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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


水泳部の男子といえば、日に焼けた黒い肌と、引き締まった筋肉。肩幅の広い、逆三角形の肉体美が、いかにも男らしいといえる存在だろう。
さらに極端に面積の狭い、「Vパン」と呼ばれるビキニタイプの水着を彼らがはいたときなどは、その股間の膨らみが強調されて、ある意味で非常に男を感じさせるようになる。
この高校の水泳部にも、そんな男らしい部員たちが集まっていた。

「そのまま、全員動かないで!」

ガラリ、と更衣室のドアをいきなり開けたのは、女子水泳部の部長、アオイだった。
部活が終わり、濡れた体を拭いて、今まさに着替えようとしていた男子部員たちは、驚いて一斉に振り向いた。

「な、なんだよ! いきなり開けるなよ!」

競泳水着に手をかけてさえいた男子水泳部の部長、タツヤは、あわてて水着を引き上げた。

「うるさい。黙って。そのまま動かないで」

すでに水着を着替え、ジャージ姿になっていたアオイは、厳しく冷たい調子で男子部員たちを制した。
その様子に、男子たちは思わず口をつぐんでしまう。
男子水泳部には、アオイに逆らってはならないという、絶対のタブーがあったのだ。

「ちょっと、調べさせてもらうから」

そう言うなり、ロッカーに積まれた男子部員たちのスポーツバッグの中身を、遠慮もなくあさり始めた。
これには全員、驚いてしまう。

「お、おい! なんだってんだよ! お前、勝手に…」

見かねた男子の一人、キョウヘイが、アオイの肩に手をかけた。
彼女が今まさにあさっているのは、彼のスポーツバッグだったのだ。
しかし。

「はうっ!」

返事をする代わりに、アオイは得意の金蹴りを、キョウヘイの股間に叩き込んだ。
冷たいプールで泳ぎ、キュッと引き締まっていたキョウヘイのVパンの股間は、アオイの足の甲によって哀れなほどにその形を変えた。
当然、キョウヘイはすぐさまその場にうずくまり、痛みに震えることになる。やはり彼女には逆らってはならないと、その場にいる男子全員が再確認した。

「動かないでって言ったでしょ」

まるで当然の報いだとでも言わんばかりに言い放ち、そのままスポーツバッグをあさり続けた。
男子全員、うずくまるキョウヘイの介護もできずに、突っ立っているしかなかった。

「な、なんだよ! どういうことか、説明しろよ!」

部長のタツヤが、いくぶん声を震わせながら、それでも勇気を振り絞って尋ねた。
アオイがキッと振り向くと、思わずその場にいた男子全員が、股間に手を当てて急所を守ってしまう。

「女子の更衣室に、泥棒が入ったのよ。一年生の着替えが盗まれてるの。部活に来る前はあったっていうし。だから、調べさせてもらってるの」

タツヤをはじめ、男子部員たちは呆気にとられた。
それは、自分たちが女子の着替えを盗んだと疑われているということだったからだ。
いくら思春期の男子高校生とはいえ、そんな犯罪行為をするわけがないと、彼らは叫びたかった。

「それは…お前、そんなこと…!」

怒りのあまり、タツヤはうまく言葉が出なかった。アオイの胸ぐらを掴んでしまいそうになる欲求を、かろうじてこらえていた。

「やってないって言うの? じゃあ、いいじゃない。ちょっと調べるくらい。協力してよね」

「な…! か、勝手にしろ!」

これが他の女子だったら、男のプライドにかけてやめさせるところだったが、相手はアオイだったのだ。
彼女に股間の急所を蹴り上げられた男子は、水泳部のほぼ全員。同じ学年の男子にも、相当数いただろう。学校の不良生徒でさえ、アオイに対してはうかつなことはしないといわれていたから、タツヤが大人しく従ったのも、当然といえた。


そして10分後。
男子全員のスポーツバッグをひっくり返して調べたが、何も出てこなかった。

「…ふうん。無いみたいね。アンタたちじゃなかったんだ」

「あ、当たり前だろ! オレたちが、そんなことするわけないじゃないか!」

「うん。まあ、今回は見つからなかったけど、覚えておきなさいよ。アタシたちは、いつでも見張ってるからね」

まったく悪びれる様子もないアオイに、タツヤの怒りは沸騰した。

「お前、ふざけんなよ! 謝れよな!」

怒りのあまり、アオイの肩を掴んでしまったが、すぐに自分が何をしているのかを悟り、そのままタツヤの動きは止まった。
泥棒に疑われた屈辱と、急所を蹴られる恐怖がせめぎ合い、額に汗を浮かべるほど緊張していた。

