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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


甲子園の出場をかけ、高校球児たちが汗を流す夏。
とある県の強豪校に、2年生ながらすでにエースピッチャーと呼ばれている、三杉テツヤがいた。
甲子園の県予選が、いよいよ決勝戦を迎えたその日の朝、テツヤはマネージャーの藤田ユカに呼び出された。

「あの…なんですか? 自分、準備があるんですけど…」

野球部員が寝泊まりしている合宿所の裏手に呼び出されたテツヤは、少し緊張していた。
ユカは3年生のチーフマネージャーで、ときにはキャプテンや監督以上に、下級生に厳しい言葉をかけることもあるからだった。

「うん。そんな長い話じゃないから、大丈夫。…あのさあ、ちょっとお願いがあるんだけど…」

「は、はい…?」

「今日の試合、テツヤが先発でしょ? それをちょっと、辞退してくれないかな? お腹が痛いとか言って」

「はあ?」

思いもかけぬ言葉に、テツヤは戸惑った。
今日までの県予選は、すべての試合でテツヤが先発で投げてきたし、今日も投げ抜いて甲子園に行くつもりだった。
その自分に、仮病を使って先発を辞退しろとは、どういうことだろう。

「いや…でも、自分が投げなかったら、どうなるんですか?」

「それはまあ…3年生とか、他にもいるから、大丈夫だよ。ずっと投げてきたから、疲れてない? ちょっと休憩して、また甲子園で頑張ればさ…」

ユカの言葉は、不審だった。
確かに彼らの高校は、強豪校と呼ばれるだけあって、選手層はそれなりに厚い。
テツヤの代わりになるピッチャーは、他にもいるだろう。
それにしても、テツヤは自分こそ野球部のエースであると自負していて、周りもそれを認めていると思っていたのに、マネージャーであるユカが意外にも自分の力を認めていないような気がして、少し不愉快になった。

「いや、でもそれは…監督が決めることですから。自分は疲れてないですし、投げろって言われれば、投げますよ」

「うーん…。そっかあ。まあ、それはそうなんだけどさあ…」

テツヤの返答を予期していたかのように、ユカは驚かなかったが、腕組みして考え込むような素振りを見せた。
テツヤは、もともとユカにあまりいい印象を持っていなかったせいもあるが、その態度を見て、ますます今日は投げ抜いてやろうという気持ちになってきた。
その時だった。

ボスッ!!

と、テツヤは自分の股間に強い衝撃を感じた。
一瞬、踵が浮いてしまったほどの衝撃の正体は、背後からの金的蹴りで、テツヤがそれを理解するよりも早く、強烈な痛みが股間から湧き上がってきた。

「あっ!!」

反射的に両手で股間をおさえて、前かがみになる。
チラリと見えた、股間に突き刺さったスニーカーの主を確かめるために、身を捻った。

「ゴメンね。ホント、ゴメン!」

そこには、同じく3年生のマネージャー、小倉ミナミが立っていた。
ミナミは、前のめりになって崩れ落ちていくテツヤに対して、心から申し訳なさそうな顔をして、謝っていた。

「う…くぅ…!」

仔犬のような鳴き声をあげて、テツヤはその場にうずくまってしまった。
ミナミの蹴りは、テツヤの睾丸を後ろから蹴り上げていた。
その蹴りは、男の急所中の急所である副睾丸を見事に射抜いており、テツヤに地獄の苦しみを与えることを約束していた。

「やったね、ミナミ! うまくいったじゃん」

「うん。よかったあ。後ろから近付くとき、超ドキドキしたもん。失敗したらマズイと思ったから、思いっきり蹴っちゃった。大丈夫かなあ?」

ミナミは、まるで他人事のように、うずくまるテツヤを覗き込んだ。
テツヤの顔色は真っ青で、奥歯をかみしめながら、必死に痛みに耐えている。
股間から発せられた痛みは、すでに全身の自由を奪い、しばらくは立ち上がることもできない状態だった。

「まあ、大丈夫でしょ。ねえ、テツヤ。これで、お腹が痛いって監督に言えるでしょ? 無理しないで、休みなって言ったのに。アンタが言うこと聞かないからだよ?」

想像を絶する痛みにうずくまるテツヤを、ユカとミナミは心配しながらも、どこか面白そうに見下ろしていた。
野球部の練習中、股間にボールが当たってしまった選手を介抱するのも、彼女たちの仕事の一つだったが、そういえばその時も、どこか楽しそうに選手の腰を叩いてやったり、股間を冷やすのを手伝ったりしていたことを、テツヤは思い出していた。

