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男の絶対的な急所、金玉。それを責める女性たちのお話。
「うーんとね。こう、かまえるでしょ。で、相手がこう立ってるから、こう」

奇妙な光景だった。
とある小学校の放課後。教室に残った女の子たち数人が、一人を取り囲むようにして、熱心にその話に聞き入っている。
輪の中心にいる女の子の名前は、カエデ。小学3年生だった。
カエデは目の前に一人の女の子を立たせて、その股の間に足を入れて、何やらレッスンをしている様子だった。

「ここにキンタマがぶら下がってるから、下から蹴ればいいの。簡単だよ」

カエデは短パンを履いた女の子の股ぐらを、ポンポンと軽く足の甲で叩きながら、言った。
周囲にいる女の子たちは、興味津々な様子でそれを聞いている。

「そのキンタマって、男の子のアソコのもっこりしてる、アレのことなの?」

カエデを囲む女の子の一人、ケイコが尋ねた。

「そうそう、あのもっこり。あそこの下の方にキンタマがあるの」

「下の方って…」

ケイコは記憶を探るように、首をかしげた。
カエデは、正面に立って練習台になっていたサユリの股間に手を伸ばして、説明した。

「こう、もっこりがあるとするでしょ? そしたら、この下の方、ここにあるから。この上の方は、オチンチン」

「あ、そんな風になってるんだ。オチンチンは、蹴っても痛くないの?」

「うーん。普通に痛いけど、キンタマに比べたら、全然みたい」

「へー。不思議」

ケイコと同じく、周囲にいた女の子全員が、声を上げて不思議がった。

「だから下から蹴らないと、オチンチンに邪魔されて、キンタマにうまく当たらないの。気をつけてね」

カエデの言葉に、女の子たちはうなずいた。

「蹴るときは、こう。ボールを蹴るみたいな感じで蹴るの」

ポコンと、カエデはサユリの股間を蹴りあげた。
蹴られたサユリは、カエデの話に聞き入っていて、自分の股間のことなどまったく気にならないらしい。

「キンタマって、どのくらいの大きさなのかな?」

「えーっとね。ウチのお兄ちゃんのは、このくらい。うずらの卵みたいな感じかな」

カエデは、指で輪っかを作ってみせた。

「え? 人によって違うの?」

サユリが驚いたように聞いた。

「うん。お父さんのは、ピンポン玉よりちょっと大きいくらいあるよ。お兄ちゃんのは二つ一緒に握れるけど、お父さんのは無理だもん」

「そうなんだ。大人になると、オッパイみたいに大きくなるのかな。ていうか、キンタマって二つあるんだ?」

「そうだよお。みんな、そんなことも知らないの?」

カエデは呆れたように笑ったが、ケイコやサユリをはじめとする他の女子たちにすれば、逆にカエデはそんなことまで知っているのかと驚く思いだった。

「キンタマはね、右と左に一個ずつぶら下がってるんだよ。キンタマ袋っていう袋に入ってるの」

「キンタマ袋? 右と左にあるの?」

キンタマの実物を見慣れているカエデにとっては、こんな説明などするまでもないことだったのだが、まだ保健体育で性教育も受けていないその他の女子にとっては、まったくちんぷんかんぷんなことだった。

「えーっとね。ちょっと待って」

カエデは、机の上に置かれていた自分のランドセルを開けて、小さな巾着袋を取り出した。
その中身を全部出して、代わりに消しゴムを二つ、巾着袋の中に入れる。即席の疑似キンタマ袋の完成だった。

「こんな感じ。袋の中にちっちゃなタマが二つ入ってて、それがぶら下がってる感じなの」

カエデは疑似キンタマ袋をサユリの股間にあてて、説明した。

「えー! そんなのがぶら下がってるの?」

「邪魔じゃないの?」

「面白ーい!」

女の子たちは口々に声を上げた。

「そうそう。だから、これを下から蹴り上げればいいってこと。サユリちゃん、ちょっと持ってて」

言われた通り、サユリが疑似キンタマ袋を自分の股間にあてると、カエデがそれをポコンと蹴りあげた。

「こうね」

今度は女の子たちにも、よく理解できた。互いにうなずいて、確かめている。
すると突然、疑似キンタマ袋の持ち主であるサユリが、今しがたカエデに蹴られた袋をおさえて呻きだした。

