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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。


「私は伝説の勇者、ボールレジェンド! この街の平和は、私が守る!」

駅前に設けられた特設ステージの上で、金色のコスチュームに身を包んだ戦隊ヒーローがポーズを決める。
ステージの上には、この街の警察署長をはじめ、たくさんの警察官たちが並んでいた。これは、今日から始まるこの街の「安全週間」のメインイベントの一つだった。

「はーい。それでは、今日から一週間、ボールレジェンドが皆さんの街をパトロールしてくれるそうです。皆さん、見かけたらお気軽に声をかけてくださいね」

駅前に集まった住民や子供たちからは、大きな拍手が送られる。
ボールレジェンドは、人気の戦隊ヒーロー番組、「ボールレンジャー」に登場する新キャラクターだった。
物語の佳境で、レギュラーメンバーたちがピンチに陥ったところを圧倒的なパワーで救い出すという、ジョーカー的なキャラクターだ。
設定上は、レギュラーメンバーよりはるかに前からヒーローとして活動しており、地球だけでなく宇宙全体の平和を見守っている伝説の勇者ということらしい。
その肩書にふさわしく、ヘルメットをはじめ、全身がラメ入りのゴージャスな金色に塗られていた。

「ボールレジェンドー! カッコいいー!」

「レジェンドー! クラッシャークイーンに気を付けてー!」
 
駆け付けた子供たちから、声援が飛んだ。
ステージ上のレジェンドは、片手を腰に当てたまま、いちいち手を振ってやる。
広い肩幅と厚い胸板は見るからに頼もしく、伝説のヒーローの名に恥じないものだったが、最近ではボールレンジャーの唯一の弱点は、その股間にうっすらと見える膨らみであるということが、裏設定のようになっている。
そこには彼らのパワーの源である魔法のボールが入っていて、そこを攻撃されると、力が抜けてしまうというのだ。

「私はボールレジェンド! この街の平和は、私が守る!」

録音された音声が流れると、レジェンドは再びポーズをとり、そこでステージは終了となった。



一週間後。
レジェンドの安全週間は、特に大きな出来事もなく、終わりを迎えようとしていた。
レジェンドが街をパトロールするのは、一日に二回。
朝、子供たちが登校する時間と、夜、子供たちが塾から帰る時間帯だった。

「あ、レジェンド! こんばんはー!」

自転車に乗って家路につく子供たちが、嬉しそうに手を振った。
レジェンドは手を振るだけで、言葉を発することはない。

「こんばんは。気を付けて帰るのよ」

「通訳」をするのは、レジェンドと一緒にパトロールをする女性警官の役目だった。

「ふう…。一週間、なんとか終わりそうね」

塾帰りの子供たちもいなくなり、人気のない路上で、レジェンドの付き添いを務めている女性警官、香山ヨウコはつぶやいた。

「ですねー。まあ、なんだかんだでけっこう疲れましたよ」

ゴールドスーツに身を包んだレジェンドの口から、ため息交じりの男性の声が聞こえた。

「でしょうね。見るからに暑そうだもの、それ。山本君にしては、頑張ったんじゃない」

「いや、自分にしてはって、どういう意味ですか? これでも練習したんですよ。決めポーズとか、必殺技とか。大変だったんですから」

金色にペイントされたヘルメットの目の部分は、黒いフィルムが貼られており、外からうかがうことはできない。
しかしボールレジェンドの中に入っているのは、ヨウコの後輩である男性警官、山本だった。
予算の都合で、専門のスーツアクターを雇うことができず、やむなく新人警官の山本がこの大役を任せられたのである。

「あ、そう。そんな練習もしてたの。でも、やってることはパトロールなんだから、そんな必殺技なんか使わないでしょう。その、ボールゴールドだっけ?」

「ゴールドじゃないですよ。レジェンドですよ。ボールレジェンド」

「あ、そうか。だって、見た目が金色だから。間違えるわね」

ヨウコはおかしそうに笑っていたが、ヘルメットの下で、山本の顔は引きつっていた。
ボールゴールドといえば、山本は一か月ほど前、ヨウコが開いた女子中学生向けの護身術教室で、実験台としてさんざん金玉を痛めつけられてしまっている。
その後一週間ほど股間に鈍い痛みが残っていたことを、今、思い出してしまったのだ。

