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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


とある中堅の出版社。この出版社が発行している雑誌の一つに、女性向けのファッション情報誌「RAGAZZE」があった。
おりからの出版不況におされて、会社の業績はおもわしくなかったのだが、この女性誌の売り上げだけは水準以上を保っていた。
その功績の最も大きな理由は、若くして編集長に抜擢された三木マナミにあっただろう。

マナミは現在29歳。10代のころからファッションモデルとして活躍し、業界のことを知り尽くしていた。170㎝の長身に、モデル時代から変わらぬスマートな体型。常に最新のファッションをエレガントに着こなしたその姿は、いかにもできる女という印象で、自らが創刊した雑誌を成功に導いたという自信に満ち溢れていた。

女性誌の編集部ということで、マナミの部下たちはほとんどが女性だったが、その中に男性社員が二人だけいた。
石丸シンゴと花田トモヒサは、入社3年目。多少の男手が必要だという「RAGAZZE」編集部に配属されてはみたものの、やらされるのは資料の整理や撮影機材の運搬など、雑用がほとんどだった。
半年が過ぎてもまったく誌面作りに参加させてもらえない二人が、それでも文句を言わなかったのは、彼らが以前参加していた雑誌がすでに廃刊になってしまい、社内のどこにも行き場所がないからだった。

「石丸君。ちょっといいかしら。手伝ってもらえる? あ、花田君も来て」

ある日、いつものように資料整理をしていた二人を、マナミが呼び止めた。
編集長自ら彼らに声をかけるのは珍しいことだったので、二人は緊張しながら、マナミについて行った。
今日のマナミはパンツスーツ姿で、ウェーブのかかった長い髪を揺らしながら、男たちの前を颯爽と歩いていく。キュッと締まったお尻がリズミカルに揺れるのを見ながら、彼らはついて行った。
確か今、会議室で雑誌の新しい企画を決める会議をしていたはず。
そう思っていると、マナミは二人を会議室のドアを開け、二人を入れた。

「さ、入って」

「失礼しまーす」

企画会議は、雑誌の方向性を決める大事な会議だったが、二人はまだそれには参加させてもらっていなかった。
初めて会議室に入ると、そこには編集部の女性たちがずらりと並んでいた。

「今ね、ユウカちゃんが考えた企画について話し合っていたの。ユウカちゃん、二人にも説明してもらえる?」

「はい」

返事をしたのは、石丸たちと同期入社の荒井ユウカだった。
彼女は入社当時からこの編集部に配属され、その優秀さがマナミの目に留まり、部内での信頼はあつい。
すでに企画会議に参加していることから見ても、同期入社の石丸たちとはかなりの差が開いてしまっているようだった。

「今回、私が企画するのは、『今さら聞けないオトコの仕組み』というテーマです。これは、女性たちが普段疑問に思っている男性の体の仕組みなどを検証していこうというもので、聞きたくてもちょっと聞きづらい質問なんかを並べていこうと思っています」

会議室の隅に立たされたままの石丸と花田は、ポカンとしていた。
大学ではそれぞれ野球部とサッカー部に所属しており、以前はスポーツ専門誌を担当していた二人は、女性誌の企画など見当がつかず、興味も湧かなかった。
しかし、普段から自分たちをバカにしている同期のユウカが、含み笑いを浮かべながら企画を説明しているのを見ると、嫌な予感しかしなかった。

「どう? なかなか面白いと思わない?」

「はあ…」

「はい。まあ…」

編集長のマナミが乗り気なようだったので、二人は曖昧にうなずくしかなかった。

「それでね。今、みんなに色々と考えてもらってたんだけど。やっぱり、男性もいた方が分かりやすそうなこともあったのね。だから、ちょっと協力してもらえるかしら?」

「は、はい…」

よく分からなかったが、石丸たちはとりあえず返事をした。

「良かった。それじゃあ、会議を続けましょうか。さっき、何の話をしてたっけ?」

「包茎の話です。仮性包茎とか真性包茎って何?っていう」

石丸たちが思わずギョッとする発言だったが、それを言ったユウカも、聞いている他の女性社員たちも、驚く様子はなかった。

「ああ、そうだったわね。包茎ね。やっぱりこれ、あんまり知られてないものかしら?」

「そうですねー。包茎っていうのは知ってると思うんですけど、仮性とか真性とかは、あんまりって感じじゃないですか?」

「包茎の男性の割合なんかも、面白いですよね。どれがスタンダードなのか、はっきりしないところがありますよ」

「手術するとか、そういうのもよく分からないですよね。結局、知りたいのは包茎の男性とセックスしていいのかどうかっていうところかもしれないです」

この編集部にいるのは20代の女性ばかりだったが、その若い女性たちが包茎について真剣に話し合っているのは異様な光景だった。
石丸と花田は、ちょっと面くらっていた。

「それで、石丸と花田は包茎なの?」

突然、同期のユウカが話を向けてきた。
二人は一瞬、ドキッとしたが、会議室の目がすべて自分たちに集中し、答えを待っているこの状況では、あいまいな返答は許されそうになかった。