「でもこれで…。先発はアキヒロになるかな…?」

「でしょ。監督も、テツヤが怪我でもすれば、アキヒロだなって言ってたし」

「そうだよね。3年間、頑張ってきたんだもん。最後に投げさせてあげたいよね」

二人が話しているのは、3年生のピッチャー、新島アキヒロのことだった。
アキヒロはこの野球部でテツヤに次ぐ実力の持ち主で、テツヤが入部する以前は、エースとして君臨していた。
そのアキヒロと、自分の股間を容赦なく蹴り上げたミナミが付き合っているという噂を、とめどなくこみ上げてくる痛みの中で、テツヤは思い出していた。

「ゴメンね、テツヤ君。私、どうしてもアキヒロに投げさせてあげたいの。ちょっと痛かったかもしれないけど、許してね?」

「アンタはほら、甲子園の本番で投げれると思うから。来年もあるし。いいでしょ?」

テツヤの股間からあふれ出る痛みは、「痛かったかもしれない」という程度のものではなかったが、すでに呼吸をすることさえ苦痛で、うずくまったまま、何も言うことはできなかった。
そしてマネージャーの女の子たちは、身動き一つ取れないテツヤを残して、その場から立ち去ってしまった。




そして、県大会の決勝戦。
時間ギリギリになって移動用のバスに乗り込んできたテツヤを、チームメイトたちは心配そうに見ていた。
その顔は青白く、とても体調が良さそうには見えなかったからである。
それでもテツヤは、日頃の厳しい練習で鍛えた精神力を持って、試合に臨もうとしていた。

「テツヤ、先発、いけるか?」

「はい…! 大丈夫…です!」

監督はやや不安になったが、それでもテツヤを先発のマウンドに送り込むことにした。
悲壮な決意に満ちたテツヤの顔を、マネージャーのユカとミナミが歯がゆそうに見つめているのを、部員の誰も気がつかなかった。

「ストライク! バッターアウト!」

マネージャーたちの期待に反して、テツヤは好投した。
股間から湧き上がってくる痛みの大部分はおさまったが、下半身に力を入れようとすると、鈍い痛みが襲ってくる。
強靭な足腰を使った速球を武器としているテツヤにとっては致命的だったが、それでも、普段はあまり使わない変化球などを駆使して、なんとか相手チームを0点に抑えていた。

「ナイスピッチングだ! テツヤ、大丈夫か?」

監督が思わずそう聞いてしまうほど、ベンチに帰ってきたテツヤの顔色は辛そうだった。

「は、はい…! まだ、いけます…!」

テツヤも、もはや意地になっていた。
自分の代わりにアキヒロが投げたとしても、おそらく今日の相手に負けることはないだろう。しかし、それではユカとミナミの思惑通りになってしまう気がして、悔しかったのだ。
金玉を蹴られたくらいで、マウンドを譲りたくないという強い気持ちが、テツヤを支えていた。

「監督、私、テツヤのマッサージします!」

ベンチに座ってスコア表をつけていたユカが、突然立ち上がってそう言った。

「ん? そうか。そうだな。お前、決勝だからって、変に緊張してるんじゃないか? ちょっと体をほぐしてもらえ」

「あ、私も手伝います!」

ミナミも立ち上がって、二人は両脇から、テツヤを抱えるようにしてベンチの奥に連れて行った。

「え? いや、俺は別に…」

「いいから、いいから。ちょっとこっち来なって」

「そうそう。マッサージしてあげるから」

ユカとミナミの顔は、言葉とは裏腹に、まったく笑っていなかった。
二人はマネージャーとして、怪我の応急処置やマッサージの術を心得ていたし、その行動を不審がる部員は誰ひとりおらず、皆の注意は、バッターボックスに向かっていた。

「あ…あの…。先輩…?」

ベンチの隅で、二人に囲まれてしまったテツヤは、不安そうな表情を浮かべた。
しかしユカとミナミは、そんなテツヤを無視して、淡々と作業に取りかかった。

「じゃあ、私、上半身をやるから。ミナミは脚のマッサージ、お願いね」

「うん、分かった」

二人は分担して、テツヤのマッサージを始めた。
それはテツヤもたびたび経験があることで、つい、いつものようにリラックスしてしまった。
しかし。

「うっ!」

股間に不意に走った圧迫感に、目を見開いた。
見ると、今まで太ももをマッサージしていたはずのミナミの手が、テツヤの股間に伸びている。
その手はテツヤの二つの睾丸を掴み、じわじわと圧迫し始めていた。