「あの、先輩…。自分、来年はあの護身術教室は…」

山本が言いかけた時、ヨウコの腰に付いた警察無線に、緊急連絡が入った。

「…緊急連絡。駅東口のコンビニで、強盗事件発生。現在犯人は逃走中。付近の警察官は、至急現場に急行せよ」

駅の東口は、ここから5分ほどの場所である。
無線を聞いたヨウコの顔色が変わった。

「了解。至急、現場に向かいます」

迷わず本部に連絡をする。

「そういうことだから。私は現場に向かうわね」

「あ、自分も行きます!」

ボールレジェンドに扮した山本も、今の自分の姿を忘れてうなずいた。

「あなたが行ったって、しょうがないでしょ。無線も持ってないんだから。もうすぐ時間だから、今日はもう署に戻りなさい。そこで着替えて、待機。わかった?」

「あ、はい! 了解しました!」

ボールレジェンドが右手を上げて、敬礼した。
ヨウコはその姿に、思わずクスッと笑って、その場をあとにした。



人気のない路地裏に残されたのは、伝説のヒーローただ一人である。
遠くに見える駅の方から、パトカーのサイレンが聞こえた。
山本は、とにかくいったん署に帰るつもりだった。しかしこの一週間、ずっとヨウコに付き添われてパトロールをしてきたため、いざ一人きりになると、何か心細いものを感じてしまう。
せめてヘルメットだけでも外して、顔を出したかったのだが、テレビ局との約束で、人前で気軽に正体を明かしてはいけないことになっている。もちろん、タクシーを使ったり、ヒーローにそぐわない行動を取ることもできない。
やむなく、山本はボールレジェンド姿のまま、徒歩で警察署に向かうことにした。

「意外と走りづらいんだよな、これ…」

歩きながら、ヘルメットの下でつぶやいた。
このボールレジェンドのスーツは、体格のいい山本にとっては少し小さめだった。胸板や腕の筋肉が強調されるのはいいとしても、股間までぴっちり張り付いてしまい、一週間着続けた山本は、軽い股ずれを起こしてしまっていたのだ。
もちろん、股間の膨らみは隠しようもなく、動き方によってはその形までくっきりと浮き出てしまうため、山本は常に自分のイチモツの位置に気を遣わなくてはならなかった。

「前も見づらいし…。走れないよ、これじゃあ」

ヘルメットの構造上仕方のないことだが、夜にサングラスをかけているよりも、はるかに視界は悪かった。

「ん?」

ふと見ると、10メートルほど先の路上で、電柱の側にしゃがみ込む人影が見えた。
ここは繁華街の外れで、飲食店も多い界隈だから、酔い潰れている人も多く見かける。しゃがみ込んでいるのは、仕事帰りの若い女性らしい。
山本は状況を考えて躊躇したが、警察官としての責務を裏切るわけにもいかず、声をかけることにした。

「あー…その…。ど、どうしました?」

精いっぱい、ボールレジェンドの声を真似たつもりだった。
しゃがみこんでいた女性は、飲みすぎてしまったのか、気分が悪い様子だった。

「あ…いえ…ちょっと、気持ちが悪くて…。でも、もう大丈夫…きゃあっ!!」

乱れた髪をかき分けながら振り向くと、そこには全身金色のヘルメットをかぶった男が立っていた。
女性は思わず叫び声を上げてしまう。

「何よ、アンタ! 近寄らないで!」

「あ、いや。自分は、怪しいものではなく…」

ボールレンジャーなど知らない若い女性は、山本のことを変質者だと思ったらしい。
山本は、自分が警察官であることを言っていいものかどうか迷い、またそれをどうやって証明すればいいのかも分からず、うろたえるばかりだった。

「アンナ! どうしたの!」

山本の背後から、友人らしいスーツ姿の女性が駆け寄ってきた。
顔色から、この友人もだいぶ酔っているようで、山本はますます悪くなる状況に混乱した。

「あ、大丈夫です。自分は、この方を介抱しようとして…」

「この、ヘンタイ!」

駆け寄ってきた友人は、問答無用でボールレジェンドの股間に蹴りを入れた。
中に入っている山本にとっては、女性の腰から下は完全に死角になってしまっていて、無防備にその蹴りを受けることになってしまう。
メリッと、女性の足の甲が山本の股間にめり込んで、その膨らみを変形させた。