「…そうね。さすがに今回は、アタシが悪かったかな」

アオイは、タツヤが自分の肩に手をかけたのを気にする様子もなく、意外にも自分の非を認めた。

「でもさ。男子には、前科があるからね。疑われてもしょうがないところもあるんじゃないの?」

言いながら、肩にかかったタツヤの手首を握った。アオイがその気になれば、今すぐにでも膝の一撃で、タツヤに地獄の苦しみを味わわせることが可能だった。
彼女の言う前科とは、タツヤたちより一年上の先輩たちが起こした事件のことで、当時の男子水泳部員たちが、女子更衣室から数点の下着を盗んだことがあったのだった。
それはすぐに発覚したのだが、県大会を間近に控えた水泳部のことを考え、男子と女子の部長同士による話し合いの末、公にされることはなかったのだった。
しかし、その話し合いののち、盗みに加担した先輩たちが、しっかりとけじめをつけさせられたことを、タツヤたちは知っていた。そして、そのけじめの先頭に立ったのが、アオイであることも漏れ聞いていたのだ。

「アイツだけは怒らせるな」

と、2日間学校を休んで、その後も股間をかばうような歩き方をしばらく続けていた先輩の言葉は、今でもタツヤの耳に残っている。

「あ、あれは…俺たちは関係ないだろ。一緒にするなよ」

「だといいけどね。念のため言っとくけど、もし今度アンタたちがあんなことしたら、タマを蹴るくらいじゃすまないから。最低一個潰すからね。覚えておいてよ」

「つ、潰すって…」

眉一つ動かさずに言い放ったその迫力に、タツヤは思わず肩にかけていた手を引いた。

「当然でしょ。二回目なんだもん。去年は先輩だったから手加減してあげたけど、アンタたちはそうはいかないからね」

その場にいる男子全員、水着の中のイチモツがキュッと引き締まるのを感じた。
中には無意識に内股になってしまった者もいる。アオイの金蹴りを想像しただけで、あのどうしようもない痛みと苦しみがよみがえってくるようだった。
アオイはそんな男子たちの情けない様子を見て、ちょっと笑ったようだった。

「じゃあね。お疲れ様」

更衣室の扉が閉まった時、その場にいる全員が、ほっとため息をついた。




「あ、あの…先輩…」

アオイという男にとって最悪の怪物が去った後、少し放心状態に陥っていたタツヤに、一年生のユウジが恐る恐る声をかけた。

「あ…? ああ。なんだよ」

「あの…その…よく分からないんですけど…。もしかすると、その…」

ユウジは大人しいタイプで、いつも自分から話をしてくる方ではなかったが、今回は何か言いにくそうにしている。

「これ…あの…部室の前で拾ったんですけど…。あの…隠してたわけじゃなくて…分からなかったので…。でも、たぶん…」

「はあ?」

ユウジは自分のジャージのポケットから、何かを握りしめて取り出した。
タツヤがそれを受け取ると、折りたたまれていたそれは、すぐに掌の中で広がった。

「!! お前、これ…!」

それは、真っ白な女物のパンティーだった。タツヤをはじめ、男子全員が、それこそがアオイが探していたものだと直感する。

「い、いや…違うんです…! ボクが盗ったとかじゃなくて…拾ったんです。更衣室の前に、落ちてたから…。何だろうと思って、拾ったんです。でも急いでたから、ポケットにしまってて…それで…」

男子全員、顔から血の気が引いていた。
ユウジが下着を盗んだり、ウソをつくような人間ではないことは、皆知っている。しかしこの状況で、さきほどのアオイに、そんな話が通じるのかどうか。おそらく、いや確実に通じないだろう。
女子更衣室は、男子更衣室と壁一枚隔てた隣にある。
とりあえず、このことを悟られないように、部員全員が小声になっていた。