「ああん。痛いよー。キンタマ潰れたー。痛い痛い」

いかにも痛そうに巾着袋をおさえて、声を上げる。
その姿に、女の子たちは声を上げて笑った。

「サユリちゃん、ウケるー!」

「キンタマ、潰れちゃったの?」

女の子たちの笑いがとれて、サユリは得意げな顔で舌を出した。

「サユリちゃん、キンタマ潰れたら、男の子はピョンピョンするんじゃないの?」

「あ、そっか。こうかな。痛い、痛い」

女の子の一人が言うと、サユリは股間を両手でおさえたまま、その場でピョンピョンと飛び跳ねた。
その姿に、女の子たちはさらに爆笑した。

「でもさあ、キンタマって蹴るとホントに潰れたりするのかな?」

ケイコが、笑いすぎて目に涙を浮かべながら、尋ねた。

「どうかなあ。ウチのお兄ちゃんのは何回も蹴ってるけど、潰れたことないみたいだよ」

「潰れなくても、痛いの?」

「うん。ぜんぜん大丈夫。軽く蹴っただけで、すっごい痛がるから。思いっきり蹴った時は、ピョンピョンする元気もなくなるんだよ」

へー、と女の子たちは感心したような声を上げた。
彼女たちには、自分たちについていないキンタマというものが、どうしてそんなに痛いものなのか、不思議でしょうがないらしい。

「だから、男子とのせんそーでは、絶対キンタマを狙った方がいいよ。キンタマを蹴れば一発だから」

カエデは、自信満々にそう言った。
どうやら、女の子たちが集まってキンタマ攻撃の練習をしている理由は、このクラスの男子とのもめ事にあるらしい。
彼女たちが「せんそー」と呼ぶ男女の決闘が、明日の放課後、行われることになっているのだった。

「そうだね。でも、男子も動くだろうから、うまく蹴れるかな?」

「あ、そういうときはね、握っちゃえばいいの。こうやって」

そう言うと、カエデはサユリの股間にある疑似キンタマ袋を、右手でギュッと握りしめた。

「キンタマを握っちゃえば、男子は絶対動けなくなるから。蹴りが当たらないときとか、近づいたときとかはこっちの方がいいよ」

言いながら、カエデは巾着袋の中の消しゴムをゴリゴリと握りしめる。

「そうなんだ。ちょっとやらせて。こう?」

カエデに代わって、今度はケイコが、サユリの疑似キンタマ袋を握り締める。

「そうそう。中にあるタマを握ればいいの」

「うん。でもこれ、どっちを握ればいいの? 右? 左?」

「どっちでもいいよ。どっちでも痛いみたいだから、握りやすい方で」

「そうなんだあ」

ケイコはうなずきながら、袋の中の消しゴムを手の中で転がしている。

「握るときは、とにかくしっかり握った方がいいよ。キンタマってコロコロして、すぐ逃げちゃうから。最初にギューって握れば、男子は力が抜けちゃうからさ」

カエデの実体験に基づく的確な指導に、女の子たちは感心しきりであった。
同時に、こんなに簡単に男子を行動不能にできる、キンタマという急所への好奇心が、ますます高まっている様子だった。

「でも、ホントおかしいね。私、さっきカエデちゃんに蹴られた時も、ぜんぜん痛くなかったよ。男子って、あれくらいで痛がるのかな?」

練習台になっていたサユリが言った。

「うん。あれくらいでも、しゃがみこんじゃうと思うよ」

「えー、ホントに? キンタマ、超弱いじゃん」

「そうそう。キンタマって超弱いから。だから本気でケンカしたら、男子は絶対女子には勝てないんだよ。アタシ、お兄ちゃんに負けたことないもん」

「そうなの? カエデちゃんのお兄ちゃんって、5年生だっけ?」

「うん。アタシが1年のころまではキンタマ攻撃しなかったから、お兄ちゃんの方が強かったけど、2年になってキンタマを狙うようになってから、負けたことないの。力はお兄ちゃんの方が強いけど、キンタマ握れば、いっつもすぐ謝ってくるよ」

