったく違う情熱に溢れたものだった。
苦しみに耐えながらも、カズユキはそれを聞いていた。

「そんなに好きなら、自分で蹴ればいいのに。簡単だよ、金的蹴りなんて」

チヒロがユカの変貌ぶりに驚かなかったのは、すでに彼女の正体を知っているからだろう。

「ヤダ。試合は怖いもん。だから宮部くんと、もっと決闘してよ。宮部くんが金的を我慢するところ、もっと見たくなっちゃった」

カズユキの頭の中は、混乱していた。
ユカが自分への好意でファールカップを貸してくれたと思っていたら、実はそれは彼女の偏愛を満たすための計画で、むしろ自分が苦しむところを見たがっていたなんて。
いつも自分の大切な急所を軽々しく蹴り上げるチヒロもそうだったが、金的というものを持たない女の子たちの無垢な残酷さに、改めて恐怖する思いだった。

「ねえ、宮部くん。最新型の、もっと頑丈な金カップがあるんだよ。それならきっと、チヒロの金的蹴りももっと我慢できるから。今度、貸してあげるね。だから、また決闘して!」

ユカは、もはや自分の裏の顔を隠そうともせず、熱意にあふれた表情で、うずくまるカズユキに話しかけた。

「まあ、そういうことで、これからもどんどん金的を蹴るからね。金カップ着けてれば、とりあえず痛いだけなんでしょ? 大丈夫だよね?」

チヒロは少し呆れたような様子だった。
痛いだけとはいうものの、この絶望的な痛みを彼女たちが理解することがあるのだろうかと、カズユキは考えていた。

「あの、金的を必死で守ろうとするのもカワイイよね。あ、怖がってるって」

「ああー。まあね。一度蹴られると、本気で怖いんだろうね。アタシホント、金的とかなくて良かったって思うな」

「そうだね。金的なんかついてるのに、こんなに頑張って勝とうとするんだから、かわいそうっていうか、面白いよね。宮部くん、これからも頑張ってね」

歪んでいるなりに、素直にカズユキに好意を持っているようで、ユカはカズユキの背中を優しくなでてやった。
それでも、カズユキの金的の痛みは一向におさまる気配がなく、ぼんやりと、今後はもうチヒロと決闘をしないようにしようかと考えていた。


終わり。



夕暮れ時の小学校。
すでにほとんどの生徒たちが帰ってしまった後、6年3組の教室には、人影があった。
6年1組の羽田ケントだ。なぜか、自分のクラスではない3組の教室で、しきりと何かを探しているようだった。
やがてケントは、女子の森田アイの机を見つけて、その引き出しの中を探った。
そしてそこから、音楽の授業で使う縦笛の入った袋を取り出すと、中身を出し、じっとその縦笛を見つめた。

「……」

無言のまま、ケントはアイの縦笛の口に、自らの唇をつけた。
緊張しながらも、どこか恍惚とした表情で、ケントは縦笛の口を舐めまわしてしまった。

「誰? 何してるの?」

背後から声をかけられて、ケントは素早く振り向いた。

「あなた…。1組の子?」

そこにいたのは、教育実習生の横山ミズキだった。
一週間ほど前から、3組の担当をしており、ケントには直接授業を教えたことはなかったが、見覚えはあった。

「ここで、何してるの?」

ケントは思わず、持っていたアイの縦笛を後ろに隠した。
明らかに動揺した様子で、意味もなく首を横に振る。

「べ、別に…。なんでもないです。なんでも…」

しかし、ミズキはいぶかしげに、ケントの方に歩み寄ってきた。

「もう、下校の時間でしょ。早く帰りなさい」

「は、はい!」

返事はするものの、そこから動こうとしない。
ミズキはますます不審に思い、ふとケントの背後を見ると、森田アイの机の上には、縦笛の袋が無造作に放り出されている。
ミズキは直感した。

「キミ、何を隠してるの!」

「な、何でもないです!」

ケントの言い訳を聞く様子もなく、ミズキは無理矢理、腕を捻りあげて、後ろに隠していた縦笛を出させた。

「これは何! 誰のものなの!」

「ぼ、ボクのです。ボクの笛です。今、練習してて…」

「ウソ言いなさい! ここに、ちゃんと名前が書いてあるじゃない。森田アイって。これで、何をしてたの!」

ミズキのいうとおり、縦笛の側面には、森田アイの名前を書いたシールが貼ってあった。
ケントの顔がさっと青ざめて、それ以上、言葉が出なくなってしまった。
教育実習生とはいえ、ミズキは教師の端くれとしての威厳を持って、ケントを叱った。