「あ、いや…まあ、そうですね…」

「そうですねって、包茎ってこと?」

「は、はい…」

石丸は顔を真っ赤にしていた。

「花田君も? 包茎なの?」

「は、はい…。仮性ですけど…」

マナミに聞かれて、花田もためらいながら答えた。
慌てて、石丸がつけ足した。

「あ、俺も…仮性です。仮性包茎です」

男のプライドに関わることと思い言いなおした石丸だったが、言った後で、それも情けないことに思えてきた。
なぜ、会社の会議でそんなことを報告しなければいけないのか。
女性がほとんどを占めるこの編集部内では、以前から彼ら男の人権はとかくないがしろにされがちだった。

「ふうん。二人とも包茎なんだ。意外ね。それが普通なのかしら?」

「そうですね。よく、男の半分は仮性包茎だと言いますけど、ホントにそうなんですかね」

それは、あくまでも仕事の会議というテンションだった。
雑誌の誌面に必要なデータを集めている、という様子で語り合っている。

「ちょっとはっきりさせたいんですけど。仮性包茎って、皮が剥けてるんですか? 剥けてないんですか?」

「剥けてるんじゃないの? 勃起してるときは剥けてて、小さくなると皮が余るっていうのじゃない? 勃起しても剥けないのが、真性包茎でしょ」

「皮が余るっていうのは、どういう状態なんですかね? 私、勃起したとこしか見たことないから…」

「ああ、それは私も。勃起してるとこしか見たことない」

「そうね。その辺は、どうなの? 説明できるかしら?」

マナミが再び石丸たちを振り向くと、二人は顔を見合わせて、言葉を選ぶようにしゃべりだした。

「まあ…その…。皮が余るっていうのは、アレで…。頭の方にちょっと…」

「二人とも、描ける? あなた達の仮性包茎がどういうものなのか、ちょっと描いて説明してほしいわ」

マナミは回りくどい説明や、分かりにくい表現が嫌いだった。
手っ取り早く理解するためには、絵に描いてもらうのが一番と判断したようだった。

「え? か、描くんですか?」

「そうよ。そこのホワイトボードでいいから、ちょっと描いてみて。毎日見てるものでしょ? 描けるわよ」

マナミ以下、女性社員たちは皆真剣な表情で、仕事という雰囲気を崩していなかった。
このような状況下では、石丸と花田も、仕事として自分のイチモツを絵で描いて説明するしかなさそうだった。
唯一ユウカだけが、下をうつむいて笑いをこらえているような顔をしていた。

「はい…。じゃあ…」

石丸は仕方なしに、ホワイトボードにマジックで描きはじめた。

「えーっと…。これが、その、ペニス…で。先の方が、こうなってると思うんですけど」

「亀頭ね。そこに皮が余ってるの?」

描いている石丸や、脇で見ている花田よりもずっと、女性たちは真剣な目をしていた。

「はい。その、亀頭に皮がこうなってて…」

「なるほど。そんな風に皮が被っているのが包茎なのね」

石丸が描いたのは、亀頭の先までかなり皮が余っているペニスの図で、それが彼の普段の状態であるらしかった。

「はい。でも、勃起したらこの皮は剥けるんです。それが仮性包茎です」

自分のペニスのことなので、石丸は妙に力説してしまった。

「花田君も、そうなの?」

「いや、俺は…。俺のは、もうちょっと剥けてるっていうか…。普段でも、半分くらい見えてます。その…」

「亀頭が?」

「はい…」

へー、と女性たちはうなずいた。
花田にしても、石丸よりもマシだと言いたかったわけだったが、それはそれでかなり恥ずかしいことを告白してしまったことに、自ら気がついた。

「仮性包茎っていっても、程度の差があるのね。それは知らなかったわ」

「ペニスの形も、個人によって違いますもんね。大きさとか関係あるんでしょうか」

「そうね。大きい方が、皮が余らなさそうだわ。石丸君のペニスは、何センチくらいなの?」

「え? いや…測ったことは…。大体、このくらいでしょうか…」

あまりに直接的な質問に驚いたが、編集長であるマナミの目は真剣で、答えないわけにはいかなそうだった。
石丸は手の指を広げて、長さを示して見せる。

「それは、普通の状態で?」

「あ、いや…。普通はこのくらい…です」

石丸の指が半分ほどに縮まった。

「ふうん。花田君は?」

「ああ、いや…自分もそのくらい…かな…」

花田は曖昧にうなずいた。

「ふうん。でも、測ったことがないっていうのも、女性から見れば不思議ね。ほとんどの女性は、自分のバストのサイズなんかを知ってるのに」

「そうですね。ペニスの平均サイズなんかも載せたいですけど、ちょっとデータが足りないかもしれないですね」

女性たちは真剣に話し合っているようだったが、石丸と花田にしてみれば、一刻も早く会議室から逃げ出したい思いだった。


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「じゃあ、次は…。これも面白いわね。『男の急所って、どのくらい痛いものなの?』か。確かに、これは興味があるわ」

マナミが書類を読み上げたとき、石丸と花田は思わず顔を上げた。
これまでの流れから見て、嫌な予感しかしなかったためである。

「男の急所って、つまりは股間のアレよね。確かに蹴られたら痛いとはいうけど、私たちには分からないことだわ」

「はい。テーマは股間の急所なんですけど、どのくらい痛いのか、またどんな風に痛いのか。女性には分からないっていうけど、それは本当なのか。とかですね。詳しく解説できれば、面白くなると思うんですけど」