へー、と、またも女子たちはカエデの武勇伝に感心の声を上げた。

「5年生でそれなら、ウチのクラスの男子なんか、速攻で泣いちゃうかもね」

「うん。生意気な男子なんか、泣かしちゃおうよ。弱っちいキンタマなんか付いてる癖に、女子に逆らうなーって」

ケイコとサユリがそう言うと、カエデとその他の女子たちもうなずき合った。

「じゃあさ、アタシの必殺技を教えてあげるね。男子がキンタマをガードしてるときに使うんだ」

カエデが嬉々として言うと、女子たちは眼を輝かせた。

「ホント? 教えて、教えて」

「うん。まずね、キンタマを守ってる男子は、他のところが守れなくなるから…」

カエデの実戦的なレッスンは、その後しばらく続き、クラスの女子たちはより的確に男子のキンタマを仕留める方法を伝授されていった。
男子達は明日、自分たちの身に降りかかる地獄のような苦しみなど想像もせず、のんびりと遊び呆けていることだろう。




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翌日の放課後、体育館の裏にある中庭で、3年2組の男子と女子が真っ二つに分かれて対峙していた。
女子の数は10名。全員、カエデにキンタマ攻撃のレッスンをたっぷりと受けている女の子たちだった。
対する男子は15名。元々、このクラスは男子の数の方が多かったのだが、今日は「せんそー」をするということで、大人しい女子たちの数名は、参加を見送ってしまったのである。

「なんだよお前ら、10人しか来てないのか?」

ズラリと並んだ男子達のリーダー格、コウタが挑発するように言った。

「こっちは15人もいるんだぞ。これじゃ、勝負にならないじゃないか」

コウタはいかにも腕白そうな男の子で、腕組みしながら仁王立ちしていた。
その他の男子達も、女の子なんかにケンカで負けるわけがないと、完全になめきっている様子だった。

「関係ないでしょ! 男子より女子の方が強いんだから、これで十分よ! ね?」

カエデが威勢よく言うと、他の女の子たちもうなずいた。
コウタはその言葉にプライドを傷つけられたようで、子供っぽく怒りだした。

「なんだと? 女より男の方が強いに決まってるだろ! お前ら、女だからって手加減してやらないからな!」

「いいよー! こっちも手加減しないから」

カエデの態度は、コウタだけでなく男子全員の怒りに火をつけた。
元々、この「せんそー」は些細なことから始まったケンカであった。

「みんな、ユイちゃんのカタキ、取ろうよ!」

「うん!」

カエデが言うと、女子全員が力強くうなずいた。
ユイちゃんとは、この「せんそー」の発端になった女の子で、今ここにはいない。
このクラスの男子たちはとにかく腕白な連中が多くて、昼休みは全力で遊び、その後の掃除の時間に遅れてくることはしばしばだった。
それを度々注意してきたのは、同じ場所で掃除をしなければならない女子たちだったのだが、男子達にとってはそれがうっとおしく、ついにある日、ユイから注意を受けたコウタがそれに腹を立て、暴力を振るったのである。
ユイは泣いてしまい、女子たちはコウタに謝罪を求めたが、コウタは聞く耳を持たなかった。ついにはそれが、クラスの男子と女子全員を巻き込んだ対立につながってしまい、現在に至っているのである。

「おいみんな、男に逆らったらどうなるか、女たちに思い知らせてやろうぜ」

コウタの言葉に、男子達はすでに勝ち誇ったような顔をしてうなずいた。
男子の誰一人として、女子とケンカして負けることなど考えもしていないようだった。

「よおし! じゃあ、始めるからな。女子が全員降参するまで、やめてやらないからな!」

「そっちこそ。男子全員泣いて謝るまで、許してあげないからね!」

コウタとカエデが言い放って、3年2組の「せんそー」が始まった。
10メートルほど離れて対峙していた男子と女子が、相手に向かって一斉に駆けだした。
男子達はとくに打ち合わせもせず、作戦など考えもしていなかった。ただ、男の強さと闘争本能にまかせて、女子のお腹でも2,3発殴れば、決着がつくくらいに考えていたのだ。
一方の女子達は、昨日のカエデのキンタマ攻撃レッスンを入念に受けて、さらに実戦的な攻撃の手順までシミュレーションしていた。
男子達にとっては、油断こそが最大の弱点だっただろう。