「この笛で、何をしてたの! 言いなさい! 先生に言えないようなことなの?」

すると、ケントは観念したようにうつむいて、弱々しい声で謝った。

「ごめんなさい…。ちょっと、口をつけたりしました…。本当にごめんなさい…」

今にも泣き出しそうな様子のケントを見て、ミズキは小さくため息をついた。

「どうしてそんなことするの? この笛の持ち主が、嫌がると思わなかったの?」

「うん…。ボク、その…。森田さんのこと…ちょっとかわいくて…。だから…」

たどたどしく、ケントは説明した。
縦笛の持ち主である森田アイは、目が大きな可愛らしい女の子で、それはミズキもよく知っている。そんなアイに、ケントは密かに恋心を寄せていたのだろう。
まだ告白するとか付き合うとか、そういうことを考えもしない幼い男の子が、ときにとってしまう鬱屈した欲求の処理方法が、こういうことだったのだろう。
ミズキはそれを理解したうえで、悪いものは悪いと、ケントに教えてあげるつもりだった。

「そうだったの。でもね、こういうことをしたら、森田さんも悲しいと思うわ。森田さんが悲しいのは、キミもイヤでしょ?」

ケントはうなずいた。

「だったら、こういうことは、二度としたらダメよ。今回だけは、先生は誰にも言わないでおいてあげるから。その笛を洗って、元に戻しておきましょう」

そう言うと、ケントははっと顔をあげて、大きくうなずいた。
叱られて、自分が縦笛をなめていたことを森田アイにもバラされてしまうと思っていただけに、ミズキの言葉はケントにとって救いだった。

「はい!」

縦笛を持って、教室の外にある手洗い場に走っていった。
ミズキはその様子をみながら、少し甘すぎるかなと、自省する思いだった。
しかし、教育実習生として一週間ほど子供たちと接しているものの、叱るということは褒めることよりも難しいものだと痛感していた。
元々、子供が好きでこの道を選んだだけに、無暗に怒れないところがある。

「洗ってきました。ハンカチで拭いて、入れときます」

ケントは嬉々とした表情で、縦笛を元のように袋に入れて、机の中にしまった。
その間、ミズキは傍らのイスに座り、ケントの横顔を眺めていた。
教育実習生として、子供たちと日常的に触れ合うまで気がつかなかったが、ミズキは自分に少年愛の性癖があるということを、密かに自覚しつつあった。
特に目の前にいるケントのように、線が細くて、中性的な美少年に、ミズキは心を惹かれてしまう。
まだ第二次性徴期前か、大人になったばかりで、性のことなど何も知らないが、欲求だけはわずかに持ち始めているような男の子たちが、ミズキの大好物だった。

「終わりました。あの…本当にすいませんでした」

縦笛をしまい終わると、ケントは改めて、ミズキに頭を下げて謝った。
申し訳なさそうに眉を寄せた表情も、いじらしくてかわいいと、ミズキは思う。

「ちょっと、そこに座って。えーっと…キミ、名前は…?」

「あ、羽田ケントです」

「そう。ケント君。先生、もう少しキミに話をするわ。今日のことは、秘密にしておいてあげるけど、本当は決して許されることではないのよ。それはわかる?」

「は、はい…」

厳しい口調に、ケントは心から委縮していた。

「人は、何か悪いことをすれば、罰を受けなければいけません。それも分かるわね?」

ケントはためらいがちにうなずいた。

「じゃあ、キミに罰を与えるわ。立って。後ろで手を組んで、足を開いて。休めの姿勢で、目をつぶりなさい」

ケントは恐る恐る、その場に立ち上がり、言われた通りにした。
ミズキはケントの担任の教師よりもずっと若く、優しい印象のある実習生だったが、これから一体何をされるのか、少なくない不安がケントの胸を覆っていた。