ユウカは自分の企画を得意げに披露した。
それを聞いたマナミがどのような表情をしているのか。石丸たちにはそれが気がかりだった。

「ということなんだけど。これはもう、あなた達に聞くしかないと思うのよね。股間の急所について。その、金玉っていうのかしら。呼び方はどうしようかしら」

いったん石丸たちを振り向いたマナミは、自分の言葉で気がついたように、また女性社員たちに向き直った。

「アナタ達、普通なんて呼んでる? 金玉とか? タマとか?」

「睾丸とか…タマタマとか、色々ありますね」

「キンタマ…タマキンっていうのも、聞いたことありますね」

「タマタマっていうのが、かわいくていいんじゃないですか?」

「かわいくてもね。冗談っぽくなってしまうわ。睾丸じゃカタすぎるし、難しいわね」

石丸と花田から見れば、女性たちが男の急所である性器について真剣に話し合っている姿が奇妙に思えた。
しかし彼女たちは雑誌の売り上げを伸ばすために、いたって真面目に話しているつもりだったのだ。

「じゃあ、タマにしましょう。竿の方はペニスでいいわ。タマとペニス。それで統一ね」

結局、マナミの判断で呼び名が決まった。
するとまた、「そういうわけで」とマナミが振り向いた。

「タマを蹴られた時の痛みっていうのを、アナタ達、説明できる? 女性の私たちが、分かるように」

「は、はい…」

「それは…」

二人は口ごもった。
彼らも、スポーツをしている時などに股間をぶつけた経験はあったが、狙ってそこを蹴られた経験はなかったのだ。

「いや…その…蹴られたことはないんで…ちょっと…」

「そうなの? タマを蹴られたことがないって、石丸君も一緒?」

「あ、はい…」

マナミと女性たちは、驚いたようにうなずいていた。

「アナタ達、たしか24,5歳だったわよね? その年でタマを蹴られたことがないって、普通なことなのかしら?」

「え…いや…どうでしょう…」

「何かぶつけたこととかはないの? 野球してて、ボールをぶつけたりとか」

「あ、それはあります…」

野球部に所属していた石丸がうなずいた。

「その時はどうだったの? 痛かった?」

「そうですね…。自分はイレギュラーしたボールがぶつかったんですが、すごく痛くて、その日は練習ができませんでした」

「やっぱり、そうなのね」

女性たちから、感嘆の声が上がった。
しかし、その表情には同情や憐れみは見られず、むしろ女性の優越感を無意識に感じているような微笑みすら浮かんでいた。
石丸は、股間にボールを当ててしまった当時、苦しむ自分を介抱してくれた女性マネージャーのことを、ふと思い出していた。
彼女もまた、股間をおさえて呻いている自分に対して、心配しながらもどこか喜んでいるような、微妙な表情を浮かべていたような気がする。

「それで、それはどのくらい痛かったの? 練習できなかったってことは、ずっと痛かったってことかしら? 何時間も?」

「そうですね…。しばらくは立ち上がれなくて…その後も、動こうとすると痛くて、その日はタクシーで家に帰りました」

「へー」と、女性たちは感心しきりだったが、隣で聞いている花田だけが、その痛みを想像して、顔をしかめていた。

「どんな風に痛いの? 足の指をぶつけたときくらい?」

「いやいや」と、石丸は首を振った。

「じゃあ、お腹を殴られたときとか。ボクシングでも、ダウンしちゃうわよね」

石丸はまたしても、首を横に振った。
確かにボクシングではボディを打たれてダウンするときがあるが、10カウントで立ち上がることもある。
もし、ボクサーのパンチが股間に直撃すれば、10カウントどころの騒ぎではない。一撃で気絶してしまうだろうと、石丸と花田は思っていた。

「もっと、ずっと痛いですよ…」

それを聞いた女性たちは、感心とも意外ともつかぬ声を上げた。

「やっぱり、急所っていうだけあるのね」

「そんなに痛い場所を抱えているなんて、ね…」

「タマは内臓の一つだから、内臓を直接叩かれる痛みっていう意見もあるわよね」

「ひどい生理痛みたいな痛みなのかしら…」

女性たちは様々な意見を交わしていたが、そのどれもが、石丸と花田には空々しく聞こえるものだった。
どういう言葉で表現しようとしても、あの痛みはうまく表せるものではない。
その痛みを受けている間は、言葉など出ない。思い出すだけでも、背筋が寒くなる。男の金玉の痛みは、そんな特別なものだということを、彼女たちにどれだけ言っても分からないのだろう。

「でも結局、どういう痛みか分からないのであれば、記事にはできないわね。男にしか分からない痛みっていうのであれば、今までと一緒だわ。そんな記事を見ても、つまらないもの」

やがて意見が出尽くしたころ、編集長のマナミがそう結論付けた。
他の女性編集員たちも、無言でそれに同調しているようだったが、ただ一人納得できなかったのは、ユウカである。
彼女にとっては、自分の出した企画が通るかどうかという話だったから、当然のことだった。