「おい! お前、泣かすぞ!」

男子で一番最初に相手を見つけたのは、背が低くてすばしっこいシンイチだった。
シンイチは自分よりも背の高い、女子のマリエを選んで、掴みかかっていった。

「何よ、チビ!」

マリエは掴みかかってきたシンイチの両手を、自分も両手で受けた。二人は両手を頭上に上げて、押し比べの状態になる。
シンイチはマリエの言葉にかっとなって、マリエを睨みつけ、力任せにねじ伏せようとした。
さすがに単純な力では、マリエに勝ち目はなさそうだったが、シンイチの注意をマリエの顔に向けさせたのは、作戦通りだった。

「がら空きよ。えい!」

マリエはその長い脚を使って、思いっきり踏ん張って大股開きになっていたシンイチの股間に蹴りを打ち込んだ。

「あっ!」

マリエの顔ばかり睨みつけていたシンイチは、マリエの右脚が自分の急所に伸びるのに、まったく気がつかなかった。
ただ、軽い衝撃を股間に感じたと思ったら、そこからぞわぞわした感覚が全身に広がり、やがて全身の自由を奪うような痛みが襲ってきた。

「あれ? どうしたの?」

今までかなりの力で自分を押しこんでいたシンイチが、急に手を放し、へなへなと座り込んでしまったことに、誰よりもマリエが驚いてしまった。

「うう…」

シンイチはキンタマをおさえてしゃがみこみ、重苦しい痛みにうめき声をあげている。
マリエは自分の攻撃が予想以上の効果をあげたことに、驚きながらも満足した。

「ホントに一発なんだ、キンタマって。超弱いじゃん」

マリエはシンイチを見下ろしながら、誇らしげに笑った。



サッカーのクラブに所属し、運動神経がいいはずのリョウヘイは、女子の中でも活発なミキに、すでにノックアウトされていた。

「痛いよー…」

開始早々、リョウヘイはミキに狙いを定めて、突っ込んでいったのだが、それを狙いすましていたミキの膝蹴りが、リョウヘイの股間にカウンター気味に入ってしまったのである。

「なによ、一発くらいで泣いちゃって。男の子でしょ」

リョウヘイはミキの膝蹴りを受けると、すぐにその場に座り込んでしまい、男だけにしか分からない痛みに体を震わせながら、泣きだしてしまった。

「まあ、男の子だから痛いのか。弱いキンタマなんか、いらないのにね。変なの」

ミキは完全に動けなくなったリョウヘイから離れて、他の男の子を探すことにした。
何しろ女子の方が人数が少ないのだから、一人倒すだけでは足りないのだ。しかしそのあたりの戦術も、女の子たちは万全に計画していた。

「あ、ユカリちゃん!」

ミキが目をつけたのは、体格の大きなダイスケにおされている、女子のユカリだった。

「痛っ! ちょっと待って!」

「この野郎! 卑怯なことしやがって!」

ダイスケは興奮した様子で、背を向けて防御しているユカリの背中を叩いていた。
どうやらユカリは、最初のキンタマ攻撃に失敗して、逆にダイスケの怒りを誘ってしまったらしい。
男の最大の急所を狙われた恐怖は、相手が女の子だということを忘れさせてしまうほど、ダイスケを興奮させてしまっていた。

「ユカリちゃん、大丈夫!?」

そこにミキが駆けつけて、後ろからダイスケの両腕を取って、羽交い絞めにした。
興奮して周りが見えなくなっていたダイスケは、突然背後から腕を取られて、パニックになってしまった。

「なんだよ、お前! 放せ!」

「あ、ありがとう、ミキちゃん!」

この隙に逃れたユカリが振り向くと、ミキが背後からダイスケの両手をおさえて、さらに両脚をダイスケの足の内側に入れて、二人は大きく足を開いて重なった状態になっている。
実はこれが女の子たちの奥の手で、男子と女子の体の違いを利用した必勝法だったのだ。

「ユカリちゃん、今だよ!」

ミキがそう言うと、ユカリはうなずいて、ミキの足によって無理矢理開かれたダイスケの股間に、先ほどは外してしまった渾身の蹴りを叩きこんだ。

「あぐっ!」

ユカリの蹴り足は、ダイスケのキンタマを直撃し、さらに重なり合ったミキの股間にも届いていたが、キンタマのついていないミキは、多少の衝撃を感じただけで、痛むというほどではなった。