「ど、どうすんだよ…。それ…。返しに行ったって、信用してもらえないぞ…」

ようやくアオイの金蹴りのダメージから回復しかけたキョウヘイが、まだ下腹を押さえながら言った。

「だな…。俺ら、最初っから犯人扱いだったからな」

「…タマ、潰すって言ってたな…」

男子更衣室に、沈黙が流れた。
アオイの言葉が脅しでないことは、男子全員がよく分かっていた。

「す、すいません! ボクが悪いんです! ボクが拾ったりしなければ…。ボク、それを返して、謝ってきます。蹴られるかもしれないけど…。自分の責任ですから…!」

ユウジが泣き出しそうな顔で頭を下げた。真面目な彼らしい言葉で、おそらく本気でそう思っているはずだった。
キョウヘイや他の男子部員たちも、そんなユウジを止めようとはしない。彼らも皆、アオイに一度は金玉を蹴られていて、その恐怖が頭に残っているのだ。

「いや。ちょっと待てよ」

ユウジがタツヤの手からパンティーを取ろうとしたとき、他ならぬタツヤがそれを制した。

「お前が今、行ったって、アイツが信用するわけないだろ。先輩に脅かされたとか何とか、俺たちのせいにするに決まってる」

タツヤの言うとおりだった。
ユウジの性格が大人しく、真面目なことは水泳部の皆が知っている。
そんな彼が下着泥棒をするはずがないし、本人がそう言ったところで、先輩から言わされていると考えるのが当然だった。

「じゃあ、どうすんだよ…?」

「いっそのこと、捨てちまえば…。分かんないように」

そう考えるのも当然だったが、タツヤだけは、何か考えているような顔をして、黙っていた。

「…いや、これはある意味、チャンスだろ。アイツが今後、俺たちに手出しできないようにしてやる」

「はあ?」

「そもそも、アイツは俺たちをなめてるんだよ。だから証拠もなく、俺たちの荷物を漁ったりするんだ。そんなの、許せるか? 俺は許せないぜ」

「そ、そりゃあ、そうだけど…」

「だろう? だから、コレを使って、アイツが反省するようにしてやるんだよ。コレが女子更衣室から見つかれば、アイツはちゃんと調べもしないで、俺たちを疑ったってことになるだろ。そしたら、アイツもちゃんと頭を下げて、俺たちに偉そうな態度をとれなくなるってわけさ」

「ああ、そういうことか…」

キョウヘイなどは納得したようにうなずいていたが、男子部員のほとんどは、そんなにうまくいくものかと思っていた。
今、タツヤが持っている女子の下着を、どうやって女子更衣室に持ち込むというのだろう。
ユウジがそれを尋ねると、タツヤはちょっと考えた後、ニヤリと笑った。

「明日は土曜日だよな…。部活も休みだ。ちょうどいいや。俺に任せとけ」

男子水泳部員たちは、タツヤの自信ありげな顔に頼もしさを感じると同時に、同じ量の不安も感じつつあった。



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週が明けて、月曜日の放課後。
水泳部の男子たちが、更衣室で着替えをしていた。

「なあ、タツヤ。あの…アレ、どうしたんだ?」

「ん? ああ、あの、女子更衣室のアレか? まあ、うまくやっといたから、心配すんなよ」

タツヤはすでに、あのユウジが拾った女子のパンティーを手元に持っていない様子だった。
いぶかしそうに見つめるキョウヘイに、笑顔で説明してやった。

「土曜日にな、俺、学校来たんだよ。更衣室に忘れ物しましたって。ここの鍵を借りる時にさ、ついでに女子更衣室の鍵も借りといたってわけさ」

「あ! じゃあ、お前、中に…?」

「おう。ちょっと緊張したけどな。誰もいなかったから、さっと入って、ロッカーの隙間に入れといたよ。すぐには見つからないかもしれないけど、逆にその方がいいからな」

タツヤは意外なほど周到かつ大胆に、それをやってのけたらしかった。

「お前、すげえな…。尊敬するよ」

「ハハ。大げさだな。まあこれで、アオイのヤツも大人しくなるんじゃないか。アイツが何も言わなくても、そのうち、こっちから探りを入れてみようぜ。そういえば、アレ、どうなったって」

「そうだな。そうすれば、俺たちに謝ってくるかもな」

「そういうこと。アイツももう、俺たちを前科者扱いしなくなるってことさ」

タツヤの顔には、自信が溢れていた。
確かに、彼の計画通りに行けば、あのいつも男子を見下していて、躊躇いもなく男の股間を蹴り上げてくるアオイを、ぎゃふんといわせることができるはずだった。
キョウヘイ他、男子の水泳部員全員が、それを期待していた。