「いや、でも、それをうまく説明することができれば、面白い記事になると思うんですよ。逆に、今までそういう記事がなかったから、私もやってみたいなって思ってて…」

「そうね。でも、どうかしら。すごく痛い、何時間も痛いっていう説明だけじゃね。結局、私たちにはタマがついてないわけだから、想像の話だけになってしまうわ」

「タマがついていない」という点を、今さらながら強調するようなマナミの言葉は、すでに彼女がこの企画に興味を失って、冗談で済まそうとしているかのように聞こえた。
ユウカは必死にならざるを得ない。

「いや、もっと分かりやすく伝えることができますよ。彼らの説明がちょっとアレなだけで…。石丸と花田! アンタたちもさ、もうちょっと協力しなさいよ。分かんないでしょ、それじゃ」

ユウカの仕事への情熱は、同期の男性社員二人への怒りに変わっていた。
ろくに仕事もできないくせに、自分の足を引っ張るなと言いたげだった。

「いや、まあ…。それは…」

「タマを蹴られると、どういう風に痛いのか、ちゃんと説明しなさいってば! タマをぶら下げてるくせに、そんなことも分かんないの?」

石丸と花田は口ごもった。
別に足を引っ張るつもりはないが、普段から明らかに自分たちを見下している彼女の態度を思うと、すすんで協力する気にもなれなかった。

「だって、彼らは蹴られたことがないっていうのよ。それじゃ、無理じゃない?」

「そうね。経験がなければ、説明するも何も…」

「じゃあ、蹴ってみましょうよ。今、ここで!」

「え?」と、石丸と花田は顔を上げた。
まさかと思って、自分たちからは絶対に言うまいと考えていた提案を、ユウカは何のためらいもなく言い放ったのだ。

「あ、そうね。そういうのもアリかしら」

「その手があったわね」

「せっかく男性社員がいるんだし。活用しないとね」

「編集者っていうのは、体を張ってナンボだもんね」

石丸たちが意見を言う間もなく、女性たちは次々に同意していってしまった。
人は、自分たちに絶対に訪れないと分かっている危険であれば、こうも簡単に他人に与えることができるのかと、寒気がする思いだった。
ふとユウカの方を見ると、彼女はしてやったりという表情で、石丸たちを見つめている。

「じゃあ、蹴ってみましょうか。石丸君たちのタマを。せっかくだから、ビデオも撮りましょう。準備して」

「はい」と、女性たちはきびきびと動き出した。

「二人は、大丈夫よね?」

いつもの仕事をしているときと変わらない、余裕のある微笑みを浮かべたマナミに、石丸たちは言葉を返すことができなかった。
さらにその後を追うようにして、ユウカが勝手なことを言う。

「大丈夫ですよ。二人とも、運動してましたから。ちょっとくらい痛くても、雑誌のためですから、我慢できます! ね?」

「いや、それは…」

「まあ、ちょっと…」

二人が顔を見合わせて、口ごもっている間にも、女性たちの準備は着々と進んでいた。




「はい。ビデオ準備できました」

「よし。じゃあ、始めましょうか。どっちからやる? 石丸君? 花田君?」

すでに後戻りできそうもない状況で、男たちの顔に冷や汗が浮かんでいた。
常日頃、雑用ばかりさせられている彼らにとっては、これは雑誌の構成に参加するチャンスのはずだったが、どちらもすすんで名乗り出ようとはしなかった。

「じゃあ、石丸君からね。はい、こっち来て」

「あ…はい…」

マナミに促されて、石丸はがっくりと肩を落とし、仕方なく前に出た。
一方の花田は、少しほっとした様子で、ため息をついた。
それを見逃さなかったのが、ユウカである。

「なに、ホッとしてんの? 順番に蹴ってあげるから、次は花田の番だからね」

「え?」と、思わず驚いてしまった花田の様子に、ユウカだけでなく、周りの女性たちがクスクスと笑い声をあげた。

「じゃあまずは、石丸君の股間のタマを、私が蹴ってみようかしら。カメラ、回ってる?」

「はい」

諦めたように立ち尽くしている石丸の前で、マナミが上着を脱いでかまえた。

「ちなみに編集長は、男のタマを蹴ったことはあるんですか?」

「えー。ドラマとかで見たことはあるけど、実際にはないわね。どう蹴ればいいのかしら。こう?」

そう言うと、マナミはおもむろに右足を石丸の股間に振り上げた。
それは練習のようなもので、まるでスピードの無い蹴りだったが、突然のことで、石丸は大げさに反応してしまう。

「おうっ!」

慌てて腰を引いて、避けた。
男だけが理解できる、本能のような動作だった。

「ちょっと。まだ、蹴ってないわよ。避けないで」

石丸の驚き様に、マナミをはじめ、女性たちはクスクスと笑ってしまう。

「軽く蹴るから、大丈夫よ。大げさなんだから」

「は、はい…」

石丸はうなずいたが、股間に絶対の急所を持つ男として、不安は拭えなかった。頭では懸命に動かずにいようとしても、きっとまた、体が反応してしまうだろうと思った。

「いくわよ。えい!」

「あっ!」

マナミの右足が振り上げられたと思った瞬間、石丸の両手は、反射的に股間を守るために前に出てしまった。
しかし、今度こそ股間に当たると思っていたマナミの脚は、石丸の両手に当たる直前で、ピタリと止まった。