「うぐ…んんっ!」

思わず叫び声をあげそうになったテツヤの口を、肩を揉んでいたユカのタオルが塞いだ。
二人は体を使って巧妙にそれを隠し、他の部員に気づかれないようにした。

「ねえ、なに頑張っちゃってんの? アキヒロが投げるって言ってるじゃん。少しは空気読みなさいよ」

耳元で、ユカが囁いた。

「ゴメンね。どうしても、アキヒロに投げさせたいの。テツヤ君の気持ちは分かるけど…。お願い!」

上目づかいに見上げながら、ミナミが囁いた。
しかしその手は、意外なほどの握力で、テツヤの睾丸を締めつけ続けている。
内臓を掻き回されるような痛みと吐き気が、テツヤの胸にこみ上げてきた。

「アンタは知らないと思うけど、私が一年生の時にね、自打球をアソコに当てちゃった先輩がいたの。当時3年生で、背が高くて、すごい強そうな人だった。でもそのとき、どうしたと思う?」

ユカは脅かすような口調で、囁き続けた。

「その先輩、バッターボックスに倒れこんだまま、気絶しちゃったんだよ。そして、そのまま救急車で運ばれちゃった。後で聞いたんだけど、当たり所が悪くて、破裂したんだって。分かる? タマタマが一個潰れちゃったらしいよ。すごい痛そうじゃない?」

ユカの話は、男なら誰でも耳をふさぎたくなるようなものだった。
特に先程股間を蹴られたばかりのテツヤにとっては、あれ以上の痛みがあるのかと戦慄させる効果が十分にあった。
そして今、彼の睾丸は、ミナミにしっかりと握られているのである。

「それ、私も覚えてる。西村先輩でしょ? 大変そうだったな。一週間くらい、入院してたもん。冗談抜きで、死ぬかと思ったって。男子って、野球をするのも命がけなんだね。大変だね」

ミナミはそう言いながら、マッサージをするかのようにテツヤの睾丸を握りしめ続けた。
その度に、テツヤの体には重苦しい痛みが蓄積されていくのだが、肩をガッチリと抑えられているため、うずくまることもできない。

「ホントだね。潰れちゃったりしたら、野球どころじゃないね。大変だ。…で、アンタはどうする? テツヤ?」

ユカが囁くと同時に、ミナミの手に、今まで以上の力が加わり始めた。
二人は、テツヤが今受けている痛みをまったく理解することのない女子として、冷静かつ冷酷に、その表情を観察している。

「どうしても投げ続けるっていうなら、私たちにも考えがあるんだけど…。あんまり痛くはしたくないんだよね。アンタのためにもさ。ねえ?」

「お願い、テツヤ君」

ミナミは潤んだような瞳で見つめていたが、その手は決して緩めようとせず、テツヤにとってはその純真さが逆に恐怖だった。
意地を張って投げ続けるよりも、男でいたい。
どうせアキヒロが投げたとしても、この試合に負けることはないし、自分はまた甲子園球場で投げるか、来年頑張ればいい。
高校球児として、あるいはふがいない決断と言えるかもしれなかったが、テツヤの体を支配する、巨大すぎる苦しみから逃れるためには、それしか方法はなかった。
諦めたような目でテツヤがうなずいたのを見て、ユカは口を塞いでいたタオルを外してやった。

「なに? どうするの?」

「あ…その…気分が悪いので、もう…」

「交代する?」

ユカが言葉尻をつかまえると、テツヤは小さくうなずいた。

「やったあ! ありがとう、テツヤ君!」

ミナミは満面の笑みを浮かべた。

「はい…あの…放してください…う!」

「ああ、ゴメン、ゴメン。じゃあ、監督にそう言ってくるね」

ミナミが股間を握る手を放し、ユカが肩を解放してやると、テツヤは演技でもなんでもなく、ベンチに横倒しに倒れこんでしまった。
ミナミの報告を受けた監督が驚いて振り向くと、そこには虚ろな目をしたテツヤが転がっている。
事実、もう立ち上がることができないほどに、彼の体には痛みと疲労が蓄積していた。

「おい、テツヤ! そんなに悪いのか? 大丈夫か、お前!」

テツヤは寝転がったまま、なんとかうなずいてみせた。

「監督! 次、テツヤの番ですけど…」

「なに! そうか…。仕方ない。選手交代だ。アキヒロ、お前、行け!」

味方のヒットで、テツヤの打順が回ってきたようだった。
監督は急なことに焦り、控えのピッチャーとして考えていたアキヒロを、そのまま交代させることにした。
アキヒロも突然の展開に驚いたが、とりあえず準備をして、バッターボックスに向かう。