「あぁ…っ!」

一方のダイスケは、ユカリのキン蹴りをまともにくらい、無残にも崩れ落ちてしまった。

「やったあ! ユカリちゃん、ナイス!」

「ミキちゃん、ゴメンね。助かったあ。痛くなかった?」

二人は前のめりに崩れ落ちたダイスケを見て、勝利を確信したらしい。

「ぜんぜん。ちょっと靴が当たった感じがしたけど、痛くもなんともないよ。ダイスケも同じ力で蹴られたんだよね? それで、こんなに痛がってるんだ」

見下ろすと、ダイスケは股間を両手でおさえ、頭を地面にこすりつけて呻いている。

「そうだよね。ホントに急所なんだ、キンタマって」

ミキとユカリは、改めて男のキンタマの脆さに驚く思いだった。
するとユカリが、ダイスケの後ろに回り込み、無様に尻をつき上げて苦しんでいるその股間をじっと見つめた。

「さっきはよくも、アタシのこと叩いたわね! 百倍にしてお返しするからね! それ!」

そう言うと、ユカリは後ろから、ダイスケの股間めがけて、つま先を蹴り込んだ。
ダイスケのキンタマは、その両手によってしっかりと包まれていたのだが、蹴りの衝撃の何割かは伝わり、今のダイスケにとっては、十分すぎるほどの苦痛を与えた。

「あうっ! はうっ!」

ユカリは続けて2回3回と、つま先を蹴り込んでいく。
どうやらダイスケは、しばらく立ち直れそうになかった。




ケイコの場合は、最初から二人の男子を相手にしていた。
昨日、カエデからたっぷりとキンタマ握りの方法を教わっていたケイコは、それを実戦で試してみたくてうずうずしていたのだ。

「いくよー!」

女子の中でも足の速いケイコは、素早く男子達の群れの中に突っ込んでいった。クラスでも一番背の高いハヤトと、その次に背の高いシュンに目をつけて、二人の目の前にくると、突然しゃがみこんだ。

「え?」

背の高い二人は、何が起こったのかと一瞬、戸惑ってしまったが、次の瞬間、ハヤトのズボンの上から、ケイコが思い切りキンタマを握りしめた。

「うぎゃあ!」

ハヤトは反射的に腰を引いてしまったが、ケイコの右手は、しっかりとキンタマの一つを掴んで放さない。

「あ、これがキンタマかあ。ホント、ちっちゃい卵みたい」

苦しむハヤトをよそに、ケイコはのん気そうに言った。
その様子を隣で見ていたシュンの方が、むしろ慌ててしまった。

「お、おい!」

シュンが身構える前に、ケイコの左手が、シュンの半ズボンの隙間からすっと入って、その中にあるブリーフの膨らみをつかまえた。

「ああっ!」

シュンもまた、男の痛みの犠牲になった。

「あ、こっちの方がちょっと大きいかな。ねえ、もっとこっちにきてよ。握りにくいから」

ケイコはそう言いながら、両手に掴んだキンタマを、グッと引き寄せた。

「ひいぃっ!」

「は、放して…」

二人はキンタマを引っ張られて、抵抗のしようもなかった。
男の子たちの必死の形相を見て、ケイコはつい笑ってしまった。

「えー。そんなに痛いの? ぜんぜん力入れてないんだよ。ホントに男子の弱点なんだねー。じゃあさ、思いっきり握ったら、どうなるの?」

ケイコが女の子らしい小悪魔的な意地悪さで、二人にたずねた。
ハヤトとシュンはすでに重苦しい痛みに喘いでいたが、ケイコの悪戯っぽい笑顔を見て、思わずぞっとした。

「やめて、やめて!」

「お願いだから…」

「えー。どうしよっかなー」

二人の大柄な男子達が、必死で自分にお願いしている姿に、ちょっとサディスティックな満足感を感じた。
もちろん、やめる気などまったくない。

「いくよー。せーの、ぎゅー!」

掛け声と共に、両手に掴んだ一個ずつのキンタマを、手の中から逃がさないように、思い切り握り込んだ。

「ぎゃああー!」

「ぐえぇっ!」

ハヤトとシュンは悲鳴を上げ、背筋を反らせて天を仰いだ。
身長が高く、運動も得意な自分たちが、自分よりずっと背の小さい女の子にこんな苦しみを与えられるとは、想像もしなかっただろう。