「ほうら、やっぱり。また、避けようとしたわね。ダメよ、石丸君」

どうやら石丸の行動は、マナミの予想通りだったようだ。

「石丸ぅ! アンタ、何やってんの? 実験にならないでしょ!」

「あ、ああ…。すいません…」

ユウカの怒声で、石丸はペコリと頭を下げた。

「まったく。ビクビクしちゃって、情けない。男でしょ? しっかりしなさいよ!」

自分の企画がかかっているユウカにとっては、腹立たしいことだったが、他の女性編集者たちは、正直すぎる男の反応に面白さを感じているのか、クスクスと笑いをこらえているようだった。

「でも、この反応も興味深いわよね。男は急所を守るために、体が反射的に動いてしまうってことでしょ? これをうまく抑えるには…。あ、花田君、ちょっとこっちに来て」

マナミが急に呼んだので、花田は「はい!」と大きな返事をし、石丸もそんな彼の方に顔を向けた。
その瞬間。

ボスッ!

と、石丸の股間に、マナミの蹴りが刺さった。

「うっ!」

石丸は一瞬、何が起こったのか分からなかったが、すぐに首を捻って自分の股間に目を降ろすと、そこにはマナミの履いている紫色のハイヒールの残像が見えた。

「…んん…くっ…!!」

そしてその数秒後、股間から鈍い痛みが徐々に全身に広がっていくのが分かった。
腰から下が痺れたように感覚がなくなり、力が抜けていく。両手で股間をおさえながら、石丸はその場にうずくまってしまった。

「キャー!」

と、女性たちから歓声ともつかぬ叫び声が上がった。

「やっちゃったあ!」

「当たっちゃったね。痛そう!」

低いうなり声を上げながら、苦しむ石丸の様子に、女性たちは盛り上がりを隠せなかった。
先程までは、確かに仕事の一環として男の急所について話し合っていたのだが、いざ、男が股間を蹴られる場面を目の当たりにすると、彼女たちの自制心はどこかに吹き飛んでしまったようだった。
それは女性が本来持って生まれた優越感のようなもので、男性の象徴ともいえる睾丸を打ちのめすことで満たされる快感だった。

「静かに! ちょっとカメラ、こっちに来て」

ひとり、石丸の股間を蹴り上げた当のマナミだけが、真剣な眼差しをしていた。
それに気づいたユウカが、三脚に乗せてあったカメラを素早くはずし、石丸の側に駆け付けた。

「石丸君、大丈夫? ごめんなさいね。ちょっとしゃべれるかしら?」

痛みに歯を食いしばっていた石丸がゆっくりと顔を上げると、その額には大粒の汗が浮かんでいた。
その様子を、カメラはしっかりととらえている。

「苦しそうね。どう痛いのか、説明できる? タマを蹴られて、どう感じたのか、教えてくれないかしら?」

「あ…はあ…その…。痛いです…!!」

実際のところ、石丸はしゃべることも辛そうだった。
しかし、マナミがそんな答えに満足するはずはなかった。

「そうね。痛そうなのは、見ても分かるわ。それで、どう痛いのかしら? どこが、どんな風に痛いのか、教えてくれる?」

せっかく金玉を蹴って、死ぬほどの痛みに苦しんでいるのだから、この機会を逃さずに記録したいというのが、マナミの姿勢だった。
そうでなければ、石丸の今の苦しみさえ無駄になってしまうという理屈だったが、石丸にとっては迷惑以外の何物でもなかった。

「あ…その…今は、腹の下の方が…ぐうっと締めつけられるというか…ガンガン響くというか…」

「お腹をこわしたときみたいな感じ?」

「そう…ですね…。それよりもかなり…。でも、そんな感じです…」

言葉の節々で辛そうな表情を浮かべる石丸を、ビデオカメラが克明に記録していた。
撮影しているユウカは、自分の笑い声まで録音されてしまわないよう、必死にこらえているような顔をしていた。

「お腹が痛いってことは、タマはそんなに痛くないのね?」

「いや…タマも痛いです。すごく痛いです。ジンジンします…」

「あら、そう。それは、そうやって手で抑えていると、よくなるのかしら?」

「ああ、いや…。どうでしょう…。そうかもしれないです…」

「ふうん」と、マナミは感心したようにうなずいていた。
するとカメラを持っていたユウカが、うずくまっている石丸の股間にレンズを向けた。

「今、蹴られて、タマはどんな状態なんですかね? 潰れたとかじゃないと思いますけど。腫れたり、痣になったりしてるんでしょうか?」

「そうね。そんなに強く蹴ってはいないけど、どんな状態になるのかしら。石丸君?」

「え? いや…それは…ちょっと…」

石丸の股間には、痛み以外の感覚はほとんどなくなっている状態だった。
今、彼の両手はしっかりとその睾丸を包み込んでいるが、それも抑えたり掴んだりしているわけではなく、これ以上いかなる刺激も睾丸に与えないよう、優しく守っているに過ぎない。
睾丸がどんな状態になっているのか、その持ち主にさえ分からなかった。