「はうっ!!」

絶望的な感触が山本の股間に走ると、次の瞬間には、両足から力が抜けて、両手で股間をおさえて、その場にうずくまってしまった。

「ううぅ…」

ヘルメットの下で、山本の額に冷たい汗が流れていた。
下腹部を中心として、重苦しい痛みが全身に広がり、体にまったく力が入らない。
山本は自分がヒーローであることも忘れて、ただ男としての最大の苦しみに喘ぐことしかできなかった。

「ちょっと、何よコイツ。新手の痴漢?」

「分かんない…。でも、ありがとう、ハルカ。さすが…」

伝説の勇者、ボールレジェンドを一発でノックアウトしたのがハルカで、しゃがみ込んでいたのがアンナ。二人は大学の同級生で、仕事帰りに飲みに行き、飲み過ぎたアンナが休憩しているところだったのだ。

「あれ…? でも…これって、アレじゃない? なんとかレンジャーの…」

驚きのあまり、気分の悪さも回復したアンナが、うずくまって苦しむ山本を覗き込んで、言った。

「え? …あ! もしかして、警察の安全週間のヤツ? あの、街をパトロールしてるとかいう…」

「そう、それ! なんとかレンジャーの。何だっけ…ボール? ボールレンジャー?」

「そうそう、それだよ。子供たちが言ってた。ボールレンジャーの…ボール…ゴールド…かな?」

完全に見た目だけで、ハルカは名前を決めた。
まだ酔いの醒めていない二人は、女子大生時代のような高いテンションだった。
うずくまっていた山本は、二人の会話を頭上に聞き、どうやら誤解が解けたようだと感じると、ようやくその上半身を起こした。

「ん…ああ…。そ、そうです。私は伝説の勇者、ボールレジェンド…! 街の平和を守るため、パトロールをしているのです…ん…!」

山本の下半身には、まだ痛みが残っていた。
立ち上がることもできず、正座のような姿勢で胸を張ろうとするヒーローの姿に、ハルカとアンナは、思わず吹き出してしまった。

「プッ…そうなんだ。アナタ、伝説の勇者だったんだ。アハハ!」

「ゴメンね。いきなり蹴っちゃって。やっぱり、ヒーローでもアソコは痛いんだ。アハハハハ!」

酔っぱらった女性たちは、遠慮することもなく大笑いした。
山本はその様子を見て、このままではボールレジェンドに不名誉な噂が立つと思い、また、男としてのプライドを守るために、腹を抱えて笑う女性たちの前で、立ち上がって見せることにした。

「い、いや…さっきのは、不意を突かれてしまったので…。私は伝説のヒーローですから。なんともありません…んんっ!」

膝に手を当てながら、痛みをこらえて、ゆっくりと立ち上がった。
自分ではスムーズに立ち上がったつもりでも、腰を引いて、若干内股気味になったその姿は、女性たちにとっては滑稽なものだった。

「アハハ! まだ痛そー!」

「無理しないでいいって。ハルカは空手やってたんだから。ヒーローでも、男の弱点はどうしようもないんでしょ?」

女性たちは、憐れみにも似た目で、山本を見ていた。
男の子たちにとっては強さの象徴のような戦隊ヒーローも、股間の急所を蹴られれば、ひとたまりもない。彼女たちの顔から、そんな言葉が聞こえてきそうだった。

「い、いえ! ボールレジェンドに、弱点などありません。少し、驚いてしまっただけで…。それでは、私はパトロールをしなければいけませんので…」

精いっぱいの強がりを言って、その場を立ち去ろうとした。
するとハルカとアンナは、酔って赤くなった顔を見合わせて、意味ありげに笑いあった。

「ねえ、ちょっと待って。私たちと飲んでいかない?」

「せっかく親切にしてくれたのに、失礼なことしちゃったから…。お詫びさせてもらえないかしら?」

二人は両脇から、山本の腕を掴んだ。
まさか中に入っているのが、現役の警察官であるとは夢にも思わず、酔った勢いで面白がっているようだった。



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「え? いや…私には、パトロールがありますから。そういうことは…」