サユリは、マサキと一対一の戦いをしていた。
運動ができるという意味では、マサキは一年生のころから空手を習っていて、男子の中では一番の運動神経を持っているはずだった。
それが、比較的運動の苦手なサユリに対して、完全に受け身に回ってしまっている。

「どうしたの? そんなに離れてたら、ケンカにならないよ」

サユリは意地悪そうな笑いを浮かべながらマサキに近づいていくが、マサキは後ずさりした。
本人は空手の稽古のときのようにかまえているつもりだったが、違うのは、腰が異様に引けてしまっている点と、左手をしっかりと股間に当てて守っているところだった。

「もー、逃げちゃダメだってば」

サユリはすでに、2人の男子をキン蹴りでノックアウトしてしまっていた。そのせいか、もはや男子など恐れるに足りないというような余裕の態度を見せている。
マサキは、サユリが2人の男子をあっさり倒してしまったのを見て、警戒しているのだ。

「ま、待てって。ちょっと待って」

マサキは、男子の中ではほとんど唯一、キンタマ攻撃の怖さを知っていただろう。空手の稽古中、相手の蹴りが股間に当たってしまったことがあり、その苦しみは、今思い出してもぞっとする程のものだった。
普段の稽古ではもちろん反則となっているが、今はケンカである。狙われたところで、文句は言えないのだ。

「マサキ君、強いんでしょ? ちゃんとケンカしよーよ」

サユリはじりじりと間合いを詰めてくる。しかしマサキの手が届く範囲までは、決して近づかないのだ。サユリにとっては、自分の蹴りがマサキの股間にギリギリ届く間合いであればいい。
マサキも空手の蹴り技で応戦したいところなのだが、むやみに脚を上げれば、即座にサユリのキン蹴りが飛んでくるだろう。マサキは金的のガードを解くことだけは、絶対にしたくなかった。

「うーん…。しょうがないなー」

サユリはつぶやきながら、マサキの目の前で、すっとしゃがんでみせた。
マサキは何事かと思ったが、下手に手を出せない。

「えい!」

立ち上がると同時に、サユリは地面から拾った砂を、両手でマサキの顔面に向かって投げつけた。

「うわっ!」

当然の反応として、マサキは両手で目を守ろうとする。
しかしこれも、カエデがサユリに授けた作戦の一つだったのだ。

「ホントだ。キンタマ、がら空きになった!」

マサキの耳にサユリの嬉しそうな声が聞こえるのと、股間に重たい衝撃が走るのが、ほとんど同時だった。
マサキが後悔するヒマもなく、重苦しい痛みが下腹部に押し寄せてきた。

「あぐぅ…」

両の膝から力が抜けて、立てなくなる。
砂をかけられた目も痛かったが、それどころではないくらい、本能的に危機を感じる痛みが、マサキの股間を襲っていた。

「ごめんね。でもアタシ、か弱い女の子だから。卑怯じゃないよね?」

正座のような姿勢で痛みに震えているマサキに向かって、サユリは可愛らしい笑顔を向けた。
マサキが習ってきた空手など、何の役にも立たなかった。男同士のケンカではマサキは負けたことがなかったが、それはキンタマを狙わないという、暗黙のルールがあってこそのものだった。
キンタマを持たない女の子相手のケンカが、どれほど危険なものなのか、マサキはいつ治まるともしれない痛みの中で、思い知ったような気がした。



「え…おい…」

男子達のリーダー格であるコウタは、大将気取りで動かないまま、仲間たちが次々とKOされていく様子を見ていた。
いつの間にか、中庭に立っている男子は、コウタだけになってしまっている。

「お前ら…なにやってんだよ!」

コウタの呼びかけにも、返事ができる男子は残っていなかった。
人数の上で圧倒的に有利なはずだった男子達は、次々と女子のキンタマ攻撃の餌食となり、戦意を喪失し、そのほとんどが地べたに這いつくばって股間をおさえて苦しんでいる。