やがて部活が始まり、水泳部は男女とも、いつも通りの練習をした。
その途中で、アオイが下級生の女の子とプールサイドで何か話をしているようだったが、タツヤを含め、ほとんどの男子部員が、それに気がつかなかった。

「よーし。これで終わり。お疲れ様―」

あたりも暗くなり始めたころ、部活動の時間が終わった。
タツヤの号令で、男子水泳部員たちは練習をやめて、次々にプールサイドに上がり始めた。

「ふー。今日も疲れたなあ」

体中から水滴を滴らせながら、男子部員たちは部室に向かう。
男子更衣室のドアを開けると、そこにはいつ入ったのか、先程までプールにいたはずのアオイが、水着姿のまま、腕組みをして立っていた。

「え! あ、なんだよ…?」

タツヤは思わず、声を上げてしまうが、アオイは無言のまま、男子部員たちを見つめていた。
すると彼らの後ろから、彼らを更衣室に押し入れるようにして、女子部員たちが迫ってきた。
彼女たちもまた、無言のままグイグイと男子たちの背中を押すものだから、その雰囲気に負けて、男子たちは更衣室に詰め込まれるかたちになってしまった。

「ちょっ…。なんだよ、どういうことだよ!」

「閉めて」

アオイが言うと、男子たちの背後で、ピシャリと更衣室のドアが閉められ、鍵がかけられた。
せまい男子更衣室の中に、水泳部員全員が入る形になった。

「おい、お前ら…!」

女の子たちの意味不明な行動に、痺れを切らしたキョウヘイが叫ぶと同時だった。

ピシャッ!

と、アオイの足の甲が、濡れたキョウヘイの水着の股間を蹴り上げた。

「はうっ!」

ビキニタイプの競泳水着一枚に包まれただけの、キョウヘイの男としての最大の急所が、グニャリと変形した。
キョウヘイの頭は、すでに何度も経験しているあの痛みが、数瞬後にまた訪れることを速やかに悟った。
蹴られた瞬間の痛みは、まだ我慢できる。我慢できないのは、その直後に襲ってくる、内臓を突き上げるような、あの重苦しい痛みなのだ。
その痛みは二つの睾丸から発せられて、腰を突き抜け、胃を震わせ、喉元まで上がってくる。
キョウヘイが吐き気を感じ始めたときには、すでに両膝から力が抜けて、立っていられることもできなくなっていた。

「ううぅ…!!」

股間をおさえ、その場にうずくまってしまったキョウヘイを見て、男子たちは戦慄し、女子部員たちは、心なしか嘲笑っているかのような笑みを浮かべていた。

「お前…! いきなり、何すんだよ!?」

「…アンタたちの荷物を調べたのが、先週の金耀だったよね。あのときは、何も見つからなかったけど…」

アオイはタツヤの質問には答えず、彼の顔を見つめながら、淡々と話し始めた。

「あの時、言ったよね。今度は許さないよって。蹴るぐらいじゃすまないって」

「あ、ああ…まあ…。ていうか、アレはどうなったんだよ。見つかったのか、その、下着は?」

突然のことに、タツヤをはじめ、男子部員たちは驚くことしかできなかったが、なんとか当初の計画通り、アオイに盗まれた下着のことを問いただすことができた。
しかしアオイや他の女子部員たちも皆、眉一つ動かさずに、それを聞いていた。これはタツヤたちにとって、まったく予想外のことだった。

「ああ、あの下着ね。見つかったよ。さっき。女子更衣室のロッカーの隙間に落ちてた」

「あ…そ、そっか。良かったな、見つかって…。ていうか、それならなんで…」

「でもアタシさ、下着って言ったっけ? 着替えとしか言ってないと思うんだけど」

「え…!? あ、いや…俺…下着って言ったっけ? 着替えっていうから、そりゃあ、下着のことじゃないかと…」

タツヤの全身の汗が、一気に冷たいものに変わっていった。
やや上目がちに、冷たく厳しい視線を浴びせてくるアオイから目をそらしたくても、できなかった。

「着替えが盗まれた後、探しても全然見つからないから、やっぱり泥棒の仕業だと思ったわけ。それで、その話を一年生のコが親に話したら、そのコの家が電気屋さんでさ。監視カメラを付けてあげようってことになったの。それが、土曜日の朝の話」