「見るのはさすがにアレだから、ちょっと触らせてくれる? どんな状態なのか、調べてみたいわ」

マナミがそう言うと、石丸は必死に首を横に振った。

「い、いや、ちょっと…! 勘弁してください! まだ、痛くて…」

「いいじゃない。ちょっと触るだけよ。今、自分だって触ってるんでしょ? アナタ達、手伝ってくれる?」

石丸が抵抗する気配だったので、何事も迅速を尊ぶマナミは、すぐさま女性社員たちを呼んだ。
周りを取り囲んで、興味津々に眺めていた女性たちは、喜んで石丸の体に取り付き、抑えつけて、両手を股間から外してしまった。

「どれどれ…」

「うっ!! うう…!!」

おもむろにマナミが股間に手を伸ばすと、石丸の口から声が漏れた。
その反応に、女性たちは思わず含み笑いを浮かべてしまう。

「ああ、これね。ふうん。こんなものかしらね。特に変わった様子はないけど」

マナミの手は容赦なく、石丸の二つの睾丸を弄んだ。
コロコロと掌の中で転がすと、石丸の呼吸は止まってしまう。
 
「まあ、普段のアナタのタマの状態を知ってるわけじゃないけど…。腫れてる感じはしないわね」

「あの…編集長。アタシも触ってみていいですか?」

石丸を取り囲んでいた女性社員の一人が尋ねた。

「ああ、そうね。いいわよ。アナタ達も、参考にして」

睾丸の持ち主である石丸の意志などまるで関係なく、マナミはそう言った。
すると女性たちは、パッと嬉しそうな表情を浮かべ、黄色い声を上げながら、次々と交代に、石丸の股間を触り始めた。

「あー、これかぁ。ちゃんと触るの、初めてかも」

「なんか、タマゴみたい。プニプニしてる」

「あー、アタシの彼のより、大きいかなあ。大きい方が痛いのかしら」

女性たちは仕事以上に個人的な興味で、石丸の睾丸を交互に触り続けた。
彼女たちの手が容赦なく睾丸を握るたびに、石丸は悲鳴のような短い息を漏らしていたが、それも女性たちの歓声に紛れて、顧みられることはなかった。

「あ、私も触らせてください」

最後に、女性たちの中では一番年下のユウカが手を挙げた。
撮影していたビデオカメラを預けて、すでにぐったりしきっている石丸の股間に手を伸ばした。

「あ、これですねー。うーん。そうかあ。これが石丸のねえ…。これが痛いんだあ」

ユウカの手の動きは、他の誰よりも容赦がなく、強力だった。
石丸は、再び訪れた重苦しい痛みに、唸り声を上げる。

「前に護身術か何かのテレビを見たとき、蹴れない時は握り潰せっていうのがあったんですけど。握っても痛いんですかね?」

「そうね。タマを握り潰すぞっていうのは、映画とかでも言ってたりするわね。痛いんじゃないかしら?」

「ちょっと試してみますね。あ、カメラお願いしまーす」

そう言うと、ユウカは石丸の睾丸を握る手に、ぐっと力を込め始めた。
ユウカの手の中で、睾丸は圧迫され、蹴られた時とはまた違う痛みと恐怖が、石丸の体を支配し始めた。

「う…うがぁぁっ!!」

思わず飛び起きそうになったが、女性たちは数人がかりで、しっかりと石丸の体をおさえていた。

「え? ちょっと…。まだ、そんなに力入れてないから。大げさー」

ユウカはその言葉通り、ニコニコと笑う余裕さえあるようだった。
しかし石丸の股間に走る痛みは、まぎれもなく生命の危機を感じるものだった。
ユウカの手は睾丸の一つをしっかりとおさえ、親指と人差し指、中指の三本で挟むように握りしめている。
親指をグリグリと押し込むように動かすと、その痛みは倍増するようで、石丸は情けない悲鳴を上げて苦しんでいた。

「ひいっ!! ああっ!!」

「ちょっと、石丸君。さっきよりも痛いのかしら? どう痛いの? さっきとは違う痛みなの?」

「ち、ちが…はっ…!! いた…い!!」

もはや言葉にもならない石丸の悲鳴に、女性たちはクスクスと笑い声を上げた。

「なんだか、よく分からないわね。さっきよりも痛そうな顔はしてるけど」

「うーん。なんで、こんなのが痛いかなー。肩揉みみたいで、気持ちよさそうだけど。グリグリグリーっと」

ユウカはふざけて、その指に一層の力を込めた。
すると、石丸は背中を反りかえすように体を硬直させ、痙攣し始めた。

「はっ…!! かはっ…!!」

目玉が飛び出さんばかりに見開かれていたが、今にも白目をむきそうだった。

「あれ? 石丸? どうしたの?」

ユウカが手を離してやると、硬直して宙に浮いていた石丸の腰が、音を立てて床に落ちた。

「おーい。石丸―?」

パンパンと、軽く股間を叩いてみても、石丸はビクビクと震えるのみで、何の反応も示さなかった。

「なに? 気絶しちゃったの?」

マナミが顔を覗き込むと、石丸の口からは、涎と共に白い泡のようなものがこぼれていた。

「ちょっと、石丸君?」

その頬を軽く叩いてみると、やがて意識を取り戻したように、ビクリと体を震わせた。

「あ…? ああ…」

虚ろな目を走らせて、周囲の状況を確認しようとする。どうやら一時的に、意識が飛んでいたようだった。
多少は心配していた様子のユウカも、これを見て、安心したようにため息をついた。