「いい? 絶対動いちゃダメよ。そのままの姿勢でいなさい。あと、声をあげてもダメ。わかった?」

ケントは目をつぶりながら、うなずいた。

「よし。いくわよ」

突然、ケントは股間に違和感を感じて、思わず腰を引きそうになった。
しかしミズキの声が、それを厳しく制した。

「ダメよ! 動かないで!」

ミズキは、ケントが履いている半ズボンの上から、睾丸を鷲掴みにしていたのだ。
男の最大の急所を不意に掴まれたケントは、反射的に逃れようとしたが、ミズキに叱られて、そのまま休めの姿勢で立っているしかなかった。

「そう。それでいいの。先生がいいって言うまで、ずっとそのままよ」

ミズキの声が、興奮したように少しうわずっているのが、目をつぶっているケントにも感じられた。
しかしその理由がなぜなのか、想像がつくわけもなく、ケントの頭にはただ、二つの睾丸を掴まれた本能的な不安感しかなかった。

「フフ…。ちっちゃくて可愛いタマタマね。ケント君は、タマタマを打ったり、蹴られたりしたことはあるの?」

「い、一回だけ…。ドッジボールの時に…」

「ボールが当たっちゃったの?」

「は、はい…」

ミズキの手が、ケントの睾丸をコロコロと揉み転がしている。ケントは顔をしかめながら、うなずいた。

「そう。痛かったでしょう? 男の子はタマタマを打つのが、一番痛くて苦しいのよね。潰れたりしたら、将来、結婚しても子供ができなくなってしまうのよ」

それを聞いて、ケントはミズキが自分の睾丸を潰してしまうのではないかと思い、背筋がぞっとする思いだった。
ドッジボールの時は、バウンドしたボールが、軽く当たってしまった程度のものだったが、あの苦しみは、思い出したくもないものだった。

「せ、先生…。ボクのタマを潰さないでください…。お願いします」

ケントが懇願すると、ミズキは自分がこの男の子を支配しているのだという満足感を感じた。同時に、今にも泣き出しそうなケントの顔に、例えようもない愛おしさを感じてしまう。
最初から、ケントの睾丸を潰すつもりなどなかったが、この際、じっくりと彼をいたぶってやりたくなった。

「大丈夫。潰さないわよ。でももし、先生の言うことを守らなかったら、潰してしまうかもよ?」

睾丸を手の中で転がすと、ケントはびくっと体を震わせて、必死にうなずいた。
実際、ケントの二つの睾丸はまだ未発達で、ちょっと力を込めてしまえば、簡単に潰れてしまうのではないかと思うほど、小さい。
しかしそれがまた、ミズキの性的嗜好をくすぐるのである。

「じゃあ、ちょっと強めに握るわね?」

そう言うと、ケントの睾丸を握る右手に、少し力を込めた。

「ううっ!」

「ダメよ、腰を引いちゃ。掴みにくくなるでしょ。背筋を伸ばして。休め!」

ミズキは面白そうに、ケントの反応を見ていた。
股間に広がる重苦しい痛みに耐えながら、ケントは必死に背筋を伸ばしていた。

「そうそう。もっと強くなるからね。頑張るのよ?」

じわじわと、睾丸を握る手の力が強くなっていった。
ケントの睾丸は、逃げ場のないミズキの手の中で押し潰され、変形していく。

「ああっ! 先生! 先生!」

もうやめてくれというように、ケントは叫んだ。

「どうしたの? タマタマが痛いの? まだ、そんなに力を込めてないのよ? もっと我慢できるでしょ?」

「痛いよ、先生! タマが潰れちゃうよ!」

「そう。でもこれは罰だから、ケント君はもうちょっと我慢しないといけないのよ。でも大丈夫。このくらいじゃ、まだ潰れないのよ。もっと強くしてもね。ほら」

ミズキの手に、さらに力が込められた。
ケントの全身を激しい痛みが駆け巡り、吐き気さえ催してきた。
ケントは思わず身をよじって、手を振りほどこうとするが、ガッチリと掴まれたミズキの右手は、ケントの睾丸を離さなかった。