アオイの話を聞いて、タツヤの心臓の鼓動が急激に早くなっていった。

「さっそくつけてもらって、とりあえず試しに動かしてみたんだけど…。バッチリ映ってたんだよね、犯人の姿が。気づかなかったでしょ? カメラがあるなんて」

「あ…いや…それは…」

タツヤの口だけがパクパクと動いて、言葉が出なかった。
焦りのあまり、後ずさりしようとすると、その両脇を、おもむろに女子の水泳部員二人が掴んだ。

「あっ…!」

タツヤがアオイから目をそらした瞬間、それを待ってましたとばかりに、アオイの蹴りが股間に向かって振り上げられた。

ピシィッ!!

と、思いのほか高い音と共に、タツヤの金的はアオイによって蹴り上げられた。
キョウヘイの時と同じように、競泳水着に包まれたその男のシンボルは、アオイの小さな素足によって射抜かれ、衝撃の波は、内部にあるはずの二つの睾丸をブルンと震わせた。

「うっ!!」

タツヤの目には、アオイの右足が自分の胸のあたりまで振りぬかれたように見えた。そしてその脚が下がると同時に、タツヤの両脚からも力が抜けて、その場に跪き、やがて睾丸を万力で締め上げられるような痛みが襲ってきた。

「ぐぐ…! あぁっ…!!」

両手で股間をおさえて、奥歯をかみしめてみても、一向にその痛みが治まる気配は無い。
先程、股間を蹴られたキョウヘイと同じように、まるでアオイに土下座するかのような姿勢で、無限とも思える地獄のような時間に耐えることしかできなかった。
しかし、蹴った当人のアオイは、眉一つ動かさずに、その様子を見下ろしている。

「おーい、まだだぞぉ。立ちなって」

そう言うと、女子たちに目配せして、痛みに震えるタツヤの両脇を抱え上げさせた。
タツヤの両脚にはまったく力が入らず、自力で立つことは不可能だったが、女の子が3人がかりで彼の体を支えた。




「は…あ…。な、なにを…!」

とめどない痛みに苦しみながらも、タツヤは恐怖に顔をひきつらせた。

「まったく、まんまと騙されたって感じだよねえ。あの時、どこに隠してたわけ? 気づかなかったなあ。でもそれを、わざわざ返しに来て見つかるなんてね。やっぱり男子は頭悪いっていうか、油断してるっていうか。バカだよねえ」

アオイが言うと、周りにいる他の女子たちも、その通りだとばかりにほくそ笑んだ。

「あ…! ち、違うんだ! アレは、ウチの一年生が拾って…。俺はただ、それを返しに行っただけなんだ…。だから…!」

「はあ?」

アオイは一瞬、理解ができないといったような表情をして、女子たちと顔を見合わせた。
そして次の瞬間、タツヤの股間に手を伸ばし、下から思い切り握りしめた。

「ぎゃあっ!!」

すでに痛めつけられたタツヤの睾丸は、さらなる痛みをもってその持ち主に危険を知らせた。
アオイの握力はさほど強くもないが、ゴロゴロと二つを擦り合わせるように睾丸を握られると、男にとってはこれ以上ない苦しみとなる。

「あ…ああぁ!!」

「この期に及んで、くだらないウソついてんじゃないよ! しかも、後輩のせいにするとか。アタシ、そういうのが一番嫌いなの。男らしくない! タマついてんじゃないの? これは飾りなの?」

「ああっ!!」

タツヤは必死に首を横に振った。

「あっそう! これ、偽物じゃないんだ。アンタも一応、男なんだね。でも、アンタみたいなヤツは男らしくないからさ、これも潰してあげるよ。そういう約束だったしね。いいでしょ?」

タツヤは涙目になりながら、必死に首を振る。
弁解しようとしても、あまりの痛みに息が詰まってしまい、声にならなかった。

「あ…ご…め…! ごめ…なさい…!」

「フン!」

タツヤの必死の願いが通じたのか、アオイは股間から手を放してやった。
しかし安心する間もなく、次の瞬間には、アオイの白い膝が股間の膨らみにめり込み、タツヤは腰が一瞬宙に浮くほどの衝撃を受ける。

「はうっ!!」

もはや、悲鳴も上げられなかった。
女子たちが抱えていた両脇を解放してやると、タツヤの体はグニャリとその場に崩れ落ちて、更衣室の床の上を、釣り上げたばかりの魚のように痙攣しながら転がりはじめた。