「なーんだ。びっくりさせないでよね」

ポンと、ほんの軽く、手元にあった石丸の股間を叩いた。

「あうっ!!」

しかしその一撃が、石丸を再び地獄の底へと突き落とした。
朦朧としていた意識が覚醒され、体が再び痛みを感じるようになったようだった。
体を押さえつけていた女性たちの手が緩んでいたため、石丸はあっという間に背中を丸めて、両手で股間を守るように抑えた。

「プッ…。アハハハハ! ちょっと、痛がり過ぎでしょ。アハハハ!」

石丸のあまりの痛がりように、ユウカが笑うと、周りにいた女性たちも一斉に笑い始めた。

「軽く叩いただけじゃない。アハハハ!」

「そんなに痛いのかなあ」

「面白―い。ハハハハ!」

女性たちの笑いの渦の中で、石丸は心から、女は恐ろしいと思っていた。
最後に軽く叩かれたことが痛いのではなく、金玉の痛みは短い時間ではどんどんと蓄積していくということが、彼女たちには想像もつかないようだった。

「フフフフ。もういいわよ、そんなに大げさにしなくても。石丸君の仕事は終わり。お疲れ様」

マナミはそう言うと、初めて石丸に笑いかけた。
その言葉を聞いた石丸は、理解するのに数瞬かかったが、ようやくこの悪夢のような実験から解放されたと悟ると、床に寝転んだまま、がっくりとうなだれた。




「ビデオは撮れたかしら?」

「はい。バッチリです!」

ビデオカメラを持っていた女性社員が、うなずいた。

「そう。後で石丸君にもビデオを見てもらって、どういう痛みだったのか、もう一度考えてもらいましょう。なかなか面白かったわ」

石丸が股間を痛めつけられている間、生きた心地のしなかったのは、もう一人の男性社員、花田であった。
彼だけが、この空間の中で石丸の受けている苦しみを理解できているはずだったが、かといって女性たちを止めることもできず、ただ、立ち尽くしていることしかできなかった。
しかし石丸の悲鳴を聞くたびに、花田も自分の股間に、ギュッと締めつけるような違和感を感じていた。
これから、どういう方向に女性たちの話が進んでいくのか、気が気ではなかった。

「まあでも、やっぱりよく分からない痛みだっていうのが、正直な所ね。ひどい腹痛の時みたいな痛みってことらしいけど。花田君は、どう思った?」

マナミの言葉に、女性たちの視線が花田に集中した。
花田はうろたえながら、必死に自分の身にもこの実験が及ばないようにと考えた。

「あ…その…自分は…。なんというか…目の前が真っ暗になるような…。体中から力が抜けて…気持ちが沈んでいくような…。そんな感じだと思います」

自分でも思いもよらなかったほど、詩的な表現が口から飛び出した。
すぐ横で石丸が金蹴りをされ、睾丸を握り潰されそうになったのを見て、苦い痛みの記憶が蘇ったのかもしれなかった。

「…ふうん。気持ちが沈んでいくような感じね。それは、何かいい表現のような気がするわね。分かりやすいわ」

「なんか、落ち込んだ気持ちになるんですかね。実際、ぐったりしてるし」

女性たちは、床の上でいまだに激しい痛みと戦っている石丸を見下ろして、納得したようにうなずいた。

「うーん。そうねえ…。ちょっと、アナタ達」

するとマナミは、何か思いついたように、ユウカを含めた女性社員たちを数人集めた。
彼女たちは花田に背を向けて、何か小声で打ち合わせをしているようで、それが終わると、全員がにこやかな笑顔を浮かべて、花田に近づいてきた。

「ねえ、花田君」

「え? は、はい…」

花田は、何が始まるのかと思い、警戒して体を強張らせた。

「次はね、男性の体の特徴について調べてみたいと思うんだけど。特にその、筋肉とか、逞しさについてね。協力してもらえるかしら?」

「あ…は、はあ…」

もう金玉への実験は終わったのかと思い、花田は少しほっとした。
しかし、いつの間にか女性たちにぐるりと囲まれている状況に、やはり警戒してしまう。

「まずは、腕の筋肉を見せてもらうかな。ちょっと、上着を脱いで。ほら」

ユウカが、花田のスーツのジャケットを、半ば無理矢理脱がせてしまった。
学生時代、サッカー部に所属していた花田は、現在でも仲間とフットサルなどを続けており、その肉体は一般的な男性よりもかなり逞しいものだった。

「うわぁ、すごーい。胸板、厚いのねぇ。気づかなかったわ」

「腕も太いんだぁ。へー」

女性たちは声を上げながら、無造作に花田の体を触った。

「え!? ちょ、ちょっと…」

最初のうちは花田も抵抗していたが、女性たちがあまりにも触ってくるため、徐々にそれが心地よくなってきた。
久しく恋人のいない花田にとっては、女性たちの体温と香水の匂いが、ちょっと理性を失わせるくらい官能的なものに感じられた。
ズボンの中で、少しずつ股間のモノが大きくなってくるのを感じた。