「うああっ!」

「ほら。動いちゃダメでしょ。あと、声も上げたらダメよ。我慢しなさい。約束を守れないなら、本当に潰しちゃうわよ?」

ミズキは耳元で、囁くように言った。
ケントは痛みに震えながらも、睾丸を潰される恐怖を感じ、必死で背筋を伸ばして、唇を噛んで耐えようとした。
その姿を、ミズキは心から愛おしそうに見つめ、握りしめた睾丸を、さらに手の中でグリグリともてあそんだ。
睾丸が動くたびに、ケントは「ひっ」とか「うっ」とか、声にならない悲鳴を上げるのである。

「痛いの? 苦しいのね? タマタマを握られて。男の子の大切な所ですもんね。不思議ね。どう痛いのか、先生も知りたいわ。先生に説明してくれないかしら?」

「う…。なんか…お腹にグゥってきて…足がしびれてきて…気持ち悪くなります…ううっ!」

「そう。我慢できないの? こんなに優しく握ってるのにね。潰れたりしたら、もっと痛いのかしら? ショックで死んじゃうのかしら」

「し、死にます! 死んじゃいます!」

痛みに震えるケントには、その言葉が本気なのかどうか、考える余裕もなかった。
ただ、ミズキがその気になれば、いつでもケントの睾丸は潰されてしまうことは確かで、ケントは男の本能として、ミズキに逆らうことはできなかった。

「本当? でも、ケント君は悪いことしたんだもんね。そのくらいされても、当然かもしれないわよ。タマタマは二個あるから、とりあえず、一個だけ潰してみようか?」
 
「や、やめてください! お願いします! 許して下さい!」

「だーめ。潰します。それ!」

ミズキは楽しそうに笑っていた。
二つながら握っていたケントの睾丸を持ちかえると、そのうちの一つに、これまで以上の圧迫をかけ始めた。

「ああーっ!!」

もはや約束も忘れて、絶叫した。
絶望的な痛みがケントの頭の中を覆い尽くし、何も考えられなくなった。

「はい、おしまい」

不意に、ミズキが手を離した。
ケントは糸の切れた人形のように、その場に尻もちをついて、両手で股間をおさえてうずくまった。

「頑張ったわね、ケント君。痛かった?」

「あ…あ…」

ミズキが声をかけても、まだ状況が把握できないようで、朦朧とした表情で、宙を見つめている。

「びっくりした? でも、先生が生徒の大切なタマタマを潰すわけないでしょ? 大丈夫よ。ケント君のタマタマは、二つとも無事だから」

ミズキが笑いかけても、ケントは返事をするどころではなかった。
すると突然、ケントの体が大きく震えた。

「あ! ああっ…!!」

自分でも驚いたような表情で、股間をおさえ、前かがみになる。
その直後、ミズキの鼻は覚えのある特徴的な匂いを嗅いだ。

「ん…。これって…」

ケントのズボンの股間をよく見ると、そこには液体で濡れたような染みが、じんわりと広がっている。

「ケント君。キミ、出しちゃったの?」

ミズキはそれが、男の精液の匂いと染みであることに、すぐ気がついた。
しかしケント自身は、自分の体に一体何が起こったのか、よく分かっていないらしかった。
一瞬、今まで感じたことのないような解放感と快感を感じたが、ミズキに握られた睾丸の痛みはまだ残っていて、立ち上がれずにいる。

「せ、先生…。ボク、オシッコもらしちゃった…」

やっとそれだけ、言うことができた。
自分の体の変化に戸惑う少年の表情は、ミズキにとってこの上なく愛らしい。

「ケント君、それは、オシッコじゃないのよ。初めてだったのね。先生が強く握ったから、タマタマがびっくりしちゃったんだわ」

ミズキは、ケントの側にしゃがみこむと、その額を優しく撫でてやった。

「それは、ケント君が大人になった印なのよ。おめでとう」

これまでに経験したことのないほどの痛みと快感を、同時に体験したケントは、戸惑いながらもうなずいた。

「次は、そっちの方も勉強させてあげるわね。また今度、ゆっくりとね。あと、このことは二人だけの秘密よ。もし、誰かに言ったりしたら、分かる?」

ミズキは悪戯っぽく笑って、右手を上げて握りしめる真似をした。
ケントはその意味を察して、あわててうなずいた。

「お利口さんね。じゃあ、一緒に帰りましょうか」

ミズキの手を借りて、ケントはようやく立ち上がった。
痛む睾丸と、精液まみれになったズボンを我慢しながら、教室を出ていった。


終わり。

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