「いいじゃない。ちょっとだけだから。ちょっと一杯だけ。そのマスクの下、見てみたいなー」

「ねー。ほら見て、すごい胸板。腕もたくましいし。お兄さん、細マッチョだね!」

ボールレジェンドのスーツは体に密着していて、感触がダイレクトに伝わってくる。若い女性の手で無遠慮に体を触られると、さすがに興奮を抑えきれなくなった。

「ホントだー。すごい筋肉。お兄さん、絶対イケメンでしょ。細マッチョのイケメンって、アタシ、タイプだなー」

「い、いや…。すいません。やめてください…」

動揺する山本の股間で、その肉棒がくっきりと形を現し始めている。
そして股間の盛り上がりが大きくなると、その付近はますます体に密着し、肉棒の下にある二つの卵状の膨らみまでもが、はっきりと分かるようになってしまっていた。
アンナとハルカは、チラリとその膨らみに目を落とすと、山本の視界の外で、クスクスと笑いあった。

「もう、いいから行こうよ。ほら!」

酔っ払い特有の強引さで、アンナが山本の腕を引いた。
もちろん山本の大きな体は、彼女が全力で引っ張ったところでびくともしないのだが、次の瞬間、アンナの手の甲が、緩やかな弧を描いて山本の股間を下から叩き上げた。

「はうっ!!」

完全な死角からの打撃だったため、山本には身構える余裕はなかった。
それはほんの軽い衝撃だったのだが、さきほどの蹴りで痛めつけられ、さらにボールレジェンドのスーツによってみっちりと押さえつけられた山本の睾丸は、むき出しの内臓と言ってよかった。

「あ…くくく…!!」

全身にジーンと響き渡る重苦しい痛みに、山本は思わず体をくの字にして、片手で下腹をおさえる。

「あれ? またなんか、当たっちゃった?」

「ホント? もー、アンナってば、気をつけないと」

山本の異変に気付いた女性たちは、わざとらしい調子で言った。
その口元はにやけているが、山本にはそんなことを気にする余裕はない。

「伝説のヒーローでも、ここは急所なんだから。気をつけないと。どれ、ちょっと見せて」

「い、いや…! それはちょっと…あ!」

腰を引いて痛みに耐えている山本の股間に、ハルカが手を伸ばした。
山本は体をひねって避けようとしたが、その動きは自分が思っていたよりもはるかに鈍いもので、簡単に自分の最大の急所を掴まれてしまった。

「あ! あの…ちょっと…!」

空手をやっていたというハルカの握力は強力で、何の躊躇もなく山本の膨らみを鷲掴みにして、引っ張った。自然と、山本は背中を反らして腰を前に突き出さざるを得なくなる。

「ああ、大丈夫そうだね。腫れたりしてるかと思ったけど」

「ホント? 良かった」

「は、はい…。大丈夫ですから…その…」

うれしそうな女性たちとは裏腹に、ヘルメットの下の山本は苦痛に顔をゆがめていた。
彼女たちの目からは、それを知ることはできないわけだが、子供たちが真剣にその強さに憧れている戦隊ヒーローを、若い女性が片手で苦しめているという状況に、ますますおかしみを感じていた。

「あれ? でもさ。タマは無事みたいだけど、なんかその上の方が…」

「えー? あ、ホントだ。大きくなってるー!」

今、気がついたかのように、女性たちは黄色い声を上げた。

「あ! い、いや…これは違って…その…」

「もー! お兄さん、いやらしいなあ。何考えてるの?」

「ヒーローがこんなことして、いいんですかあ? 子供たちは、ガッカリするだろうなあ」

痛みに苦しむ山本の顔から、血の気が引いていった。
もし、彼女たちがこの状況をネットなどに公開すれば、どうなるか。
股間を膨らませたヒーローが、夜の街で女性たちと戯れていたとでも書かれれば、すぐさまその情報は拡散されるだろう。
ボールレンジャーというヒーローのイメージダウンだけならまだしも、その中身が実は現役の警察官だったと知れれば、自分は懲罰ものではないだろうか。
決して大げさではないさまざまな想像が、山本の頭を駆け巡った。

「まあ、ヒーローも男だってことだねー。フフフ…」

笑いながら、ハルカは山本の二つの睾丸を揉み続け、さらには指の端でその肉棒をも軽く弄んでいた。
絶体絶命の危機に陥っているはずの山本も、この指使いのせいで、興奮を鎮めることができないでいた。

「ねえ、お兄さん。ボールゴールドだっけ? 私たち、こう見えて先生なんですよ。私は小学校で、ハルカは中学の先生。ボールゴールドに会ったこと、生徒たちに話してもいいですか?」