「やったね、ミナミ!」

「うん!」

このままいけば、次の回からアキヒロがマウンドに立つことになるだろう。
ユカとミナミは、ようやく自分たちの思惑通りになったと、密かにうなずき合った。

「打て、打て、アキヒロ! 行け、行け、アキヒロ!」

ベンチの部員たちも困惑していたが、とにかくバッターボックスに立つアキヒロに声援を送ろうとしていた。
その声を、テツヤはぼんやりとした頭で聞き流している。

「アキヒロ! 頑張って!」

ひときわ大きな声援を送るのは、彼と付き合っているという噂のミナミだった。
真剣な表情で相手ピッチャーを見つめるその横顔を、惚れ惚れする思いで眺めている。
そして、一球目。

「ストライク!」

ど真ん中の直球を、空振りした。
相手ピッチャーも、決勝まで残っただけあってなかなかのもので、ほとんど素振りもしないまま打席に立ったアキヒロには、荷が重そうだった。

「アキヒロ! 落ち着いて! ボールよく見て!」

ミナミの声が、アキヒロの耳にも届いたようだった。
その顔に、プレッシャーをはねのける、男らしい気合が表れていた。
そして、二球目。

カキン!

と、思い切り振ったバットに、ボールが当たった。
しかし当たりが悪かったのか、そのボールは前に飛ばず、そのままの勢いでコースを変えて、アキヒロ自身に向かって飛んできた。

「ぐえっ!!」

斜め上から抉るような角度で、白球はアキヒロの股間に深々と突き刺さった。
石のように堅い硬球が、ユニフォームの股間をグシャリとへこませ、アキヒロの体が糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちる様子が、スローモーションのようにミナミの目にも映った。
「きゃあ!」

ミナミの悲痛な声が響き、両校の応援も一瞬でシンと静まりかえった。

「タイム! 救護班!」

一瞬で白目をむき、頭から崩れ落ちたアキヒロの様子を見て、主審はすぐさま試合を止めた。
すぐに白衣を着た医者らしき人物が、担架と共にバッターボックスに集まってきた。

「うぐぐっ! ああっ!」

アキヒロはどうやら、倒れこんだ衝撃か、あるいはあまりの痛みに覚醒してしまったらしい。
球場に詰めかけた大勢の生徒たちの見つめる前で、恥も見栄もなく、股間をおさえて、その場でゴロゴロとのた打ち回っていた。
その勢いは、診察しようとした医者でさえ手こずるほどで、アキヒロが力尽きて大人しくなるのを待たなければならなかった。

「アキヒロ! 大丈夫? 痛いの?」

いつの間にかアキヒロの側に駆け寄っていたミナミが、心配そうに声をかけたが、聞こえる様子はなかった。

「しっかりして! 今からマウンドに立てるんだよ。私を甲子園に連れてってくれるんでしょ? 頑張ってよ!」

ようやく転げまわるのをやめて、背中を丸めたまま動かなくなったアキヒロに向かって、ミナミは声を荒げた。
彼女は彼女で、自分の努力が報われることを願っているだけだったのだろうが、その言葉は今のアキヒロにとっては非情すぎるというものだった。

「ごめんなさいね、お嬢さん。ちょっと下がっててね。これは、男にしか分からないから。おい、担架。早く運んで」

真っ白な顔で、糸のように細い呼吸を繰り返すことしかできないアキヒロに代わって、救護班の男性医師が答えてやった。
アキヒロはすぐに担架に乗せられて、ミナミに付き添われながら、病院へ運ばれていった。

その後、球場には微妙な空気が流れた。
アキヒロを襲ったあまりの惨劇に、チームメイトたちは自打球を恐れて、バッターボックスで無意識に腰が引けるようになってしまった。

「ちょっと、何してんの! 腰が引けてるよ!」

ユカが怒声を飛ばしても、バッターはそれを聞き入れる様子はなく、監督もいつもより数段低いテンションで指導することしかできなかった。

「バッター、ビビってるよ! 内角狙って!」

相手チームの女子マネージャーが、ベンチから声援を送っても、自分がバッターボックスに立った時のことを思うと、相手ピッチャーも思い切った内角攻めができなくなってしまっていた。
何より、敵味方を越えて、男だけが共感できる怖さとして、アキヒロのような犠牲者を増やしたくなかったのかもしれない。
やがて、テツヤとアキヒロという二人のエースを失った野球部は、優勝候補と言われながらも、僅差で敗れてしまった。
テツヤはその一部始終を、ベンチでぐったりとしながら眺めていることしかできず、来年は必ずファールカップをつけてマウンドに上がろうと決心するのだった。



終わり。


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