「さあ。あとはアンタだけみたいだね」

こちらも開始位置から動かなかったカエデが、ゆっくりとコウタに近づいてきた。

「あ、もういなくなっちゃったの? もっと蹴りたかったのに」

サユリが残念そうにあたりを見回した。
あたりにいるのは、戦闘を終えた女子たちばかりで、ほとんど疲れた様子もなく、笑い合いながらコウタの周りに集まってきた。

「元はといえば、アンタが一番悪いんだからね。もう、謝っても許してあげないから」

先手を打つかのように、カエデは言い放った。




コウタは、まったく想像もしていなかった事態に困惑していた。
15人もいたはずの男子達は、自分をのぞき全員ノックアウトされ、今は女子10人に取り囲まれている。
できることなら逃げ出したい気分だったが、それもできそうになかった。

「お、お前ら卑怯だぞ! キンタマ狙いやがって! 反則だぞ!」

「えー。ケンカに卑怯とかあるんだ? でもさ、男子は女子よりずっと強いんでしょ? じゃあ、ちょうどいいハンデじゃない? コウタのも、ちょっと蹴らせてよ」

じりじりと歩み寄ると、コウタは慌てて、両手で股間を覆い隠した。
余裕の表情で迫るカエデとは対照的に、コウタは完全に戦意を失って、キンタマを守ることだけを考えている様子だった。

「カエデちゃん、手伝おっか?」

カエデの横にいた、ケイコが言った。

「そうだね。めんどくさいから、みんなでやっちゃおうか」

カエデがうなずくと、女の子たちは一斉にコウタを取り囲み、飛びかかった。
すでにそれぞれが男の子をノックアウトして、自信をつけていた。
キンタマ攻撃の恐怖に怯えるコウタは、あっという間に両手両足を取られ、大の字になってカエデの前に立たされることになった。

「や、やめろよ、お前ら! やめてくれって!」

コウタはもがくが、さすがに数人の女の子におさえられては、男の子といえど身動きができなかった。

「言っとくけど、アンタがいけないんだからね。アンタがユイちゃんを泣かしたから、こんなことになってるんだよ」

コウタは執念深い女の恨みを感じ、ユイに暴力をふるってしまったことを後悔したが、今となってはどうすることもできない。

「そうだ、カエデちゃん。アタシ、キンタマの実物が見てみたいんだけど」

「あ、わたしも。見たい見たい」

ケイコが言うと、女の子たちは口々に同意し始めた。

「あ、そっか。みんな、キンタマを見たことないんだっけ? じゃあ、コイツをやっつける前に、見てみようか」

カエデはいとも簡単そうに言った。
コウタはこの話の展開に慌ててしまう。

「ちょ、なんだよ! 見てみるって…」

「じゃあ、ズボンとパンツを脱がしちゃお。よいしょっと」

女子達にしっかりとおさえられて、身動きのできないコウタを無視して、カエデはズボンに手をかけて、パンツと一緒にずり下ろしてしまった。

「あっ!」

コウタが恥ずかしがる間もなく、その股間はクラスの女子達の目の前にさらされてしまった。

「きゃー!」

「あー、オチンチンだー!」

女の子たちは口々に叫ぶが、恥ずかしがる様子もなく、露わになった性器を注視している。

「ちょ、やめろよ! 見るなって!」

「うーんとね。これがオチンチンでしょ。で、この下にあるのがキンタマなの」

顔を真っ赤にして抵抗するコウタの叫びも空しく、カエデはコウタの性器を指差しながら解説を始めた。

「へー。そんなにちっちゃいんだー」

「なんか、プルプルしてて、カワイイね」

屈辱的な言葉をかけられても、どうすることもできない。
ついにコウタは黙り込んでしまった。

「そうそう。で、昨日も言ったけど、オチンチンはあんまり痛くないの。ね?」

カエデは、コウタのペニスに軽くデコピンをした。
コウタはちょっと顔をしかめて、痛がる様子だった。

「ほらね。全然平気でしょ? でも、キンタマは違うんだよ。えい!」

続いてコウタのキンタマに、先ほどと同じようにデコピンすると、コウタはうっとうめいて、大きく体を震わせた。
羽交い絞めにされながらも、腰を引いて、足を震わせている。

「えー! ウッソー。今ので痛いの?」

「ウソでしょ? 演技だよ、演技」

女の子たちは笑いながら、コウタの苦しむ様子を見ていた。
同時に、女の子たちは期待していた。カエデはどうやって、このデリケートすぎる男の急所を痛めつけてくれるのだろうか。
カエデもまんざらでもないように、足首のストレッチなどを始める。