ハルカの握力から必死に逃れようとして、それができないでいる山本を見て、アンナは笑いをおさえきれずに、クスクスと笑っていた。

「い、いいえ! いいえ! やめてください! このことは、誰にも…! ホントに、お願いします!」

山本は、自分の想像が悪い形で的中してしまったと思い、必死の思いで首を振った。
そこにはもはや、伝説の勇者だとかヒーローだとかのプライドは何もなく、ただ文字通り女性に弱みを握られた男の素の姿があった。
一方の女性たちは、自分たちが思っていた以上に相手が必死なのを見て、またよからぬことを考えてしまったらしい。

「えー? 伝説のヒーローが、お願いしますだって?」

「ふーん。…じゃあね、私たちとヒーローごっこしてくれたら、黙っててあげる」

少し考えてから、ハルカはそんなことを言った。

「…ヒーローごっこ?」

「そう。せっかく本物のヒーローに会えたんだから、ヒーローごっこしてみたいなあ。ほら。こうやって、私が後ろに回るから…」

そう言うと、ハルカは山本の股間から手を離し、背後に回り込んで、両脇を抱えて羽交い絞めにした。

「え…? これは…?」

山本はまだ状況を掴めずにいたが、かといって今まで握られていた股間の痛みのために、体に力が入らなかった。

「それで、私が仲間にこう言うから。今だ! 私がおさえているから、やっつけろ! ってね?」

ハルカが山本の肩越しに叫ぶ様子を見て、ようやくアンナもうなずいた。

「あー、そういうことね。テレビでよく見るヤツだ。そこで、私の出番ってわけね。はーい、わかりました」

「そうそう。じゃあ、いくよ?」

「え? あの、ちょっと…」

アンナとハルカは納得したようだったが、山本はまだ訳が分からなかった。
しかし女性たちは、勝手に話を進めていく。

「いまだ、アンナ! 私に気にせず、コイツをやっつけて!」

「ええ! そんな…。私、どうすれば…」

「いいから早く! 私のことは気にせずに!」

彼女たちの間では、すでにこのヒーローごっこの結末が決まっているような様子だったが、山本には何のことかいまだに分からない。
しかし山本の両腕は、後ろからしっかりと羽交い絞めにされていて、さらに気がつかないうちに、ハルカの両脚が山本の脚の間に入り、その股間を大きく開かせていた。

「…よし! 分かった! いくよ!」

「え? いや…あの…?」

大きくうなずいて、決意した表情のアンナを見て、山本は不安を感じた。

「必殺! ゴールドボールクラッシュ!!」

掛け声とともに、アンナの右足が山本の股間に向かって、大きく振り上げられた。
空手をやっていたというハルカに比べれば、かなり素人じみた蹴りだったが、足の甲のあたりにぐにっとした質量を感じたアンナは、そのままそれを躊躇なく、股間に押し込むようにして蹴り上げた。

「はあっ!!」

ぞわっとした寒気のようなものが、山本の腰骨から背筋にかけて走った。
激しすぎる衝撃を股間に受けたときは、いつもそうだ。まず、男としての生命の危機を知らせるような危険信号が、背筋を走り抜けて脳に至る。
そしてその数瞬後に、男として命の次に守らなくてはならない大切な急所を、守りきれなかった天罰のような痛みが訪れる。

「あ…かあっ…!!」

プライドの喪失、遺伝子の否定、オスとしての存在失格。さまざまな屈辱的要素を孕んだその痛みは、同時にそれらのすべてを引き換えにしてでも避けたくなる、圧倒的すぎる痛みだった。

「やったー! 倒したぞー!」

「イエーイ!」

自分でも気づかぬうちに、その場にしゃがんでうずくまってしまった山本を見て、アンナとハルカは嬉しそうにハイタッチした。
おそらくアンナの蹴りのつま先が、ハルカのパンツスーツの股間にも多少の衝撃を与えたはずだったが、当然ながら彼女はそんなことを気にする様子もなかった。

「あー、スッキリした。蹴るときに、あのセクハラ教頭の顔が浮かんだもん」

「ああ、たぶん、そうだろうなと思った。目が本気だったもんね。ていうか、ゴールドボールクラッシャーって何? ウケるんだけど」

「ああ、別に。意味はないんだけど。なんか、必殺技って言った方が、ヒーローごっこっぽいかなって思ってさ。ゴールドボールをやっつけるから、クラッシャーで…あれ? この人、ボールゴールドだっけ?