「ったく。バッカみたい」

その様子を、アオイはみすぼらしいものでも見るかのような目で見おろし、周りにいた女子水泳部員たちも、タツヤのあまりの痛がりように、クスクスと笑いをこぼしていた。
ここまでのあまりに衝撃的な展開に、一歩も動くことができなかった他の男子水泳部員たちはというと、タツヤの苦しむ様子を見て、一様に青ざめていた。
彼らが履いている競泳水着の下では、その金玉袋が、これ以上ないくらいにキュッと縮こまってしまっているはずである。

「アオイが蹴るとさ、男子はみんなすっごい痛がるよね」

「そうだよね。なんか、コツとかあるの?」

「ん? 別に。ただ、軽く蹴ってるだけだけど。男子はいつも、大げさなんだよ。男らしく、我慢してほしいよね」

何気ない女子たちの会話にも、男子たちはそこにある、決して埋まることのない隔たりを感じていた。
女子たちが身につけている競泳水着の股間部分は、男子のものよりさらにハイカットで、おそらく男子がそれを着れば、両側から睾丸からこぼれ出てしまうほどのものだった。
しかし女子の股間にはもちろん睾丸などついておらず、スッキリとしていて、そこにはうっすらとした膨らみがあるだけである。
男子たちが女子の股間に目を奪われるのは日常茶飯事だったが、今日ばかりは性的な欲求は抜きにして、純粋な憧れの視線を、その股間に注がざるを得なかった。

「みんなも、蹴ってみればいいじゃん。ていうか、最初からそのつもりだったでしょ? これは、男子たちの連帯責任なんだから」

アオイの言葉に、男子たちが一斉に振り返った。

「そっか。そういう話だったね。じゃあ、そうしよっか」

「そうしよー! みんなで蹴っちゃえ!」

男子たちが抵抗する暇もなく、女子たちは股間を蹴る用意を始めた。
もともと、水泳部には女子の人数の方が多く、しかも男子たちはすでに二人、ノックアウトされている。
後ろから羽交い絞めにされてしまえば、男といえどもそう抵抗することはできなかった。

「いくよー! えい!」

「やあっ!」

「こうかな? えい!」

ビシッ! バシッ!

と、次々に強烈な金的蹴りが、男子たちの股間を襲った。
蹴られた男子たちが、次々に膝をついてしまっても、今度は羽交い絞めにする役を交代して、また違う女子が股間を蹴り続けた。

「うげえっ!」

「ぐあっ!」

こうして男子水泳部員たちはもれなく、金玉の痛みに打ちひしがれることとなった。

「よし…。このくらいで、許してあげようか?」

女子部員の一人が、一仕事終えたかのように言う。
股間を蹴られた男子たちは皆、更衣室の床に蹲り、中には涙を流している者もいる。
下着泥棒をしたことは許せなかったが、彼らのあまりの痛がりように、女子たちの気持ちも一応はおさまったようだった。
するとアオイが、ようやくわずかに痛みが治まり始めたタツヤの横にしゃがんで、首をかしげた。

「うーん。そうだねえ。でも私、最低でも一個潰すって言ったんだよねー。ねえ? そうだよね?」

タツヤは戦慄する思いで、アオイの顔を見上げた。

「まあ、もう許してあげてもいいんだけど…。ねえ、ちょっとコイツ仰向けにしてみて」

アオイが言うと、女子たちが協力して、タツヤの体を引き起こして、仰向けにしてしまった。
その両手両足はしっかりと掴まれて、股間を手でおさえることも、脚を閉じることもできなくなってしまった。

「よいっしょっと」

アオイはおもむろに、右足をタツヤの股間の上に乗せた。
その足の裏に、すでに熱を持ち始めているタツヤの金玉袋の柔らかい感触が伝わる。

「まだ、アンタから正直に聞いてないんだよね。アンタが下着を盗んだんでしょ? だったら、ハッキリそう言いなさいよ」

「あ…は…それは…」

思わずタツヤが言い淀むと、その瞬間、アオイの足が股間を激しく踏みつけた。

「ぎゃうっ!!」

「アンタが盗んだんでしょ! ハッキリ言いなさい!」

アオイは足の裏の踵、最も堅い部分を使って、タツヤの睾丸を恥骨に押し付けるようにして踏みつけていた。
タツヤの睾丸はゴムボールのように変形し、強烈な痛みを彼に与えた。