「ねえ、ちょっと力こぶ作ってみて。堅いんじゃないの? ほら、両手で」

そう言われて、花田は両腕をあげて、力こぶを作って見せた。

「ねえねえ、太腿もすごいわよ。さすが、サッカー選手。ちょっと、力入れてみて。グッて」

言われたとおり、少し足を踏ん張って、グッと力を入れる。

「すごい筋肉! マッチョなんだぁ」

「ホント、すごーい!」

「そ、そうですか? そんな…」

自らが鍛え上げた肉体を見せびらかし、それを取り囲む女性たちが、褒め称える。それは男にとって、何よりも優越感を感じる瞬間だった。
花田の顔にも、自信に満ちた笑みが浮かんだ。
その瞬間。

ゴスッ!!

と、正面に立っていたマナミの膝が、花田の股間にめり込んでしまった。

「はうっ!!」

目を大きく見開いて、口がポカリと開いた。
目の前にいたマナミが、嘲るような笑いを口の端に浮かべたのを見ながら、花田はゆっくりと崩れ落ちていった。

「はあっ…!! うう…!!」

まず、股間に走った鋭い痛みは、花田の体全体から力を奪う。そして前のめりに倒れ込んだ後に襲ってくるのは、腰全体に響くような鈍痛だった。
鈍く重苦しいが、その痛みは、刺すように鋭く、体全体に広がっていく。矛盾しているようだが、そんな表現が一番適当なのかもしれない。まるで、股間に太い釘を打ちこまれ続けているような、そんな痛みだった。

「あぐぅぅ…!!」

花田は両手で股間をおさえて、海老のように丸くなり、両脚でバタバタと宙をこいだ。
先程まで威容を誇っていた彼の筋肉は、哀れなほどに収縮し、痛みに震えることにしか用をなさなかった。

「うん。どうだったかしら?」

自らの行動と、その結果に満足するように、マナミはうなずいた。振り向いて、ビデオカメラを持った女性社員を確認する。

「バッチリ撮れました。股間のアップもOKです!」

「そう。よかった。たぶん、大きくなってたと思うけど、どうだった?」

「なってましたよ。コイツ、今彼女とかいないんで、楽勝でしたよね」

ユウカがそう言うと、周りの女性社員たちもうなずいた。

「うん。すぐ大きくなってましたよね。ズボンの上からでも分かりました」

「ちょっと褒めると、すぐ調子に乗って。男って、ホント単純ですよね」

まるで汚いものでも見るかのように、女性たちは足元でうずくまる花田を見下ろしている。

「そうね。これだけ単純だと、こっちもやりやすいわ。それで、今はどうなってるのかしら…。花田君、ちょっとごめんなさいね」

マナミは花田の側にしゃがみ込むと、その股間に手を伸ばした。
今は指一本、自分の意志で動かすことのできない花田は、激痛を発する股間を触られることに恐怖を感じたが、どうすることもできなかった。

「ああ、今は…小さくなってるみたいね。ふうん。やっぱり、興奮もおさまるのね。これが、気持ちが沈んでいくってことかしら?」

花田の顔を覗き込むと、うつろな目をしたまま、わずかにうなずいていた。

「ちょっと、花田。編集長が聞いてるでしょ。ちゃんと返事しなさいよ」

ユウカにそう言われても、何も反応することができない。
痛みに震えながら、下から見上げていると、パンツスーツに包まれた女性たちの股間がよく見えた。
その股間はすっきりとしていて、何も余計なものはついておらず、今の花田にとっては、それが心から羨ましく、妬ましく思えた。

「まあ、いいわ。今回はこれくらいにしときましょう。なかなか面白かったわね」

満足そうにうなずくマナミに、他の女性社員たちも同調していた。

「あ、編集長、それで…」

一人ユウカだけが、自分の企画が通るかどうか、不安そうな目で見つめている。
するとマナミは、ユウカに向かって微笑みながら言った。

「ユウカちゃん。アナタの企画、なかなか面白そうなんじゃないかしら。すぐには無理かもしれないけど、もっと詰めて、話し合ってみましょう」

ユウカの顔に、パッと笑顔が広がった。

「あ、ありがとうございます!」

「考えてみれば、ウチにはせっかく男性社員がいるんだから、いろいろ手伝ってもらわないと損よね。今日はいきなりだったけど、今度はきちんと計画を立てて、調べさせてもらいましょう」

「はい! でも、あの…どんなのがいいでしょうか?」

「そうねえ」

と、マナミは金玉を抑えながら、痛みに呻いている男たちを見下ろした。

「まあ、オトコの体の仕組みってことだから…。とりあえずは、全部見てみないとね。まずは、それからね」

「は、はい!」

ユウカはやる気に満ち溢れた目で、うなずいた。

「石丸君と花田君も、よろしくお願いね」

その言葉は、二人の耳に届いていたが、返事をすることはできなかった。

「ちょっと、返事は!」

ユウカの厳しい言葉が飛ぶと、ようやく二人は、わずかに首を動かしてうなずくことができた。
石丸と花田の災難は、まだまだこれからのようだった。



終わり。


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