「でもみんな、初めてなのにキンタマ蹴るのうまかったよねー。あとは、ちょっとしたコツがあってさ。足首の使い方なんだけど、できるだけ力を抜いたほうがいいんだよね。こんな感じ」

楽しそうに素振りをしてみせるカエデの蹴りを見て、コウタの顔は真っ青になってしまっていた。
一方の女の子たちは、感心してそれを見ている。

「あんまり力は入れなくていいから、スピードの方が大事なの。見ててね」

カエデがコウタに向かってかまえると、コウタはついに泣き出しそうな顔になってしまった。

「やめて、やめてくれよ! 俺が悪かったから。謝るよお」

いつも威張り散らしている普段のコウタからは、考えらない言葉だった。
必死の形相で許しを乞うコウタの様子に、カエデと女子たちは、思わず吹き出してしまう。

「ウソー。コウタ君が謝ってるよ」

「そんなにキンタマ蹴られたくないの?」

「大丈夫。そんなに痛くないよ。わかんないけど」

女の子たちは、同情するような目でコウタを見たが、かといってその手足を放してやることはしなかった。

「ま、男らしく諦めてよ。せえの!」

カエデも笑いをこらえながら、渾身のキン蹴りをコウタの股間に放った。
スパーンと、今日のキン蹴りの中で一番いい音がして、カエデの足の甲はコウタのキンタマを正確に打ちつけた。

「はぐぅっ!」

コウタは両手足を掴まれながらも、体を折り曲げて、腰を精一杯引いた。
女の子たちが解放してやると、すぐに両手で股間をおさえ、そのまま前のめりに崩れ落ちてしまった。

「はあぁっ!」

海老のように体を丸めながら、両足をジタバタとさせて、地面をゴロゴロと転がっている。

「すごーい。いい音したね。なんか、すごいことになってるよ」

「うん。今のはいい感じだったな」

「面白ーい。ジタバタしてるよ」

少しすると、コウタは地面を転がるのをやめて、その場にうずくまったまま、ブルブルと震えていた。
絶望的な痛みがコウタの全身を襲い、周りで笑い合う女の子たちの声も、まったく耳に入らなかった。

「さすがカエデちゃんの蹴りは、ホント痛そうだね。でも、コイツにはこれくらいやんないとねー」

「そうそう。ユイちゃんを泣かしたんだから、キンタマ潰すくらいじゃないと、納得できないよ。ユイちゃん、ちょっと痣になってたみたいだからね」

「ホントに? 痛そー」

コウタがユイに与えた痛みよりも、恐らく数百倍は大きな痛みをコウタは味わっているはずなのだが、キンタマの痛みが分からない女の子たちにとっては、痣ができたことの方がリアルなものとして共感できた。

「ねえ、コウタ! アンタこれに懲りたら、二度と女の子に暴力振るっちゃダメだからね! わかった?」

カエデはうずくまっているコウタの側にしゃがみこみ、言い放った。
しかしコウタは、その言葉に反応することができない。

「聞いてんの? もう一回蹴ってあげようか?」

痺れを切らしてそう言うと、コウタは慌ててうつむいたまま、首を横に振った。

「やめて…ください…。すいませんでした…」

コウタは大粒の涙を流しながら、息も絶え絶えにそう言った。
その様子を見て、カエデと女子たちも、自分達の勝利を確信し、満足した。

「じゃあ男子はこれから、真面目に掃除するんだね? 遅れたりさぼったりしたら、またキンタマ蹴るからね?」

カエデはコウタだけでなく、周りで苦しんでいる男子全員に向かって言った。
コウタは素直にうなずいた。

「はい…。真面目にします…」

「ホントだね? 一人でもサボったら、連帯責任で全員キンタマ蹴りだからね?」

「はい…」

ケイコが言うと、コウタをはじめとして、返事のできる男子は全員うなずいた。

「よし。じゃあ、このせんそーは女子の勝ちってことだね。みんな、ありがとー!」

カエデが満面の笑みで言うと、女子全員がそれに応え、笑い合って手を叩いた。
やがて満足げに女子たちが帰った後、男子たちは地面に這いつくばったまま、しばらく立ち上がることさえできなかった。


終わり。



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