「はあっ! あっ! は、はいっ! 俺が盗みました! あっ!」

「そうなんでしょ? 早くそう言えばいいのに」

アオイが踏みつけるのをやめると、タツヤはようやく呼吸ができる思いだった。

「で、いつ、どうやって盗んだの? 更衣室の鍵は、ちゃんとかけてあると思ったけど。部長の私の責任になるのかな?」

「え…? あ、いや…その…ぎゃあっ!」

言葉を濁そうとすると、再びアオイは股間を踏みつけた。
今度は睾丸をグリグリと押し込むようにして、リズミカルに踏み込んでくる。
もちろんタツヤは実際に盗んだわけではないから、この質問には答えようがなかったわけだが、必死に頭を回転させて、この痛みから逃れようとした。

「あっ! あの…鍵を…! 合鍵を…職員室からとってきて…! ぐえぇっ!」

「合鍵ぃ? アンタ、そんなことしたの? 最っ低! やっぱり潰そうかな、この変なタマ!」

アオイの顔に怒りが表れて、その右足にますます強い力が込められた。

「ぎゃあーっ!! や、やめて! お願いしますっ! やめてください!!」

「うるさい! このバカ! 泥棒! ヘンタイ!」

怒声に合わせるかのように、股間に踵を打ちつけ続け、タツヤの口から白い泡のようなものが出始めたころ、ようやくアオイは疲れたように、その脚をおろした。

「ふう…。はあ…ホンット、男子って最悪。こんなヤツらと一緒に練習したくないね」

「ホントだね。わざわざ合鍵使うとか、信じられない」

「どうするの、これから? こんなんじゃ、安心して更衣室で着替えられないじゃん」

タツヤの口から出たのは、金玉の痛みから逃れるためのでまかせだったのだが、女の子たちはそれをすっかり信用してしまったようだった。
アオイは少し考えてから、言った。

「よし。これからは、合鍵を含めて、全部私が持ってることにするね。先生にもそう言っとくから。女子の部員以外に、もう誰にも鍵は触れないようにする。それで安心じゃないかな」

女子たちはこの提案に、納得したようだった。

「それと…。男子更衣室の鍵も、私が預かっとく。男子たちの荷物は全部外に置かせて、更衣室に入れないようにするから。更衣室に入れとくのは、練習で使う備品だけにするの。それでよくない?」

「そっか。それなら、盗んだものを隠れてバッグに入れたりできなくなるね。うん、それ、いいかも」

アオイのアイデアに、女子たちは一斉にうなずいたが、男子たちは驚いてしまった。
更衣室に入れないとなると、男子たちは一体どこで水着に着替えるというのだろう。
まだ股間をおさえて立ち上がれないでいるキョウヘイが、顔を上げて意見した。

「そ、それって…。俺らはどこで着替えればいいんだよ…?」

キッと振り向いたアオイの視線に、キョウヘイの金玉袋が縮こまり、圧迫された睾丸から、また鋭い痛みが股間に走った。

「外で着替えればいいでしょ。男の裸なんて、別に見せても構わないんだから。言っとくけど、何か隠してるものがないかどうか、その度にチェックさせてもらうからね」

「そ、そんな…」

無情すぎるアオイの言葉だったが、それに抵抗する気力は、もはや男子たちには残されていなかった。
男子たちはみな、打ちひしがれたような表情でうつむき、それとは対照的に、女子たちは相手を屈服させた時のような、満足げな征服感に満ちている様子だった。

「ハッキリ言うけど、これも全部、アンタたちがいけないんだからね。私たちだって、こんなことに時間を取られるのは、めんどくさくてしょうがないんだから。分かった? ホントのホントにこれが最後だからね。もし、次に何かあったら、その時は…」

アオイの足が、ゆっくりとタツヤの股間の上に移動してきた。
今にも踏みつけようかというその足の動きに、男子たちはみな恐怖しながらも、釘づけになっていた。

「ぶっ潰すからね!!」

ドスン、と、タツヤの股間からほんの数ミリ外れた所に、アオイの右足が落ちた。
その瞬間、男子全員が再び自分の股間を両手で守り、その無事を確認する。
その情けない姿に、女子たちは笑いをこらえきれず吹き出し、そのまま男子更衣室をあとにした。


終わり。


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