二人の酔いはまだ醒めてはいないようで、本人たちも何を言っているのかわからなくなりそうだった。
山本は彼女たちの足元で、ヘルメットの下で荒い息をしながら、体を小刻みに震わせている。
すでに股間の勃起はおさまっていたが、しゃがみこんだことで、ボールレジェンドのスーツは相変わらず彼の股間を圧迫し続けている。
もはや何もかも忘れて、すぐにでもスーツを脱ぎ捨てたい所だったが、指一本動かすことすら、今の山本にとっては苦痛だった。

「どっちでもいいよ。とりあえず、アンナが蹴ったのはゴールドボールでしょ。ねえ、お兄さん。ありがとね。楽しかったし、また今度飲みに行こう?」

「そうそう。今度は、ホントに飲みに行こうよ。アタシ、細マッチョの人大好きだから」

苦しむ山本は返事をするどころではないが、彼女たちにはそんなことは分からない様子だった。

「でも、今度はその格好で来たらダメだよ。その服見てると、なんか大事な所を蹴りたくなっちゃうから」

「あー、分かる。なんかもっこりしてると、握りたくなるよね。ギューって」

「そうそう。不思議だよねー。蹴った時の感触も、ブルンってして、気持ちよくない?」

「うんうん。分かるー」

女性たちは山本を介抱する気も無いようで、笑いながらその場を離れて行った。
山本が何とか立てるまでに回復したのは、それから30分も後のことで、さらに一時間かけて、子供たちの憧れである伝説の勇者は、よろよろと内股になって歩きながら、警察署までたどり着いたのだった。


終わり。



山本が何とかたどり着いた警察署には、すでに女性警官のヨウコが戻っていた。
強盗事件は案外早く解決したらしい。
いつまでも戻ってこない山本を心配して、待っていたようだった。

「ちょっと山本君。何かあったの? ぜんぜん戻ってこないから、心配したわよ」

「あ! いや…あの…それがですね…」

まだじんわりとした痛みが残る下腹部をおさえながら、山本は説明した。

「変質者に間違われた? そう。まあ確かに、若い女の子は、ヒーローなんて知らないかもね。それで? ずっと説明してたの?」

「いや…それがですね…。その…自分が…蹴られてしまって…それで…」

「蹴られた? 何が?」

「いや…あの…かなり痛い所を…蹴られてしまって…」

「かなり痛い所? なにそれ? …ああ、アナタの金玉を蹴られたってこと?」

「いや…まあ…はい。…そうです」

恥ずかしそうに、申し訳なさそうにうつむく山本だったが、ヨウコは思わず吹き出してしまった。

「なに? それじゃあ、ボールゴールドの格好した山本君が、自分の金玉を女の子に蹴られて、ずっと苦しんでたってわけ? 道端で?」

「あの…ボール…レジェンドです…」

か細い声で訂正したが、ヨウコの耳には届かなかった。

「もー、アナタって人は、ホントに情けないわね。この間の護身術教室の時も、中学生に蹴られたくらいで、ずっとグジグジ言ってたし。それでも警察官なの? 男なの?」

男だから痛いんだということを、ヨウコにいくら言っても理解されそうになかったので、山本はただうつむいていた。
ヨウコはその様子を見て、大きなため息をついた。

「分かったわ、山本君。来週、女性警官が集まってやる、逮捕術の訓練会があるから、アナタもそれに来なさい」

「え?」

山本は思わず顔を上げた。

「そこでちょっと、アナタのことを鍛えなおしてあげるから。これは命令よ。分かったわね?」

「は、はい…。あ、いや…女性警官の逮捕術ってことは…あの…」

思わず返事をしてしまったが、わざわざ女性たちが集まってやっている訓練に、自分のような男が呼ばれるということは、悪い予感しかしない。

「よし、決まりね。なんなら、その格好で来てもいいわよ。そっちの方が、はっきりしてて狙いやすいみたいだから」

ヨウコの言葉が何を意味しているのか、山本にはもうよく分かっていた。
山本の股間から痛みがとれる日は、しばらくは来そうになかった。


終わり。


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